告白と言うより脅迫だろコレ!( フォルカ×アイク)
火消し。
名前よりもその名で呼ばれる事の多い暗殺者を、意図しては一度足りともそう呼んだことのないその青年は。
「フォルカ」
今日も何時もと変わらず、他者に言わせると躊躇いもせずに呼び付ける。
「何だ」
「あの砦に配置されているロングアーチへの細工を頼む」
「条件は」
「なるべく早く、しかしあからさまではなく、だ」
空気が揺れるよりも微かな気配だが、一歩、また一歩と近づけば、青年の前に闇より深い緋がその姿を現した。
「…それだけか」
「それだけかって、アンタな…俺は十分難問を押し付けてるんだぞ?」
「本業でない時点で大した事ではない。…稼ぎにならん」
「……」
難攻不落の砦の、その一因と吟われているロングアーチへの細工でさえそうあっさりと言い切る暗殺者に、無理だと言われる覚悟だけをしていた青年はしばし言葉を失った。
「フォルカ」
「……」
「引き受けるのか断るのか、どっちなんだ」
だが青年は元々駆け引きを含めた言葉の表裏を読むことが苦手な上に、それに輪をかけて捉える事も大層苦手な性分なものだから、今回も深く考える前に口が尋ねていた。
「それはお前次第だな」
「は?」
「金でなくとも、上等な報酬があれば引き受けてやっても構わないが?」
口許を覆い隠すマスクに加え元より表情が動かないはずの、闇より濃い緋の暗殺者の目が。
青年を見据えそう言い放つ時、たった一つの答えだけを求め妖しく鋭く光る。
「…俺の何処が上等なんだ?」
「それはお前個人の間違った見方だ。お前は自分の価値を知らなすぎる」
金ではない上等な報酬が青年そのものだと要求されるのは、これが初めてではないものの。
本当に自分の価値を理解出来ない青年は、緋の暗殺者からの要求に躊躇いつつも応えるしか術はない。
「まるで強迫だ」
「俺を手駒にしておきながら随分な言い様だな。だが、応じるつもりがあるなら目を閉じろ」
「やっぱり強迫じゃないか」
「嫌なら他の奴にやらせるんだな」
「…ったく…」
納得しきれないけれど、納得するしかない要求に、青年は軽く溜め息を溢しながらも蒼の双眸を閉じてそれに応える事にした。
近付く気配と何かの衣ずれの音を感じた先にあるのは、唇に落とされる思いの外柔らかな温もり。
「本当に大した依頼ではないから、今回もこれだけでいいだろう」
「……」
絶対に何かがおかしいと思いつつ、結局青年にはそれが何であるのか分からない。
告白ではない、強迫のような要求から始まるのは、何?
蒼炎3周年に気付いて書きかけていたSSを無理やりUPしてみました。
配布先は
elianto
さま。書ききる自信がないけど見るのは好きなんですお題。
しかしお題からして、これはギャグにするつもりで書いていたんですけど…
なんか激しく間違った気がしてなりません。てか団長も暗殺者もダレ状態。
こんなフォル×アイってありなんでしょうかねえ…?(←小心者がここにいますよ)