10・きっとこれが最後になる(逆転裁判ゴドナル)




「……」

小さな寝息をたてて眠っている成歩堂の髪を、ゆっくりと、そして静かに優しく鋤くように撫でて。


「………」


本人曰く『いっそ面白いほどクセのある』その感触を、自分の掌に覚え込ませるために、俺は何度も何度もそれを繰り返す。


「………」


憎しみよりも、哀しみが。
哀しみよりも、愛しさが。
愛しさよりも、ただ後悔だけが。


とうの昔に渇れて壊れたはずの心から溢れでて、狂気と隣り合わせの想いと共に成歩堂を渇望する。



「何時までも、なんて望んじゃいねぇ。
だが、まだ、もう少し…お役後免になりなくはねぇんだ」



いつ動かなくなってもおかしくはない自分の体を嘆いたところで、過ぎ去った時が戻るはずもなく。



「ん…ごど、さん?」
「悪いな、起こしちゃったかい」
「…どうか、しましたか」
「どうかって?」
「すごく、泣きそうに、見えたから…」



完全に覚めてはいない状態で、そのくせじっと俺を見つめてくる成歩堂の眼差しは真剣で。
隠せるものなら隠し通したい現実を、例えまた自分が傷付く事でも全て打ち明けろと、そう声なく叫んでいる。





「抱き締めても、いいか」
「いくらでも」
「アンタが困るくらい、触ってもいいか」
「ゴドーさんが望むだけ」





だからこそ愚かな夢を望むくらいなら、俺は今のこの時がほんの少しでも長く続く事を願う。







だがそれを願う俺に、許された時間は少なすぎて。






『きっとこれが最後になる』






いつもその想いと共に触れる掌に、そして成歩堂の心に、俺は自分の為の愛を刻み込む。







『最後』の時は、そう遠くない明日(みらい)。





【きっとこれが最後になる・完】

小噺ブログより移動、一部加筆修正しました。
ゴドーさんの場合いきなり亡くなる、というより
目から先にダメになると思うのです。
しかしアホか暗いか、両極端なネタしかないなあ…。
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