有明海産スズキについて


 私がよく行く緑川では、以前からランカーシーバスはあがっていた。最近、某チーム等が 全国誌に投稿するようになり、その知名度は全国区になった。
 ところが、関東の釣り団体やアングラーを中心に、緑川等で釣れるスズキの大半は大陸スズキばかり であり、マルスズキではない、といった趣旨の記事を見た。
 おそらく、彼らからすると、最近よく耳にする養殖用の中国等の大陸スズキが逃げ出して繁殖したもの か、逃げ出した大陸スズキがマルスズキと交配してできたハイブリッドであるにちがいないと結論づけていているようであった。
 この件について、以前から疑問を持っていた。なぜなら、地元で釣りをしているおじいさん達に聞いても、 昔から緑川等で釣れるスズキは変化していないと言うし、私も15年以上緑川へ通っているが、 以前からこの魚ばかり釣れていたからである。
 緑川のスズキは、明らかに斑点があるものは少なく、小さな斑点がポツポツとあったり、魚体には斑点は 無いものが多い。ただ、共通することに背ビレには斑点があるようだ。
 大陸スズキのもうひとつの特徴であるオデコが丸いや、全体的に頭が小さい等については、大手スーパーで 最近売っている大陸スズキ(これははっきりわかる)とは違い、微妙なものでよく分からない。
 いずれにせよ、以前からこの魚ばかり釣れていたという事実がある。
 私は、ある仮説を考えていた。それは、世界中の人間をみても分かるとおり、人種には境界線が無いことだ。 肌の色にしても、徐々に変化しながら分布してきたことがわかる。魚だってそうだ。一見同じ種類に見えても 少しずつ違うものである。
 スズキも同様で、東京等アジアの東に位置するスズキと大陸のやや南に位置する大陸スズキとの境界線 が果たしてあるのか、ということだ。おそらく、そのような境界線というものは無く、大陸と陸続きであった九州あたり が中間域となり、ここに生息するスズキは、もともと両方の中間種であったに違いないと考えていたのである。
 そんな折、SALT WATER7月号を購入して読んでいたところ、シーバスの生態18の新事実と 題して、特集が組まれており、京都大学海洋生物増殖学研究室の田中教授が、上記とほぼ同じ事を書かれて いたことで、確信をもった。
 という訳で、有明海のスズキは、もともとマルスズキと大陸スズキの中間種であったわけだ。また、九州 から四国、関西、関東と、徐々に大陸スズキのDNAが少なくなり、東京湾のマルスズキに行き着くものと 考える。
 確かに、最近になって、人的な影響として、養殖用の大陸スズキが繁殖、交配している地区があるのかも しれないが、少なくとも、有明海のスズキは、有明海産スズキとして、由緒正しいものであることに違いは ないのである。
 むりやり区別しようとする人達がいるので難しくなるのであって、人間と同じく区別しなければ良い のである。そう、いい言葉があるではないか、みんな「シーバス」なのである。