09新年お祝いフリーSS 式神の城編


騒ぐだけ騒いだ大晦日。



凡その騒ぎの大元である不肖の弟子と、その式神になってしまったの元最終兵器の少女と。
そしてありとあらゆる厄災(家主限定)を齎す張本人であり一番の発言力を持つ魔女、従兄を追い掛けてきたやたら喧嘩腰の女医に、その女医を主に宥める役目の気の合う傭兵と。

何故か(とても宴会には向かない)事務所にやってきて喧々囂々と賑やかに飲み食い大騒ぎを繰り広げ、騒ぐだけ騒いで…そのまま新年に持ち越すだろうと、そう家主である探偵…日向が一人覚悟していたのに。



「…金さんや」
「ハイ」
「なんと言うか…静かだな」



年が明けそれぞれ新年を祝う言葉を交わした途端、全員あっさりと事務所から出て行ったことに呆気に取られていた。

「そうデスネ。皆サン帰られると静か思いマス。デモ皆サン楽しそうでしたし、料理も気に入るしていただけて良かったデス」

しかし呆気に取られているのは日向だけで、同居人である金といえば驚く事無く至って平然としていて。
さして気にした様子もなく、皆が飲み食いしていった器やグラスを手際よく狭い給湯室に運んでは、残った料理を保存容器に詰めて冷蔵庫に納めてゆく。

「ああ、俺も手伝う。…で、お前さんあいつらがあっさりと帰った理由を何か知ってるのか?」
「アリガトウゴザイマス。では簡単でイイデスから、手早く終わらせるしまショウ。
で、何か知るはアリマセン。ですが、これは私がお願いした事なので」
「…え?」

金にだけ任せるのも気が引けるのか、殆ど役に立たないことを承知の日向がせめてゴミの片づけを買って出ると、金は止めるでなく感謝の言葉で応え日向の質問にもあっさりと答える。

「金?」
「今日だけは二人きりがいい、私が皆サンにお願いしたのデス」

なんともないことと、あっさり答える金の言葉に日向は思わずゴミを捨てる手を止めて。
金が言った言葉の意味が本当に判っているのかと、そういう意味を込めて改めて聞き直せばやはりそれが変わることがなくて。

「新しい年を静かに過ごしたいと思った、私の我侭デスよ」

そうふうわりと笑う金だったが、その本当の理由はきっと日向のため。
年越しで振り回されることに正直なところ閉口していた日向の気持ちを汲んで、せめて元旦だけはと金がお願いしたであろうこと。
事情があって逢えずにいた期間が長くとも、側にあればなんら関係なく通じてしまうことに、日向は面映く思いながらも喜びを覚えるだけ。

「…なあ金さんや」
「ハイ何ですカ」
「折角元旦に二人っきりなんだし、俺としては改めて親睦を深めたいんだが」

そして金といえば相変わらず調子に乗る日向にちょっとだけ思案顔になるも、その提案は自分にとっても魅力的だから、応じる代わりにこちらの提案も忘れない。

「ソウデスネ…日向サンが私にフカフカの毛皮とモフモフの尻尾を与えて下さる、それならば」
「そうきたか」
「そう来マシタ」
「ま、いいか。どのみちお前さんと二人きりなんだからな」

日向としては金の提案とは違う親睦を深めたかったのだけれど、その為にもこれは飲むべき条件だということがお約束だから。


「じゃあこれをさっさと片付けて、まずは俺の思うような親睦を深めることをせんかね?」
「…………ハイ」


ぴこっと尖った耳と言葉よりも雄弁に喜びを表現している尻尾を丸出しにして、それはそれは嬉しそうに微笑む紫水晶の瞳にほだされて。
新年早々調子に乗る日向玄乃丈という名の大神さまの提案に、金は少しだけ考えてから苦笑とも微笑とも取れる笑顔で応じるだけ。



静寂が訪れた新年を迎えたばかりのH&K探偵事務所にて、家主とそこの同居人は。



…どうやら今年最初の一日を、色々な意味で仲良くすることから始める様子。


【元旦の過ごし方・完】

09年お正月寿ぎ期間限定で拍手に置いていたフリーSS。式神の城編。
現在は配布期間終了につきお持ち帰りできませんのでご了承下さい。
もはや玄×金って書かなくてもうちでは式神=玄金が成り立つので
今更書きませんが、相変わらずの熟年相思相愛馬鹿ップルでございます。
シリーズ通して火力が弱く公式で犬呼ばわりされるまで落ちた大神さまと、
代打登場になってその価値を見出され多くのプレイヤーが嘆いた糸目道士
…って書くと泣ける。人気と火力の差が反比例してるのも泣けるけど。
いつか2仕様の1を出してくれないかなーと無駄と知りつつ主張してみる。
でも正直新作出されて駄目出し食らうより、こっちの方が需要ありそう…。
戻る?