三笠編(奈落の城事件中)  04



おい。そんなに目を見開いたら目玉が零れ落ちるぞ。


顔が近い?当たり前だ。
覗かれているという事はもしかしたら話も聞かれているかも知れんし、だとすればここまで近づけなければ会話を聞かれるだろうが。
何…落ち着け、何を言っているのか判らん。だが、とにかく俺のせいだと言いたいんだな?
まあ、それはそうかと俺も思う。
いきなりベッドに押し倒して、あまつさえキスを仕掛けたんだ、その点は責められても仕方はない。しかし日織に操立てしているわけでなし、このまま俺に付き合え。


何故だと?そうだな…お前に興味があるというのは理由にならんか?


……確かに強引だ。
だが、俺もそうは思っているが、お前ならいいと…そして、お前なら他の誰かと殴り合ってでも手に入れる価値はあると、そう思った。
それは口説き文句でしょうだと?
馬鹿者、今まさにお前を口説いているんじゃないか気付け!


…本当に気付いてなかったのか。


まあ…日織を誘き出すドサクサに紛れてだから仕方がない。
正直俺も自分で自分が判らなかった。だが、実際お前にキスしてみて判った。
どうも俺は、お前が気に入った以上に惚れたらしい。
日織とお前がそういう仲だというのならあっさりと諦めたというのに、お前はそれを否定した。
なら俺が、イイ仲の相手がいないお前に迫って何が悪いというんだ。


………何故といわれても………惚れた腫れたに理由などあるか馬鹿者。


…なんだ?ただの視線が随分殺気だって…ふん、そういうことか。判り易い。俺の読みが当たったようだ。


これと日織がどう関係あるかだと?


本気で言っている辺り、少々俺は日織が不憫になってきたぞ。
まあ、だからといってお前を渡す気は毛頭ないがな。そもそも初恋でもあるまいし、何時までも手を出せずにいた奴が悪い。
どうせいつものように気の遣いどころを間違えたか、信頼関係から抜け出すのを恐れたか…あいつも一応可愛げというものがあったんだな。
いやなんでもない。独り言だ気にするな。


耳元で喋るなだと?


何を今更…先ほどから散々お前の耳元で喋っているだろう。


背中がぞくぞくする?


…そうか、感じているだけで嫌悪感じゃないということは、フリをせず本気で続けても大丈夫だな。
安心しろ。流石にここで本番というわけにはいかないが、手を出した責任はちゃんと取る。


それよりも。
そら、耳を澄ましてみろ、廊下が騒がしくなってきたぞ。しかもあの変な視線を感じなくなったろう。
視線を感じなくなったということは、日織が今の俺たちを覗いている場合ではないと飛び出してきたか。


…さて、ここにやってくるのは、雲隠れしていた日織本人と隠し事をしている馬鹿主従コンビのどちらだろうな?


日織を誘き出すのと、お前を手に入れるのと。少々強引とはいえ一石二鳥とはまさにこのことだな。
あいつらの何か言い争ってる声が聞こえるな…ここに連中が来るのも時間の問題か。
…おい大丈夫か和。


なんだと腰が抜けた?


まさかあれだけでお前は…いや、すまん。これは俺のせいだな。
仕方がない、勢いでならなんとかなると思ったが、とりあえずあの連中をどうにかしないといけないからな。



お前をちゃんと口説き落とすのは、日本に帰ってからのお楽しみにしておこう。



拍手用お礼一人語り第一弾の三笠編。
第一弾なのに続きました。長いです。考えが甘かった…。
とはいえ初の試みだったのですが、思いのほか書き易かったので
これからもこの形で作品が増えると思います。
読んで下さる方は、これと会話文の小噺どっちが読み易いんだろ?
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