甘やかし上手(日×和)








最初、日織は僕とは違って色々何でも出来る、凄い人なんだなって思ってた。








料理はもう、そのままお店に出せるんじゃってモノをいとも簡単に作るし。
自宅にお邪魔してみれば、いっそ感心するしかないくらい綺麗に片付いてるし、その上庭の植木や盆栽もすごく丁寧に手入れされてるし。
専攻は違うっていっても、でも僕が課題に詰まって頭を抱えてると的確なアドバイスをくれるし。
話のネタとかも、それって雑学の域を通り越してると思うってくらい、普通だったらまず知らないことまで知ってるし。



だから、僕は純粋に「日織は凄い人」って思っていたんだけど。




「…………」




日織の家に頻繁に遊びに行くようになって、そして、その、世間で言う「恋人」な関係になって、それは凄く間違ってるって事に気が付いた。

「……あのさ、日織」
「なんです?」
「姿勢、辛くない?」
「いいえ全然」

僕が常々日織に抱いていた感想は確かに間違ってはいないんだけれど、でも、それはあくまで日織そのものを知らない人の、一般的な漠然としたイメージで。

「辛いんだったら、こんな恰好しませんやね」
「そ、そう…」

こうして縁側に腰掛けた僕の膝枕…を通り越してしがみ付いて横になっている姿を見ていると、今まで抱いていた「凄い人」のイメージがガラガラ音を立てて崩れてゆく。

「和さんが大変なんだったら、俺は止めますが」
「ううん、僕は平気だよ」

きゅうっと僕の腰に腕を回してしがみ付いて、それ以上は何をするわけでなく、ただ目を閉じて、きゅうっとしがみ付いているだけ。
だから僕としては(正座じゃ足が痺れて無理だけど)、こうして縁側に腰掛けている時にしがみ付かれている分には、何かをいう気にはなれなかったりするし。
それにいつも世話を焼かれてばかりの僕からすれば、ちょっとでも日織から頼られてるのかなって、そんな風に思えるから。

「天気もいいし、風も気持ちいいし。日織が好きなだけそうしてていいよ。僕付き合うから」
「すみませんねえ」

謝罪を口にするその声も何処か幸せそうだから、日織が飽きるまでこのままでいいやって思って好きにさせちゃうんだよね。

「…………和さん?」

でも、流石に間を持て余した僕が、日織の綺麗な髪を束ねている組紐を外して、それによりさらりと流れる長い髪を手に掬い上げて。
僕にしがみ付いていても解かれたのはわかるくせに、日織が何も言わないで僕がしたいようにさせてくれているから、今度は指に絡めて遊んでみたら。

「痛い?」
「いいえ全然。くすぐったいとは思いますが」
「止めた方がいい?」
「好きなだけ弄ってくれて構いません。寧ろもっと構って欲しいくらいでさあね」
「なにそれ」

日織がくすくす笑いながらも、やっぱり僕の好きにさせてくれるから、僕もますます日織の好きなようにさせてあげたくなってくる。






料理はもう、そのままお店に出せるんじゃってモノをいとも簡単に作るし。
自宅にお邪魔してみれば、いっそ感心するしかないくらい綺麗に片付いてるし、その上庭の植木や盆栽もすごく丁寧に手入れされてるし。
専攻は違うっていっても、でも僕が課題に詰まって頭を抱えてると的確なアドバイスをくれるし。
話のネタとかも、それって雑学の域を通り越してると思うってくらい、普通だったらまず知らないことまで知ってるし。
だから僕は純粋に「日織は凄い人」って思っていたんだど、でもそれは誰でも知ってる「凄い人」な日織であって、僕だけが知ってるこんな日織じゃないからあっという間にその認識を変えてみたけれど。





「日織って、実は甘えたがり?」
「ふふ、どうでしょうねえ?」




何せ一人っ子ですから、なんて適当にはぐらかしながらますますしがみ付いてくる日織の側に居られることが、僕にとっては大切な事でこの上ない幸せなんだ。







……たまに困っちゃうこともあるけど、でも、まあ、それも幸せのうちなんだろうな。






【甘やかし上手・完】



紅縞瑪瑙館一万打につき、拍手で配布していたお礼SSの再録。
(現在はお持ち帰り不可となっております。ご了承下さいませ)。
一万なんて遠い未来の話だと思っていたので、正直驚きの方が
勝っているのですが、いらして下さるすべての方に盛大な愛を送信。
色々と緩いサイトですが、皆様これからも何卒宜しくお願いいたします。

戻る?