はじめに。
これは式神仲間の方の御本にゲスト参加させていただいた時に考えついた、式神の城《T》の、かつエボオリジナルカラーの話です。
日向は『平和主義・菜食主義・狼の血が騒がない』メガネ着用。
金は『おちび・おリボン・ウクレレケース持ち』な日向大好きっ子。
…といった、有り得なさすぎる設定になっております。
なお、ネタとして出るかどうか判りませんが、金の仁王剣は瞬殺威力の代わりにボムは水鉄砲の為ダメージゼロ。完全に緊急回避用。
ボム発動の際は変化した日向にまたがってます。←むしろ日向が背負った?
こんなアホ設定でもよろしければ、先にお進み下さいませ。
いつもの式神の世界とは、ちょっと違った式神の世界。
同じようで同じでない、違うようで違わない、そんなおかしな式神の世界。
………………………の、朝。
「げのじょー!!おきてー!!!」
「ぐはッ!!」
日向探偵事務所では、家主である(紫)日向玄乃丈の私室になっている一室から、幼い声と何か潰れたようなくぐもった悲鳴が聞こえてきた。
「おきてー!!おきてー!!あさデスおきろー!!」
「お、おもッ、重い!!」
低血圧で寝坊が常の紫日向に、小さな桃金は毎朝彼のベッド…というより紫日向そのものにダイブして、まさに身体を張った起し方をしているのだ。
「おきておしごとするデス!!」
「…………」
「デジョンごはんつくったデス!!ちゃんとたべておしごとするですッ」
毛布にくるまったままの紫日向に伸し掛かり、ゆさゆさと揺さぶりながら、それでも反応のない相手にむう…っと桃金はふくれてみせる。
「げのじょーッ」
「…………桃金」
「きゃう!?」
じれた桃金が渾身の力で紫日向に抱きつく(というよりしがみ付く?)と、紫日向は毛布の中から右腕だけ伸ばし、自分の上で起きろを繰り返す小さな身体を引きずり込んだ。
「げのじょー?」
「…………」
しかし紫日向は己の腕の中に桃金を抱きこむと、そこから何かをするわけでなく、そのままくかー…っと寝息を立て始めてしまった。
「…………」
が、それだけでは納得できないのが桃金。
「おきろー!!げのじょー!!」
腕の中でばたばたともがきながら、日向を起そうと小さな手で彼の顔をぺちぺちと叩く。
「………オレは眠い……」
「デジョンのつくるしたごはんはーッ!?」
「後で食べる…」
「エーッ!?」
「そもそも今日は休みだろうが……。おとなしく寝とけ……」
「……………」
休みというよりは、昨夜ようやく依頼がひと段落ついたという意味なのだが。
そうとは知らない桃金、作ったごはんは食べて欲しいけれど、それよりもこうして珍しく紫日向から抱締めてくれていることの方が大事で。
そして紫日向が大好きな桃金は、寝ぼけている彼にここぞとばかりにいつものようにおねだりをした。
「じゃあデジョンにちゅ−して!!」
いつもなら子供が何を…とはぐらかして相手にしてくれないのだが、今日は勝手が違ったようだ。
「………ほれ………」
「んふふ〜」
おざなりとはいえ、ちゅ…ッと「額」に口付けてやると、桃金は心底嬉しそうに紫日向に抱きついた。
「デジョン、げのじょーといっしょにねます〜」
「………そうしろ…………」
ついでといわんばかりに紫日向の腕枕を奪うと、桃金はそれはそれは満足そうに一緒に微睡み始めた。
「デジョン、げのじょーからちゅーしてもらったです〜」
「え?」
「ちゅーしてもらってー、いっしょにねました〜!!」
「……とうとう理性を捨てたの?」
「違う……」
遊びに来たふみこに、誤解を招きまくる話をして聞かせる桃金。
数時間後、目を覚ました紫日向が自分がやった事に気付き、その後苦虫を潰したような表情で一日を過ごした事は想像に難くない。
《大好き・完》