第43話「マジックワールドはすぐそこだ!!」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョン以外の三人は少し恥ずかしながら禁断の女子便所へと足を踏み入れた。
古い便所であったが綺麗に掃除されており汚さはなかった。
とりあえず誰も便所にいなかったことが救いだった。
「誰もいないみたいだな」
アルフレッドが安心したようにつぶやいた。
村長は残念そうだった。
「えーと、手紙によると手前から3番目だったよな」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは手前から数えて指差した。
「そうじゃな」
そういいながら中をのぞいてみると普通の洋式便所があるだけである。
「ホントにここいいのかな」
「まあ手紙どおりにやってみよう」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは一度扉を閉じて軽く拳を握った。
「いくよ」
コン・・
まだ何も起きない。
コン・・・
少し異変が起きた。
扉の隙間から光が漏れている。
「最後だ・・・」
コン・・・・
光が一層強くなった。
「やはり手紙は正しかったね」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは楽しそうに笑った。
「よし、じゃあ入ろうか」
アルフレッドは取っ手を握るとゆっくり開けた。
扉を開けると目が開けられないほど光っている。
「エドモンド・・・」
ギャンビットも驚いている。
「すごいな」
「とにかく通ってみよう」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは何のためらいもなく光の中に入ってしまった。
「あ・・・」
アルフレッドは少し戸惑っている。
「エドモンド!」
急に後ろで声を上げたと思ったらギャンビットも続いて入ってしまった。
「・・・」
「・・・」
アルフレッドと村長は顔を見合わせた。
「行きます!」
アルフレッドは気合を入れて飛び込んだ。
扉を通るとそこは以外にも味気ないところだった。
男子便所である。
先に行った二人がうろうろしている。
「遅いぞ、これから仇を倒すんだろ?」
「ああ、すまん。見慣れないものだから」
「村長は?」
「え?いや気にしないで来ちゃったから・・・」
光っている扉のほうを見ると指が何本か見えている。
「ったく、しょうがないなあ」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはめんどくさそうにその手を掴むと勢いよく引っ張った。
「うぎゃ!」
変な悲鳴とともに村長が倒れこんできた。
「遅いぞ」
「ああ、すまんすまん。忘れ物がないかどうか確認しとったんじゃ」
村長は嘘臭い言い訳をした。
「アルフレッド、ここはどこだかわかるか?」
「いや、いくら出身地でも小さいころにいただけだからな」
「エドモンド」
「じゃあ、とりあえず外に出てみるか」
「そうだな」
一同は便所の外に出るとそこは賑やかな商店街だった。しかも時間がずれているせいか夕方だった。
多くの人が行き交っている。
「結構賑やかなところだな」
「おい、アルフレッド。こっちでは顔は知られていないのか?」
「ん〜そうなんじゃないかな。皆全然気に留めてないし」
「とりあえず、ポリー・ハッター校長という人を探したほうがよさそうじゃな」
「エドモンド」
ギャンビットも頷いている。
「ということはまず酒場で情報収集だな」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはどちらかというと酒を飲みたいがために提案した様子だった。
三ヶ月一緒に生活してわかったことだがエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンも村長に並ぶほどの酒豪である。
しばらく歩くと酒場らしき店があったので4人は入っていった。
中には何人か客が入っていてる。
「おい、ビールくれ」
客の一人が店員に言った。
「毎度!」
店員は手をスナップさせるとジョッキが宙に浮き客のところへ飛んでいった。
「すごいな、これが魔法か・・・」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは興味津々に見ている。
「じゃあ、あいつに聞いてみるか」
先ほど注文していた男に聞くことにした。
四人はその男の近くの席に座りアルフレッドが聞いてみた。
「なあ、人を探しているんだが」
「ああ?」
男はビールをグイッと飲んだ。
「あんだって?人?」
「そうだ、ポリー・ハッターって人だ」
「お前らポリー校長も知らんのか?田舎モンだな!ガハハハ!!」
男は大笑いした。しかもかなり酒臭い口臭である。
「そんなに有名なのか?」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはギリギリ拳を握りながらも笑顔で聞いた。
「そうだ、超有名私立学校、ポクワーツ魔法学校の校長であり、レイモンド王家の家臣だぞ」
(なるほど・・・)
アルフレッドは心の中で納得した。
「で、その人はどこにいるんだ?」
「大体は学校にいるだろうな」
男は再びビールを口にすると一気に飲み干した。
「その、ポクワーツ魔法学校はどこにあるんだ?」
「・・・」
男は急に黙り込んだ。
「ん?どうした?」
「あ〜酒がねえなあ」
男はわざとらしく言った。
「マスター、ビール」
すぐに気を利かせアルフレッドはビールを注文した。
「ったく、答えてやってんだからすぐ頼めよ・・・」
小さい声で男がつぶやいた。
「ほう、で、学校はどうやって行くんだ?」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは怖いほど笑顔を作って聞いた。
するとその男はポケットからぼろぼろの紙を取り出し投げてきた。なぜだか紙からも異臭が出ている。
「言うのめんどいからその地図やるよ」
「ありがとう」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは笑顔を保ちながら礼を言った。
「じゃあ、勘定頼むな」
「え?」
「え?じゃねえだろうが、地図と手間賃だよ」
男はまたガブガブ飲んでいる。
「・・・・」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはまだ笑顔で耐えている。
「わかった、払うよ」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンの状態に危機を感じアルフレッドが承諾した。
運よく魔法の世界も通貨の単位が同じだったが男はかなり飲んでいたらしく結構な額を払うことになった。
「達者にな!」
男は笑いながら言った。
4人は無言で店を出た。
「むかつくやつだけど情報は入ったな」
「そうじゃな」
「エドモンド」
四人とも疲れた様子だ
「あ、忘れ物した」
「そうか、じゃあ地図見てるな」
エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは思い出したように店に戻っていった。
数秒後何やら聞き覚えのある音がし、すぐにエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが出てきた。
「早かったな」
「まあね」
アルフレッドはエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンの手に血がべっとり付いているのを見つけた。
「も、もう、忘れ物、す、するなよ」
アルフレッドは彼女恐さを再び認知した。