第51話「獅獅牙革命開戦」

会心の演説を果たしたポリーは翌朝に軍部へ総攻撃を始めることを提案した。

「各自自宅に戻り、明日の戦に備えるのだ!」

 

「うぉぉぉーーーー!!」

 

民衆の士気は最高潮になり、とりあえずそこで解散した。

「ついに明日か・・・・」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは腕を組み帰っていく民衆を見ながらつぶやいた。

「時代の節目には大きな危険も伴うもんじゃ・・心してかからねばな」

村長もなかなかのやる気だ。

「アルフレッド様・・・・」

ポリーはいまだにアルフレッドの遺骸を見ていた。

 

 

翌朝

広場には昨日より多くの民衆が武装し集まっていた。陰陽族の人たちもそこにいる。

軍部の統制の取れた兵隊とは違う。しかし、数では圧倒的に勝っている。

「皆のもの!よく聞いてくれ」

ポリーが叫んだ。中央の演台にはエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンと村長もいる。

「兵隊はすべてゴスローリのいる軍部の警備に当たっているという情報が入った」

少し民衆がざわついた。

「どうやら先の集会の情報が漏れたらしい」

ポリーは汗を拭いながら必死に叫ぶ。

「しかし!我々は怯まない!」

 

うぉぉーーー!!

 

「行け!アルフレッド閣下万歳!」

 

万歳ーーーー!!

その掛け声とともに民衆は軍部めがけて走ってゆく。

ものすごい地響きだ。

「よし!我々も行くぞ!」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは自慢の斧を抜いた。

「狙うはゴスローリの首です」

「いまさらなんだがゴスローリってどんなやつなんだ?特徴を教えてくれ」

「そういえばそうじゃな」

「見た目ははっきり言って普通です。しかし、片目がありません」

「つまり眼帯してる偉そうなやつがゴスローリってことだな?」

「いえ、ゴスローリは眼帯はしてません。義眼をつけています。ダイヤの」

その言葉に最も早く反応したのは村長だった。

「な、な、なんじゃと!?」

村長は明らかに動揺している。

「そ、そ、それは何カラットなんじゃ?」

「正確にはわかりかねますが100は軽く超えているかと」

「うひょひょーーーー!!!」

それを聞くや否や猛ダッシュで軍部へと走って見えなくなってしまった。

「あのじじい・・・」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンも負けじと加速する。

「え?そんな置いてかないでくださいよ〜」

ポリーは必死に走っているが広場を出るころには一人ぼっちになっていた。

「ひぃ・・・ひぃ・・・」

なんとか追いつこうと力の限り走った。

「はぁ・・・・はぁ・・・・」

両膝に手をついて休んだポリーは酷く息切れしていた。

「ふぅ・・ふぃ・・・・も、もう・・・無理・・・」

 

ポリー・ハッター 永眠

 

 

軍部の前は地獄絵図と化していた。

血が舞い。

首が飛び。

すでに多くの戦死者が出ていることは言うまでもない。

魔法の国ということもあってところどころで炎が上がったり稲妻が落ちたりしている。

その中でエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンと村長は一目散にゴスローリがいると思われる要塞エスカルゴの正門を目指した。

「酷い状態じゃ・・・」

村長は走りながらつぶやいた。

「一刻も早く敵将の首を取らねば・・・」

敵や味方を掻き分けて二人はまっすぐと走っていった。

民衆はすでに要塞内部まで侵略しているようでなんの障害もなく正門を通り抜けた。

要塞のエントランスホールはより一層の警備が設けられていたため民衆もそれ以上進んでいないようだ。

「やっと先頭に着いた」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは斧を両手で握り締めると一振りで5,6人の敵をなぎ倒していく。

「さすがじゃの」

村長はすばやい身のこなしで敵の間合いから逃げている。うまく戦っているように見せて戦っていなかった。しばらくするとエントランスホールの警備もほとんど潰れて数人の民衆とともに階段を駆け上がった。

「このまま行くぞ!・・・ん?」

先頭にいるエリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンが人影に気付き足を止めた。

「やっと来たようだな」

位の高そうな服を着ている。ポリーが行っていた特長と合わない。

その男は5人の仇の最後の一人だった。

「何者!?」

村長は睨みながら言った。

「俺はチャイコフ・チン3世Jr」

「手ごわいな」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンはそうつぶやくと斧のグリップを握りなおした。

「きぇぇ〜」

チャイコフ・チン3世Jrは突然奇声を上げ人差し指で村長を狙うと指先から怪光線を放った。

「なに!?」

ギリギリで上半身を反りかえし避けることに成功したが

「ぎゃーーーー」

村長の後ろにいた民衆の一人が怪光線に気付かず絶命した。

「あぶない、あぶない」

村長は起き上がりながら言った。

「貴様・・・何の罪もない民を・・・・」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは今にも飛び掛らんという目つきで睨んだ。

「な、なにを言っている!お前が避けたんだろうが!」

チャイコフ・チン3世Jrは複雑な表情している。

「覚悟!」

ドゴッ!!!

その瞬間にチャイコフ・チン3世Jrは壁を突き破り遠くかなたに飛ばされてしまった。

「よし、つぎで最後じゃ」

村長は自分が避けたために死んだ民をまったく気にしていない。

「ああ」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンは戦場の厳しさを知ってるので特に責めなかった。

「敵将はもう目の前だ!行くよ!!」

エリザベータ・アンゲルトリューテン・ウォンチョンたちはゴスローリのいる執務室に急いだ。

 

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