第45話「消えた連れ」

ポリー・ハッターが泣き止みしばらく経ったところで今後の計画について5人でミーティングをした。

「とにかく閣下が公に出るのは危険です」

「そうじゃな」

「エドモンド」

「じゃあ、どうするんだ?」

「ですから閣下が表に出ずに遂行できる計画でないと」

「エドモンド」

さっきからミーティングは同じことを繰り返している。

「それじゃあ、帰ってきた意味ないだろ」

「いやいや危険でございます」

「だから―――」

 

ドン!!!

 

しびれを切らしたエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが机を叩いた。

「さっきからそればっかじゃねえか!」

「ですから―――」

「作戦なんて元々必要ないんだよ!」

「それではどうしたら―――」

「簡単だよ。5人やっちまえば軍部の勢力はなくなる。つまり一人一人暗殺していく」

意外だった。エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンのことだから町に出て大暴れするのかと皆が思っていた。

「やはり、それしかないんですね・・・」

ポリー・ハッターは鼻水を垂らしている。花粉症のようだ。

「むやみに人を殺めるのは避けたかったのですが・・・」

「俺はエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンの意見に賛成だ。今の軍部は勢力をつけ過ぎた。もし俺が民衆に呼びかけても軍部からの圧力から全員を守ることができない」

「そうじゃな、これは密にことを進めるべきじゃ」

「エドモンド」

「彼らは強いですよ」

ポリー・ハッターはティッシュで鼻を拭い言った。

「大丈夫、俺には強い味方がいる」

そういいながらアルフレッドはエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンだけを見た。

「それでその5人はどこにいるんだ?」

「全員はほとんど知られていないのですが1番簡単に見つけられるであろう人物はやはりトンボ・シオカラ親衛隊長でしょう」

その名を聞いた瞬間アルフレッドの眉が僅かに動いた。

「そいつはどこにいるんだ?」

「申し上げにくいことなのですが・・・毎週日曜日に町の広場であることが行われておりまして・・・」

ポリー・ハッターは何か言うのを躊躇っている。

「そこにそいつが来るのか?」

「ええ・・・」

「そこでなにがあるんだ?」

「あ、あの・・・そこでは毎週・・・・」

またポリー・ハッターの額から汗が吹き出ている。

「実は・・・軍部に抵抗している者が政治犯とされて・・・公開処刑が・・お、行われて・・・」

「な・・・」

一同は驚きとともに憤りを感じた。

「エドモンド〜」

「なんとも恐ろしいことを・・・」

「王党派はすっかり衰えてしまって・・・もうどうにもならんのです・・・」

ポリー・ハッターのテンションの下がり方は尋常ではなかった。

「よし!」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは思い立ったように腰を上げた。

「ちょうど良く明日が日曜だ。後には引けない」

「そうだな」

アルフレッドも立ち上がりエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンの目を見て頷いた。

「そうじゃな、そのために来たんじゃ」

「エドモンド」

「か、閣下〜」

ポリー・ハッターはまた大泣きしている。

「じゃあ戦に備えて今日は休もう」

そういいながらエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは大きな欠伸をした。

「そ、それではゲストベッドルームに」

ポリー・ハッターはベソをかきながら手際よく案内してくれた。

 

翌朝

その日は曇りで不吉な感じがしていた。

前日の疲れのせいか結局アルフレッドが起きたのは昼前だった。

「アルフレッド、もう昼だぞ」

いつも通りエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンに起こされる。

「そんな時間か」

「よく眠れたみたいだな」

「ああ」

そういいながら机の上に用意されていたパンを頬張る。

緊張のせいかいつもより喉の通りが悪い。

「あの二人は?」

「村長ならさっき廊下であったぞ」

「そうか」

「そろそろらしいぞ」

「・・・」

アルフレッドは今までの自由奔放な旅での様子とは違っている。

「アルフレッド」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが呼びかけた。

「あ・・すまない」

「しっかりしろよ」

「とりあえず広場に行ってみるか」

アルフレッドは上着を着ると朝食をろくに食べずに二人は部屋を出た。

部屋を出ると村長が慌てた様子で駆け寄ってきた。

「た、大変じゃ!」

「どうしたんです?」

「ギャ、ギャンビットが!」

「え?ギャンビットがどうしたんだ?」

「いないんじゃ!」

それを聞くや否や二人はギャンビットの部屋へと駆け込んだ。

確かに部屋はもぬけの殻だ。

「一体何が・・・」

置手紙がある。

 

”エドモンド”

 

「何だこれ?」

「さあ」

「最後に見たのはいつだ?」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは比較的落ち着いている。

「わしは昨晩から見ていない」

「俺もだ・・・」

「こんなことになるとはね・・」

「やはり見張っとくべきじゃったのか」

「とにかく・・・・状況が状況だけに今は町の広場に急ごう」

「あ、ああ、そうだな」

三人は妙な違和感を感じながらも部屋を後にした。

 

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