年上の弟・年下の兄(椿×和)
初めて見たとき、絶対俺より年下だと思った。
なのに話してみれば年上で、そのくせ大層怖がりで。
聞けば姉が一人いるらしく、形は違えど女兄妹からの攻撃から日々耐え抜いている身としては、ちょっとだけでも親近感を得てみたりして。
…だから、なんだろうか。
「好き嫌い言ってんじゃねーよ。ガキかお前」
「だって!嫌いなものは嫌いなんだよ!」
気が付けば、妹達の面倒を見ていたときみたいに、嫌いだとダダを捏ねる相手に睨みをきかせていた。
「お前がブロッコリーを嫌いなのはよーく判った。…けどな、俺の料理が食べたいって言ったのはてめーの方だろーが。
それなのに何か?嫌いなモン出されたからって、嫌ですで済ませる気か」
「……だってこんな塊で食べたら吐いちゃう……」
「どんだけお子様な味覚なんだ、お前」
二十歳を超えた成人男性とは思えないその言い草に、ただでさえ短い俺の堪忍袋の緒が切れかけたが。
「頑張って食べる…から、片付けないで」
泣きそうな顔でそう懇願すると、相当嫌いなのか恐る恐る問題のブロッコリーにフォークを伸ばして…。
「…いーよもう。嫌いなの知らねーで出した俺も悪いんだし、無理すんなって」
本気で涙ぐむその様子に、いっそ不憫になって妹達の時と同じように俺の方が折れるしかなかった。
「でも、せっかく壮くんが作ってくれたんだよ?だったら…うん、僕が頑張ればいいんだし…」
「だからってなあ…」
別に罰ゲームを強制している訳じゃなし、それに塊で食べたら吐くと言っていたことは聞き捨てならない。
せっかく邪魔者(特に着流しの保護者)を押しのけて、やっと得たこいつとふたりきりの時間が台無しになるのは、俺がいやだ。
「判った。ちょっと待ってろ」
「?」
そんな思惑もあって、変に意固地になった「お兄ちゃん」のために、俺がちょっとだけ一工夫してみれば。
「ほれ、騙されたと思って口開けろ」
「…え、」
「ブロッコリーだけど、食えるだろ」
「すごくいい香り…」
細かく刻んで大蒜と鷹の爪、そしてサラダ用に残っていたマカロニを加えてバターで炒めたものは、最初こそ俺が強制して口に運んだけれど、その後はさして抵抗なく自主的にその口へと消えてゆく。
「うまいか?」
「…うん」
年下でも、普段俺は「お兄ちゃん」で。
年上でも、普段こいつは「弟」で。
だから、なんだろうな。
…俺は、こいつのために何かをすることが、全然苦にならなくて。
むしろ、それが心地好く思うんだ。
小噺ブログより移動、一部加筆修正しました。
えーと…なんかまた消化不良気味に…(大反省)
何処までも甘酸っぱいというか、こそばゆいものしか
出来上がらない椿×和なんですが一体どうしたら。