自分が今《幸せ》だと。
まさかこんな感情を持つことになるなんて、俺は全く思いもしなかった。
…唯一無二の存在を文字通り全身全霊をかけて守り抜く、そんな戦いの中で白の真珠であるこの俺が…あの存在以外で《幸せ》を感じているなんて。
「行きましょう、ロイさん。コータローさんを守る為、今すぐに」
目の前にいる彼がその名を口にして、そして躇いなく俺を促して。
共に行こうと手を差しのべる、その時の穏やかな笑みが。
目の前に群れる幾数多の屠るモノを相手に、隣で悠然と武器を構え佇むこの存在が、ただ歓喜と言う名の幸福に俺の心を震わせる。
「ああ、行こう。我等が望むただ一つの輝きを守るため、共に敵を屠りに行こう」
「はい。…たった一つの我等の希望、その輝きを守るために」
差しのべられた手を掴み取り逆に引き寄せて、悪戯をしかけるように笑いながら指先に口付ければ、彼は動じた様子もなくただ微笑んだ。
「我は世界忍者、ロジャー・サスケ。いざ参る!
我より遅れる事はかくあるまじき、覚悟なされよ!」
「ハイ!」
叫びと同時に手を離して、わずかな温もりが消え去る後に残るのは。
…大切なものを護るために背中を預ける存在があるという、戦いの中で手にいれたその確かな喜び。
それだけで戦いが喜びに変わって。
…そのまま、幸せの瞬間となる。
【幸せの瞬間・完】