第28話「最後はgoo」

「出た目が仮親だ」

対面の男は卓の中央のボタンを押した。

「!」

アルフレッドは目をみはった。サイは小さな透明の箱の中で転がっている。

「サイも手で振らないのか?」

「兄さん、本当に全自動知らないらしいな」

言い終えると同時に笑った。

「これならいかさまはできないな。平で打つしかない」

アルフレッドは一人呟いた。

 

 

親エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョン

南男A

西男B

北アルフレッド

 

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが先程の男を真似て中央のボタンを押した。からからとサイが転がり、七が出た。皆無言で牌を取っていく。理牌をすると、勝負が始まった。

「ルールはありありのワンツーだ。レートはさっき言った通りいちいちだ」

男Aがエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンを巻くしたてる様に言った。エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが長考していた。

「遅いな」

今度は男Bだ。エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは理牌を終え、何やら考え込んでいる。

「ねえアルフレッド、切るものがないんだけど・・・」

「はは、切る牌なかったら上がってるってことだよ」

アルフレッドは笑ってはいたが、内心は不安になった。こんなこと言い出す輩は決まって初心者である。浮いた牌は理牌せずとも分かる。

「じゃあ、これ」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは五索を切った。

「おいおい、随分景気がいいな。こりゃ要注意だな」

男Aが警戒せずに一筒を切ると大きな声がした。

「あ、それポン!」

「本当か?」

アルフレッドは心配そうだ。親の罰符は一万二千点だ。つまり一万二千イェンがなくなるということだ。

「心配するな。白がある」

「馬鹿、言うなよ」

これはまずいかもしれない。エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンがここまで麻雀を知らないとは・・・そう思いながらも、アルフレッドは冷静に情勢を読んでいる。アルフレッドの手は格別良くはなかったが、悪くもない。タンヤオを狙えるだろう。ドラも二枚ある。一局目としては上々だ。

 

・・・

 

誰も上がらずに流局になってしまった。

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンがこんなことを言い出した。

「めんどくさい!次の局で勝負を決めよう!アルフレッド、まだ五万あるだろ?全部賭けるぞ」

「ちょ、待てよ・・・」

突然のことで言葉が出てこない。それを察してか、男Aが言った。

「お嬢ちゃん、おもしろいこと言うね。どうする、男B」

男Aは男Bに問いかけた。

「俺は構わない。ヒリつくようなギャンブルができそうだ」

「よし、俺たちはいいぜ」

これで反対しているのはアルフレッドのみなってしまった。

「分かったよ。それじゃあ二万五千イェンの馬ってことで」

 

 

〜十分後〜

 

「また流局じゃないか!しかもみんなノーテン!どうすんだよ!」

「おい、落ち着けよ。またやればいいだろ?」

アルフレッドがなだめる。

「そうだ。次も同じようにやればいい」

同情したのか、男Aも援護してくれた。男Bはしきりに頷いている。それでもエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンのヒステリーは収まらない。

「もうじゃんけんだ!じゃんけんで勝ったら五万だ!いくよ、じゃーんけーぽん!」

半射的に男Aと男Bはチョキを出していた。エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはgooだ。

「やった!」

「今度は一対一でやろう」

男Aがのってきた。

「いいよ。じゃーんけーぽん!」

またしてもエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンの勝ちだ。

こうして、真宿の夜は更けていった。もちろんエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンの圧勝だったことは言うまでもない。

 

外に出ると朝になっている。

「アルフレッド、腹が減ったよ。どっかで食おうぜ。なんたって百万もあるんだから」

「そうだなあ。この『寿司へぇ』ってとこがおいしいみたいだ。近いし」

「じゃ、そこ行こう」

 

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