始まりと、繋がりと
成歩堂は走っていた。
ただただ『彼』に会いたくて、雨の中、傘もささずに走っていた。
「…っ、く…」
『彼』住まいがあるマンションまでやってくると、上がる息を整えようともせずに、震える指でエレベーターのボタンを押す。
しかし。
実際に目当ての階に降りたち、彼の住まいのドアを目にした途端、成歩堂は『彼』に罪悪感を感じてしまう。
「嫌われ、る…?」
ただでさえ気難しい『彼』が、いきなりやってきたずぶ濡れの成歩堂をみてきっと呆れるだろうと。
それよりも。
…自分はゴドーに何をされたと告げるつもりなのか。
『彼』になにをいうつもりなか。
自分の意志じゃない。
…そう言って、弁解して、結局何を許してもらうのだ?
そもそも自分たちの関係は、長い付き合いの友人という以外、一体なんという何なのだ?
「……」
ゴドーの言った「容赦しない」が何であるのかよりも、結局自分はゴドーからやみ雲に逃げてそして…『彼』にすがりたかったことに気付いた。
気付いた途端、成歩堂は冷静になる。
「僕が、考えなきゃ、いけないんだ…」
全身に滴を滴らせたまま、インターホンに伸ばしていた手を思い留まって。
深く、息を吸って。
深く、息を吐く。
「あいつが今、ここにいるはずがないのに。来たって意味がないのを知っているくせに。
…自分で考えるしか、ない、くせに…。」
今ここにはいない『彼』には関係のないことだから。
これは、自分とゴドーの問題。
あの意図の掴めない検事から出された、自分に対する謎掛け。
「帰ろう…」
雨の滴とは違うものを頬に伝わせて、成歩堂はゆっくりドアに背を向ける。
中に入れない訳ではないけれど、今の自分にはその資格がないように思えるから。
…ここにはいない『彼』から送られたそ合鍵の、その意味を知らず、成歩堂はただお守りのようになっている《それ》の存在を、スーツの内ポケットに確かめる。
「…みんな勝手だよ」
黙っていなくなった『彼』も、わけの判らない事を仕掛けたゴドーも、そして、家主の留守を知りながらもここにやって来た自分も。
…皆、結局は自分のことばかり。
絡み始めた糸は何処へむかう?
《始まりと、繋がりと・完》
初めて書いたゴドナルに対し続きませんといいながら
結局絡めて打ったミツナルSS(…多分←自信ナシ)。
続けるつもりがないのに打ったのは、恐らく管理人
ゴドナルに対しミツナルの更新状況が滞ることを
見透かしてのことかと。(←まるで他人事)。