1.ビジョン

(1)企業におけるビジョンの重要性

改めて言うまでもないですが、会社には、たくさんの人がいます。 そのため、たくさんの価値観があります。 価値観がたくさんあるということは、 たくさんの判断基準があるということです。 「AかBか、どちらにするか?」という二者択一を求められたとき、 Aを選ぶ人も、Bを選ぶ人も、どちらもたくさんいるということです。

会社に限らず、組織というものは、 みんなで協力したほうが、より高い成果を発揮できます。 みんなの意見がバラバラでは、 意見をまとめるだけで一苦労です。 これでは、十分な成果は期待できません。

そこで、多くの会社では、ビジョンやミッションを明文化し、 全社員で共有するという取り組みを行っています。

ミッションとは、その会社の使命です。 社会に対して、何を実践して貢献する会社なのかということです。 ビジョンとは、理想像です。 自分たちのミッションを遂行することにより、 どのような理想を実現するのかということです。

仕事をする上で、大切なことがたくさんあります。 ビジョンやミッションを明文化して共有することにより、 大切なことの優先度が、見えてきます。 優先度が共有できるということは、 判断基準が共有できるということです。 極端に言えば、入社間もない若手社員でも、 社長と同じ判断ができるということです。

このように、ビジョンやミッションを明文化することで、 会社全体のベクトルが揃い、 大幅なパフォーマンスの向上が期待できます。

(2)これまでの日本のビジョン

多くの人がいる組織をまとめていくという意味では、 国も会社も似ている点が多いと思います。

日本も過去には、国民がビジョンを共有していた時代が あったと考えています。 1回目が明治維新から太平洋戦争まで、2回目が太平洋戦争終戦以降です。

明治維新以降は、「富国強兵」が国のビジョンとして 国民に浸透していたと思います。 その少し前の日本人は、黒船と呼ばれた欧米の軍艦を見て、 欧米との圧倒的な技術力、経済力の差に気づきました。 欧米の列強に植民地支配されることが、現実の脅威として認識できました。 欧米諸国と対等な強い国にすることが、 国民の命に関わる切実な問題として認識されました。

「富国強兵」という一点に、全国民が集中することで、 他のアジア諸国と違い、日本は他国から植民地支配されることもなく、 驚異的な発展を遂げることができました。 このように、国のビジョンというものは、非常に強力です。

ただし、もともとは、 欧米の列強から日本を自衛するためだったはずなのに、 アジア諸国を植民地支配し、アメリカに宣戦布告をしたのは、 明らかに誤りでした。 このように、国のビジョンというものは、 間違った方向にも強力に働きます。 強力だからこそ、絶対に使い方を間違ってはならないということは、 忘れてはならない重要な教訓です。

太平洋戦争以降は、「豊かな国」が 多くの国民に共通のビジョンだったと思います。 終戦後、食べるものもなく、餓死者が出るような最悪な状態から、 復興を目指しました。 そのうち、テレビ放送がはじまりました。 テレビ放送が始まったばかりの頃の日本人は、 アメリカ製のドラマを見て、アメリカの一般家庭の食卓が、 日本の家庭よりも桁違いに豪華だったことに驚いたそうです。 それ以来、「アメリカに追い付け追い越せ」を目指し、 エコノミックアニマルと揶揄されながらも、 一生懸命に働いてきました。

その甲斐もあり、高度経済成長で飛躍的な経済発展を実現して、 GDPも世界第2位まで躍進しました。 経済的には、本当にヨーロッパを追い越し、 アメリカに追い付きました。 やはり、国レベルのビジョンは、非常に強力です。

しかし、経済的にアメリカに追い付くと、 徐々に「豊かな国」が国民共通のビジョンではなくなりはじめ、 バブル崩壊で完全に共通のビジョンは存在しなくなったように思います。

共通のビジョンがあれば、個人の価値観も、それに合わせます。 個人的にやりたいことと、共通のビジョンの方向性が合っていれば、 どんどんやります。 個人的にやりたいことと、共通のビジョンの方向性が合っていなければ、 ある程度は我慢をします。 全体としては、共通のビジョンの方向に大きく動いていきます。

共通のビジョンがなくなったわけですから、 個人のバラバラな価値観のままで、みんなが言動します。 何かしようとすると、必ず批判する人もいます。 全体としては、停滞してしまいがちになります。 GDPが、中国に抜かれて世界第3位に落ちました。 停滞は、相対的にはゆるやかな衰退を意味します。

(3)これからの日本のビジョン

ここ何年か連続で毎年総理大臣が変わっています。 政権交代のあとも、やはり1年で変わりました。 これは、今の日本に、 「これからの日本のビジョン」 がないことが原因であると考えています。

今の日本は、様々な問題を抱えています。 それらを速やかに、全て同時に解決することは不可能です。 優先度を決めて、順番を決めて、着実に対処する必要があります。 そのためには、共通のビジョンが必要です。 共通のビジョンがないと、優先度や着手する順番についての 基本的な考え方を共有することは、絶望的に難しいです。 政治家や役人が、熟慮して良かれと思ってやったはずのことが、 次々に非難の渦に巻き込まれています。 これでは、いつまで経っても、問題は解決せず停滞を続けます。

会社であれば、社長や会社のオーナーが、 トップダウンでビジョンを設定することもできます。 日本という国家の場合は、国民主権なので、 国民の大多数が素直に納得できるものでないと、 共通のビジョンにはなりえません。

逆に言うと、 国民なら誰が共通のビジョンを提案してもかまわないはずです。 誰が提案したものであれ、 賛同を得られればビジョンになりうるし、 賛同が得られなければ、単なる独り言で消えていくだけです。 そこで、単なる会社員である私が、 調子にのって 「これからの日本人のビジョン」 を提案させて頂きたいと思います。

世界のビジョン 恒久的な世界平和と地球環境維持
日本人のミッション 人間愛と技術力で世界のビジョンをリードし続ける

グローバル化が進んだ現在では、 日本に閉じるビジョンでは意味がないと思い、 世界全体のビジョンにしました。 そして、その世界のビジョンに向かって、 日本人が果たすべき役割を設定してみました。 いかがでしょうか?