◆不器用な探偵達とくだらない話◆



和はメールを打つのが遅い。
本人にも苦手意識があるようでもっぱら三笠と連絡を取り合うときは電話になる。
探偵という三笠の仕事柄気を使い和から連絡する事は少ないが、疲れている時ほど声が聞きたい三笠にとってはメールでお手軽に済まされるより喜ばしい事だと。

思ってはいるんだが。

「随分熱心だな」
「え?あ、はい……もうちょっと……」
かれこれ5分以上、和は携帯の画面を熱心に見つめながらメールを打っている。
やっとその手が止まったかと思うと、真剣な顔つきで画面を見つめ、大きく深呼吸したあと、止めた右手の指に再度力を込めた。
「よし。三笠さんすいません。何ですか?」
「いや」
何か話す事があったのではないかと首をかしげる和に、三笠はどうでもいい事のように問いかける。
「さっきのメールなんだが」
「さっきの……あ、磯前さんからのメールだったんです」
やはり。
この2人がメールのやり取りをするきっかけが、和が自分にプレゼントする酒選びの為だったのは知っている。
希少なその酒の対価として、和はたまにメールで近況を報告してくるように磯前に言われたらしい。それから律儀に、メールを送っているようだ。

「三笠さんに持っていってもらったバレンタインのお礼のメールだったんですけど、今度からチョコレートじゃなくて煙草にしてくれって言われたんです。
確かに煙草吸ってる磯前さんは凄く格好いいですけど、健康に悪いし僕から煙草はプレゼントできませんって返事をして……。
でも、年下の僕にそんな事言われたら気分よくないですよね。三笠さんどう思いますか」

俺が知るか。

と喉元まで出かかった言葉を、真面目に悩んでいるらしい和の表情を見て何とか押しとどめる。
「お前が心配している事ぐらいわかるだろう」
「そう、ですよね。ありがとうございます」
しばらく悩んだ表情をしていた和は、三笠の言葉を聞いて少しだけ安心したようだった。
「……えっと、三笠さん、メール見ますか?」
和の思いがけない提案に、三笠は驚きを隠しながら答える。
「いいのか」
「はい。聞いてくるようなら堂々と見せてやれって言われてますし」
その言葉に度量の差を見せ付けられている気がする。
和はよくわかっていないようだが、どうにも先手を打たれている気がして悔しかった。


■■■


「……で?俺の所に苦情申し立てに来たって腹か」
「そんな気は無い」

いつもの居酒屋のいつもの席で、偶然にしか会えない磯前という俳優は手に持ったウイスキーの氷をおかしそうに揺らす。そのまま口をつけるのを見ながら、飲み終わる頃と同時に三笠が口を開いた。

「自分でも狭量だとは思ってるんだ。しかし和と2人の時間をあんたとのメールで潰されるのが癪にさわるのも事実だ。そこで考えたんだが……」
いつになく真剣な顔をして磯前の方を向く。磯前もグラスを机に置くと、相手を見た。


「和と俺と2人であんたに送るメールを書けばいいんだ」
「……あ?」


真面目な顔でそう告げられて、磯前は自分の5年前を思い出していた。
俺も昔はこんなんだったか……?
もう思い出せないが、とりあえず三笠のその提案だけは却下した。
磯前は不満げな相手の顔を見ながら、今度和にメールする時は、『三笠といる時は返事をするな』と入れておこうと決めた。

のりしログ の のりしろさまより頂いてしまいました!
いつもいつも本当にありがとうございます〜!!(喜)
和さんは勿論みーさんが反則的に可愛すぎます。
そんなみーさんに「うちにはもっと狭量なのが居るよ」と
微妙なフォローを入れてあげたい(※何処かの着流し)
そして狂喜乱舞する程に磯前さんが男前ーッ!(悦)
他の追随を許さぬ素敵みーなごは勿論のこと、のりしろさん宅の
磯前さんは格好良過ぎてけしからんですもっと見せて!(え)
何度拝見してもにやにやが止まらないですたまらんわ…!
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