暗石と和がひっそりと親密度を上げている時、ミルンの部屋は。
「いやー!ちょっとこっち来んといてー!!」
「だー!!なんでいきなりこんなモン見えるようになってんだーッ!!」
「…………この調子で俺のじーさん見えねえかなあ………」
「んー…見えたら見えたで結構鬱陶しいかも」
「みんな楽しそうだねー」
「ちょ、引きこもりのおっちゃん呼んできて!」
「俺に一人で行けってか?!誰かなんとか出来ねえのかよ!?」
「それこそ和たんのしっくすせんすの出番…」
「あ、そういや磯前の旦那が俺の和さん連れてっちまった…取り返さないと」
「駄目だよ日織くん。和くんは具合が悪いからここから出て行ったのに。暗石さんがついてるから大丈夫だよ」
自分達よりも遥かに多い透けて見える存在のせいで、那須以外の全員が先ほどまでの和の恐怖を体験していたのだが。
原因が那須にあるとは露ほども思わず、彼の背後に隠れてしまうものと、早々に慣れていつものペースを崩さないものとに分かれていて。
「和さーん!和さんがーッ!!俺の和さんが磯前の旦那に食われちまうーッ!!」
「そんなワケあるかー!…って、お前の心配は今この状況じゃなくて和だけか?!」
「それよりも、この人さらっととんでもないコト言うたで」
「…幽霊かて入れん部屋の状況、なんで着流しさんが判るん」
「あははは、それくらい日織くんは和くんが好きなんだねー」
暗石の予想通り、那須のせいでこの館に住まうありとあらゆる霊的存在が姿を現してしまい、それはそれは大層賑やかな事になっていた。
雨の檻に閉ざされた屋敷にて、救助に来た人間を巻き込んでの大騒動まで、あと数日…。
【みえるひとびと・完】