第35話「ハッスルタワー」

再び元の世界へと舞い戻った三人はまずアルフレッドたちの故郷へと向かった。

事の発端はギャンビットが村長の遺体を村に運んだことである。

村長が生き返ったときにはすでにその村の中心に大きな城が建てられており相当な数の私兵団がいたらしい。

「なあ、アルフレッドたちの村はなんていう村なんだ?」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンがおもむろに聞いてきた。

「うちの村はフックオブ村というんじゃ」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはアルフレッドに聞いたのだが村長が先に答えこう続けた。

「昔は多くの情報屋が集まりそこでわからぬものは誰も知らないと言われたものじゃ」

「そうだったのか、名前だけなら聞いたことがあるぞ」

「今ではそこまで栄えてないけどな」

アルフレッドはそういいながら一日に客が一人も来ない日々を思い出した。

(あのころは楽だったな)

一行はブルックベリー村を避けてそのままフックオブ村に向かうことにした。

不用意に村に顔を出したりすると何が起こるかわからないからだ。

長い道のりだが馬が運よく生き残っていたので疲れはしなかった。

村長は一度裏切ったため馬には乗せず徒歩である。

アルフレッドは久しぶりにいい気分だった。

しばらく歩くとついにフックオブ村までたどり着いた。

ただ一つを除いていつもと同じで風景である。

村長のいう通り村に大きな城が建っている。

摩天楼のごとく高い城はアルフレッドたちを圧倒した。

「ここにギャンビットが」

アルフレッドがつぶやく。

「とにかくギャンビットに会わないとな」

「ああ、勘違いした者には制裁を与えなくては」

「その通り、正義の豪斧をね」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは馬から降り、斧を装備した。

大きな門にはベタベタの門番が立っている。

「このまま行くのもただの馬鹿だな」

アルフレッドは少し考えこう言った。

「村長は一応この城の元幹部なのだからいくら裏切られてもあの門番ならそのまま行けるんじゃないか?」

「うむ、確かにさっそくわしの出番じゃな」

村長は得意そうである。

「じゃあ、さっさと行こうよ」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが急かす。

そういうことで三人は村長を先頭に門に向かって歩を進めた。

門番は村長に気がつくと姿勢を正した。

「あ、ご苦労様です」

門番はそういうと敬礼した。

「うむ、後ろの重要参考人を連れてきた。門をあけよ」

「かしこまりました」

偉そうな村長を見ると無性に腹が立ってくる。

アルフレッドが拳を力いっぱい握り締めているとエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンがなだめてきた。

中は外観と違いものすごく豪華である。

「ギャンビットはどこにいるんだ?」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが聞く

「やつは最上階じゃ」

「やはり」

偉いやつは最上階というのはもはや定説である。

エントランスホールの右端の方にエレベーターがあるのをアルフレッドが発見した。

村長がいたときはなかったらしい。

「この城はまるでチキュウの建物だな」

「ああ、あのピラフってやつだろうな」

アルフレッドはエレベーターに入ると一番上の15階を押した。

「15階建てか・・・」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが小さな声で言った。

「いや、この城は20階建てのはずじゃ」

村長が不思議そうに言う。

「ということは・・・・」

「そこからは何か別の方法か」

アルフレッドはため息のように続けた。

チンッ・・・

そう話しているうちにエレベーターが15階に着いた。

 

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