その日はとても良い天気だった。
「はー…。こう、出場のない時間は良いなぁー…」
「んだなっすー」
「茶がうまいなぁ」
「ほんてんだなっすまんずー」
三木が幸せそうに目を細めながら茶をすすれば、緒形は窓の外に目をやりながらのんびりと合槌をうつ。
「おおっと、なぁにジジくさい事言ってるんスか副長!」
「…と、怒鳴るわりにお前は団子かぁ?」
「いやまぁ、その」
「腹ぁ減ってちゃ、いざって時に力が出ねなだっす、副長ー」
「…と、いうことで」
しっかりと団子をかじりながら配り歩く嶋に三木が茶化せば、緒形がこれまたのんびりと合槌?をうつ。
「はは、和むのはいいが気を緩めるなよ」
「了解してますよ。しかし、こうして和めるってのはいい事ですなぁ」
「殺伐とした現場ばかりだと、気も荒むからな。いい機会ってヤツだ」
三木が嶋から回ってきた団子を巡回から戻ってきた船越にも渡せば、彼もまた、茶がうまいといって嶋に茶化される。
そんな調子でしばらく談笑しながら和んでいた桜坂のメンツだったが。
「…食べ物以外の和みが帰ってきたぞぅ」
「は?」
緒形の呟きに一同揃って彼をみた。
「おいおい、なんの事…」
中津川が呆れながら緒形の視線に自分のそれを合わせると、
「なるほど」
そこに居たのは、巡回から戻って来たばかりの大地と土井の姿。
「戻りました」
「ただいまっスー!」
「おぅ、お前らの分も団子あるぞー」
「ありがとう嶋さん」
「やったッスーっ!」
すかさず嶋が二人に近寄ると、まるで兄弟のように、にこっと同じ表情をする。
「茶も後でいれてやるからな。まず手を洗ってからこれをとれ」
「ありがとう嶋さん!」
「嬉しいっスー!!」
そしてまた、同じように破顔する。
「…平和だなぁ…」
「平和だな」
「平和だねぇ…」
そんな様子を眺めていた面子、大地と土井を眺めて揃いも揃って同じ言葉を口にした。
「んー…。わらし子達が犬コみでだはんで、見でっど和むんだな」
…緒形の言葉を訳すなら、大地と土井はさしずめ大型犬と小型犬といったところか。
出場ナシの桜坂消防隊は平和である。
《わんこワンコ・完》
桜坂消防隊の皆さんの、ほっこりまったり平和な一日。
…緒形さんの東北弁は管理人の地域の訛を持ってきました。
←書くのは楽だったけど、知らない人は変な言葉だって思うんだろうなあ…。