君を想う5つのお題 一方通行編 「何一つ疑わない君」


北斗七星、あるいは白の真珠という二つ名をもつこの俺が、あの存在のためだけにここにいると判っているはずで。
だからこそ、今こうして俺に背中を預けているのは、俺にとってその身が一番大事ではない事をも知っているからで。




即ちそれは、《もしも》の時自分を見捨てる事が出来るという、凡そ仲間とは言い難い関係だから
こそ成り立っているモノ。






「どうしました?」

なのに、彼は。

「わずかにデスが、動きに迷いを感じます。コータローさんに、何かありましたカ」

背中合わせのこの状態でなお、今俺が案じているのはその身ではないと疑いもしないくせに。

「…大丈夫。コウに危険はない」
「そうですカ。ならば集中して下サイ」

容赦なく一つ二つと敵を屠りながらも淡々とかけられる声の中に、言葉にならない彼の想いが幾重にも込められていて。

「…貴方がパートナーで良かったと思うよ。
こんなに安心して背中を預けられる存在は、貴方以外居ない」
「私もデス。コータローさんの為に共に戦うは、あなたで良かった」



そう同じ言葉を返し肩越しに微笑むくせに。
告げた言葉の真の意味を捕らえず、かの存在の為に俺がどこまでも非情であると信じて疑わない。



「何よりもまず、コータローさんを護る。大切なのは、その事だけ」



何があっても自分の為に俺が命を投げ出す事はないと、そう思っている彼は。


「…私の為に誰かが傷付く、それはとても無意味なことデスから」


風にのって聞こえてきたその呟きは、俺ではないすでに遠く離れた存在に向けられている事に、言った本人は気付けずにいる。


「…何処まで邪魔をすれば気が済む…」
「何か言いましたカ?」
「何でもない。さぁ大正殿、いい加減ケリをつけよう。左は全て貴方に任せた!」
「承知!」



俺の全てを信じて疑わない君に、告げたくても告げれない真実がある。




「…もし、貴方に命の危険が迫れば、どんな形でも俺は迷わず貴方を助けるよ」



左へ大きく飛躍して離れてゆく彼に、俺はそっと呟いて。



「…貴方の為に俺が消し去った記憶を、どうか思い出さないで欲しい。
その記憶は、貴方を護ったが故に散った命とのものだから」





この手で散らせた命に未だに嫉妬する。


ロジャ金でまったりお題にチャレンジ久々更新。
忍者は根本的には平気で手を血で染めるタイプでも、
一度大事だ思った相手にはとことん甘いといい…なーんて。(苦笑)
金さんが欲しくて邪魔者を殺してみたけれど、その金さんに
自分が殺したことを知られるのが嫌で記憶を弄っている、とかさ。
←説明がないと意味が通じないSSを書くな自分。
なお、お題は TV 様より
お借りしてまいりました〜。
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