君を想う5つのお題 両想い編「覗いた横顔」





「……珍しいデスね」






思わずそう呟いてしまった、金の目の前には。







「ホント珍しいデス」







いつものようにソファにではなく、自分専用のデスクに突っ伏す形で夢の世界に旅立っている屋主の姿があった。
珈琲をいれてくれと声をかけられ、金が狭い給湯室兼台所で準備し戻ってきたその僅かな時間で、日向はそれを待つことなくあっさりと睡魔に白旗を振っていたらしい。



「エト…何か掛けるモノ…」



しかしそんな日向に金は小さく微笑むと、珈琲は応接テーブルへと置いてから、代わりにソファに置いていたブランケットを手にして近付いて。




「お疲れ様デス」




そう小声で囁いて起こさないようにブランケットをかけると、後は無防備な日向のこめかみへとそっと唇を寄せ、触れるかふれないかの優しい口付けを落とす。





あとは何事もなかったかのように、自分の定位置である机へと移動して。
おもむろに眼鏡をかけてから、極力音を立てないように注意を払い、日向に任されていた書類を仕上げるべくペンを走らせ始めた。







金がペンを走らせる音と、時折微かに日向の寝息が聞こえるだけで。
日向の事務所の中には、外の喧騒とはまるで正反対の静寂が訪れていた。








何とはなしの、これも穏やかな時間の過ごし方。








【覗いた横顔・完】

えーと、全部日向視点で進めるはずだったのですが、
更新が久々すぎて書きかけていた内容が(ごにょごにょ)。
しかもこれ、横顔っつーより寝顔だよなあ(汗)
でもまあ、たまにはこういうのありかなー…なんてね?
戻る?