分があるのは、どっち?



「そろそろ子供が欲しくはないか」



和が三笠と同じ探偵事務所で働くようになり、その上(紆余曲折というか、一部多大なる反対を受けて)同じところに住むようになって。
そうして引越しのばたばたが落ち着いた頃、揃って簡単な昼食を済ませてたところで三笠がぽつりと呟いた。

「………」
「何故そこで黙る」
「普通は黙ると思いますけど」

口に入れていたパンを噴き出さなかっただけマシですと、そんな言葉を飲み込む和だったが。
あまりにも三笠が真剣で、しかもどうあっても自分から応の返答を貰わずにはいられないといった形相でもあったから、咀嚼しながら和なりに言葉の意味を考える。
…とはいえその思考時間は大したことはなく、三笠が本当は何が言いたいのかすぐに思い当たったため、ちょっと困ったように眉間に皺を寄せてしまう。

「僕だって大好きですから反対はしませんが、でも可愛がるだけじゃ駄目なんですよ?」
「…………」
「命を預かる責任だってあります」

子供という言葉が一体何を示しているのか判りきっているだけに、あえて訂正する気も失せてまずその事を注意すると、三笠はすぐにばつが悪そうに視線を逸らして。
経験上はっきりとそう言い切る和に、それ関しては未経験のため立場が弱い自覚がある三笠はふいっと完全に顔を逸らしてむくれてしまった。

「…お前は俺の夢を否定するのか」
「否定なんかしません。でも、これに関しては譲れないんです」

いい年をした男がむくれる様は異様としか言いようがないのに、基本的に怒りの沸点が極度に高ければ殆どのことに対して許容範囲がでかく広すぎる和には、それに対して突っ込みを入れるという概念がないらしい。

「せっかく前の住処よりも広い此処に引っ越したというのに」
「その気持ちはわかります。それに僕だって同じ気持ちです。でも、ちゃんと現実を見てください」
「…………」
「諦めきれないんですか?」
「当たり前だ」
「…どうしても?」
「何度も聞くな」
「……じゃあベビーシッターに日織を頼んでいいんですね?僕も日織だったら安心して預けられるから…」
「それだけは大却下だ」

が、結局こうなることが判りきっているからこそ、和は最初から釘を差した上で反対しているのである。

「あのですね、子供…っていうか、子猫の世話がどれだけ大変で手間がかかるか判ってますか?四六時中、それこそ数時間おきに付きっ切りでミルクその他の世話をしてあげなきゃいけないんです。
それに事務所に連れて行けば…なんて思ってるならそんな考え捨ててください。あの事務所でいつも残るのは誰ですか。僕と所長ですよね。
その上僕が三笠さんの助手に入ると所長だけ、酷い時には全員いなくなりますよね。そんな中に子猫だけを置くつもりですか。可愛がるだけで責任をもてないなら飼う資格はないです」
「………俺が残る」
「馬鹿なことを言わないで下さい。探偵事務所の皆さんを困らせるつもりですか。
本気でそう考えてるなら僕は子猫ごと日織のところに行きますからね。そして少なくとも子猫が離乳して一通りの躾が終わるまでここに帰ってきませんからね」

普段はどこまでも押され流されてしまう和だったが、こういったことに関してはある意味誰よりも毅然としていると、そう身を以って知った三笠だったが。
それでも目に見えて独占欲が強い三笠は日織の力を借りるということに抵抗があるらしく、どうしても首を縦に振ることが出来ないのだ。

「それにもし、何かやむを得ない事情で飼い始めた場合、僕が三笠さんを構う時間は確実に減りますよ。そして三笠さんだってきっと僕に構ってる時間なんてなくなります」

だって育児優先ですから。
止めにはっきりとこう言われて、三笠は究極の二者択一を迫られることとなる。




「…………」




長年の夢であるからこそ、猫は飼いたい。
だがしかし、他の障害を抜きにしても、そして子猫の間だけだと判ってはいても、和が自分を構ってくれなくなるのは耐え難い。
けれどやっぱり猫は飼いたい。
それでも日織に預けるのは勿論、和が自分を構う時間が減るのは辛抱ならんと思う訳で(以下延々とループするので強制終了)





「………………………」





一人長考タイムに入ってしまった三笠を他所に、和はそっとため息をついてから、中断させられていた食事を再開するのだった。




【みーなご新婚物語・完】

いつもお世話になっております、のりしろさまへの進呈品。
これでカカア天下決定な馬鹿ップルみーなごSSです。
正直なんか原作の和さんとかなりかけ離れた感じが
否めませんが、でもらぶらぶで幸せなのは間違いないかと。
純情路線まっしぐらな36歳と21歳の探偵カップルです。
みーなごは交換日記から始まるんですよね、のりしろさん!(笑)
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