相手の為に必要なコト






それは、事務所で顔を合わせた矢先のこと。




「おや、なんだコネコちゃん達。今日は一段とカワイイな」
「オジサマ、それは本当ですかっ?」
「わぁ、さすがゴドーさん!チガイの判る男ってヤツですね!」

挨拶がてらふと感じた事を軽く言葉に乗せてみれば、二人の少女は大げさまでに喜びを顕にしてきて。

「ムチのけんじさんから、かわいいリップクリームをいただいたのです」
「で、嬉しかったからさっそくつけてみたんです。ね、はみちゃん」
「はい!」

そう言って手のひらで包むように持っていたリップクリームを、二人そろってゴドーに見え易い位置で掲げてみせる。

「なるほど君てば全然気付かないんだもん、あれじゃ女の子にもてないよねぇ」
「はい!」
「…そうなのか?二人してこんなに可愛くなってんのに、ニブいバンビだな」

席を外している成歩堂はまだ全く気付かなかったのだとご立腹の二人に同意しながら、それでも
ゴドーの頭の中は別の事を考えていたりする。

(まぁ、身だしなみは必要だよな)

そしてまだ何事かを訴え続ける二人をおつかいで宥め遠ざけると、ちょっとだけ留守にしていた成歩堂が帰ってきて。

「コネコちゃんたちに使いを頼んだぜ」
「…みたいですね」
「すれ違ったのか」
「はい」

リップクリームの件で朝から盛大に二人に拗ねられている成歩堂は、すれ違いざまにすぐに気付いたゴドーを嫌味ったらしく誉められ、何も言い返せずに帰って来たらしい。

「もう、せめて色付きなら気付けたのに」
「苦しい言い訳だなバンビちゃん。アンタなら色がついていても気づかなさそうだ」
「酷いですよゴドーさん!」

ククッと笑いながらコーヒーを差し出すゴドーにむくれてみせる成歩堂だったが、そこで奇妙な違和感に首を傾げてしまう。

「あれ…?」
「どうした」
「なんか…んん?」

マグに口をつけてコクリと喉を鳴らす成歩堂の視線は、ずっとにやにや笑いを続けているゴドーの口元にあって。

「…あ、なんだ。ゴドーさんもリップクリームつけてるんですね」

程無くしてその違和感の正体に気付けば、あとは何事もなかったようにコーヒーを啜るだけ。

「なんだい、ちゃんと気付くじゃねぇか」
「え?」
「コネコちゃん達は全然気付かなかったぜ」
「……へぇ」

にやにや笑いから一転、成歩堂にしか見せない純粋な笑みを浮かべたゴドーに、手にしていたコーヒーを飲みながら成歩堂も柔らかく微笑んで。

「だって、それって僕の為でしょう?」
「ああ、イイ男ってのは恋人の不満を極力解消してやる努力をしないとなぁ」
「……努力は認めますが、やり過ぎはいただけないですからね」

必要以上に近づく距離で言葉を交わし、それでも二人の笑みが消える事はなく。

「キス禁止令は解除かい?」
「はい」
「今すぐだぜ?」
「何回も言わせないで下さい」

息も触れ合う距離でそう言葉を交わし、そのままどちらからともなく相手の唇を求め重ねてしまう。





「帰ったら沢山キスしましょうね、ゴドーさん」
「当たり前だぜ。…お預けを食らった分サービスして身体中に沢山してやるから覚悟してな」
「うわ、それはちょっと手加減して欲しい…」







真宵たちのリップクリームに全く気付かなかったくせに、ゴドーのそれにはすぐに気付いたその訳は、唇を重ねる毎に酷くなっていることを心配した成歩堂が、改善されるまでキス禁止令を出していたから。









…鈍い鈍いといわれていても恋人のそれにはきちんと気づくあたり、成歩堂もある意味イイ男の一人なのかも知れない。








【イイ男のミダシナミ・完】


なんとなく成歩堂よりゴドさんの方にリップを使わせてみたくて
こんなネタを打ってみました。←これも実は拍手用ネタだったり。
なんか必要以上にいちゃこらしてるんですけど…なんでだ?
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