幽霊と司令補



自分、本条雄一郎(享年24)。



弟が心配なあまり死んでも死に切れず、想いが高じて桜坂消防署のマスコット・さくらたろう(の、卓上ぬいぐるみ)に乗り移りました歴まだ数ケ月。
…自分只今、絶体絶命の大ピンチ。
なんと司令補が(無言で)こちらをにらんでいるのだ。


(落ち着け俺。冷静になれ俺。
今自分は何処からみても可愛いさくらたろうそのものだ、絶対にバレない!)


大地は土井と連れだってコンビニに買い出し中の今。
幾ら大恩ある元上司とはいえ、弟以外に乗り移ったことを気付かれてはイカン!と思うわけで。
おかげで只今自分、さくらたろうになりきっている。



だがしかし、さくらたろうになりきっていた俺はハタと気が付いた。



…ぬいぐるみになりきるってなんだ。
そもそも《さくらたろうになりきる》というのはどういうことなんだ?
大体(大地にはこちらから話かけたらから、あいつだけは知っているが)俺がこうしてこの世に留まっていることは、誰一人として知らない筈じゃないか。
普通は霊感がなきゃ判らんだろうし、冷静になって考えてみれば、こちらから話かけなければまず気付かれないんじゃないか?

(……っ!)

なんて余裕をかましていたら、いつの間にか司令補は俺の目の前に立っていた。

(あ…相変わらず気配の読めない人だ…)

無言ながらも、鋭い眼光で俺を見下ろすその姿に、何もしていないのに怒られているような錯覚に捕らわれる。
しかし焦る俺とは対照的に、司令補は俺の(というかさくらたろうの)頭をもふもふ撫でている。
そしてしばらくそうしていたかと思うと、最後にぼふっ!と大きく(叩くように)撫でてから、何事もなかったかのようにくるりと背中を向けて、自分の席へと戻って行った。

(はー…やれやれ)

知らずこわばっていた身体から力を抜き、ほっと溜め息をついた途端。

「あんまりそこに留まるんじゃねぇぞ、雄一郎」
『………!?』

自然過ぎるほど自然に司令補にそう言い切られ、俺はついうっかりすくみ上がってしまった。

「いいな?」
『は…はい』

余計な事は一切聞かずそれだけを言うと、あとは何事もなかったかのように司令補は報告書に目を通し始める。




桜坂消防署、堀越司令補。



…この人からみたら、俺は(死んでも)まだまだヒヨっ子らしい。



【さくらたろう・完】


数年前に書いてそのままにしていた、桜坂消防隊のSS。
このゲーム無双キャラの声優さんが一杯出ていて、無口な
周泰が主人公で喋りまくりだったり、渋い関羽がちょっと三枚目な
おいちゃんだったり、物凄く色々突っ込みどころなゲームです。
一番の突っ込みどころはゲームシステムなんですが、まあこれは
実際にやってみてのお楽しみです。面白いですよ〜。

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