仕事だから仕方がないと頭では理解していても、それでもやっぱり子供は些か寂しさが隠せない。
しかし、どうやらそれは子供だけではない様子。
「え」
ロケで東北に行っていた磯前が、土産と共に和のアパートへやって来たのはほんの一時間前。
いそいそとお茶の用意をして、磯前が語るロケの様子や合間にふらりと出かけた所の話を嬉々として聞いていた和だったけれど。
「2週間……」
美味しいお土産と、逢いたかった磯前と、その彼の話が揃ったことに和は子供のようにはしゃいでいたのに。
明日一日のオフの後、磯前が今度は京都に行かなければならないと言ったところで、もともと表情を繕うことが苦手なだけに誤魔化す気にもなれず。目に見えて意気消沈してしまっていた。
「おい和」
「はい?」
「もうちょっとこっちに来い」
「?」
ふにゃりとそんな音がしそうな雰囲気で肩を落とす和に磯前は苦笑しか出来ず、でもこうして二人きりで逢えている貴重な時間を無駄にする気はなくて。
「………(ぽふっ)」
「!………?」
「………(ぽふぽふ)」
「……忠彦さん?」
「んー?」
「あの、一体何…?」
「2週間分まとめてな」
頭を撫でるという、下手に声をかけるよりよっぽど効果のある方法で和の気分を戻そうと試みる。
「どうした?」
そうすれば、和は磯前が頭を撫で易い様に自分からも擦り寄ってきて。
「もっと」
「ああ?」
「もっと頭撫でて下さい」
「和?」
「2週間も会えないなら。…僕が寂しくならないように、磯前さんが帰ってくるまで我慢出来るように、前より沢山撫でて下さい」
偽りのない真摯な声音と瞳で以って、目一杯構い倒してと犬か猫のように強請ってきた。
「…頭を撫でるだけでいいのか?」
それに対して磯前が絶句したのはほんの僅かな時間。
直ぐににやりと人の悪い笑みを浮かべては和の頭に乗せた手を後頭部に回し、ぐっと自分の方へ引き寄せながらわざと低く囁けば。
和は擦り寄った体勢でちらりと見上げるように磯前に視線を向け、くふくふと悪戯を仕掛ける子供のような仕草で自分から抱きついた。
久しぶりに会えたのに、またすぐに離れ離れ。
仕事だから仕方がないと頭では理解していても、それでもやっぱり子供は些か寂しさが隠せずにいれば、実はそれは子供だけではない様子で。
「勿論それ以外でもいいんですけど。…っていうか、これだけじゃないですよね?」
「当たり前だ」
寂しさを埋め補うように抱きついてきた子供を、大人は自分も同じだと言わんばかりに抱き締め返し。
後は貴重な時間を無駄にしないように、自分の腕にいい具合で収まる子供を組み敷いて互いの熱に溺れてゆくだけ。
逢えず寂しいと感じている強さは、大人も子供もどっちもどっち。
【どっちもどっち・完】