君を想う5つのお題 両想い編 「この瞬間を待っていた」











「俺は、お前さんが好きなんだ」











気の置けない友人としてではなく、他の誰にも渡したくない特別な存在だと自覚して。









「ただの仲良しなんて関係を望んでいるんじゃない。
…男のアンタを抱きたいと…そう言う意味で俺はアンタが好きなんだよ」

拒まれる事を承知で、しかし冗談と取られるのは御免だと、そう素面で口説いて。
嫌悪はなくとも困惑しているその身体を抱き締めて、肩口に顔を埋めては逃げないようにと腕に力を込める。

「アンタが拒むなら、もう二度とこんなことはしない。振るつもりならはっきりと言ってくれ。
もしそうだとしても、俺はこの気持ちを押しつけるつもりはないし、そのせいでアンタを避けるような事は絶対にしないから」






だから逃げる事だけは許さないと、そう告げるのは、俺の精一杯の虚勢。





「…………」

戸惑いを隠し切れずに硬直したままの身体を宥めるように、俺は抱いたままのその背中をそっと撫でるように軽く叩けば。
何度も何度もそれを繰り返すと、抱いた身体が何かを伝えようとみじろいだ。

「……ア、ノ……」

腕を下げた形で俺の腕の中に収まっていた身体は、沈黙を破るか細い声とともにその腕をゆっくりと上げて。


「私、は」
「……っ……」


その動きに俺は思わず息を飲み、次に聞かされるであろう拒絶の言葉に身構えた。













その、瞬間。













「………」
「……金……?」

俺を突き放すものだとばかり思っていたその腕が、驚愕に目を見開く俺から視線を逸らし俯きながら、それでもしっかりと俺の背中に回されて。





「…私に貴方を拒む、その理由はアリマセンから…。
むしろ私が拒まれる、ずっとそう、思って…」





戸惑いがちながらもしっかりとシャツを掴み、震える声で望みながら諦めていた言葉を、綴る。







「…本当、に?」
「ハイ」







赤くなりながらも、そう、しっかりと返事を返してくる金を俺は思わず力一杯抱き締めて。
柄にもなく泣きそうになるほど嬉しくて、ただただ、金を抱き締めることしか出来ない。







…叶う事はないだろうと思いつつ、本当はこの瞬間をの訪れを、俺はずっと待っていたんだ。










【この瞬間を待っていた・完】



玄金でこそこそお題にチャレンジ久々更新です。
書いている方がなんかこっ恥ずかしくなるような出来に。
お題は素敵なのに生かしきれていない文才のなさに撃沈。
なお、お題は TV 様よりお借りしてまいりました〜。
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