1 プロローグ
『飼い犬に手を噛まれる』
こんな事は私の中ではありえない事であり、考えもしなかった事であり、ただのことわざの一つであった。
しかしこれが現実の事となった。
子供の頃から犬に限らず自他ともに認める動物好きであったが、犬を飼うのは記憶の中で二回目である。
初めて飼ったのはまだ学生の頃、実家の4人家族の中で飼っていた。
家庭の方針『昼間留守がちの我が家、万が一家が火事など災害に遭った時、犬は外にいれば誰かに助けてもらえる』と、昼間は外で、夜間は玄関内で飼っていた。 とてもよく吠えるが、おとなしいシェルティだった。
当時私には犬のしつけに関する知識が現在と比べるとほとんどなかったが、実家のシェルティは悪戯する事も、当然人を噛むことなどもなく、コマンドなどある程度言うことは聞くし、ごくごく普通の犬であった。
それが当たり前、犬の姿だと思っていた。
しかし現在の愛犬、ポッキーの問題行動に日々悩まされるようになってからは、実家のシェルティが「とても穏やかな家庭犬」であったことを知ったのだった。
現在犬のしつけについて『権勢症候群』という言葉がよく知られている。
「権勢症候群とは」「権勢症候群にならないために」といった文章がよくみられるが、私は「権勢症候群」は犬を甘やかせているからなるんだ、私には関係ないことだろう、と思っていた。
「ウチの犬にベッドの上で唸られて・・」と言うMダックスを飼う友人には「甘やかすからだよ〜、下に見られちゃダメだよ〜」と言っていた。
しかしそう言う私も、書籍や人の話でボーダー・コリーの知能の高さや難しさを知るたびに、ラブを飼っている友人に「ボーダー・コリー?よくそんな大変な犬飼ったね、気をつけろ〜」と冗談で脅されるたびに、「権勢症候群」についての情報を得るたびに、「権勢症候群」を非常に気にするようになってしまった。
その結果「権勢症候群」にならないように、と厳しいと言うよりも、一方的な人間ペースの接し方をするようになってしまった。
そしてとうとうある日を境に、生活が一転する苦悩の日々が始まってしまったのだった・・・
ポッキーの問題行動に悩まされるようになって知ったことや理解したことがたくさんあります。
そのひとつが、自分もかつてそうだったように、「噛む犬」についてまわりの人になかなか理解してもらえない事。
またそれを相談する場所もよくわからないし、適切なアドバイスを受けられる場所が少ない事。
時に犬のプロと呼ばれる人たちの一部さえも、犬に対して誤解や間違いをしているという事。
そしてその悩みをなかなか理解してもらえないゆえに、『犬の問題行動は全て飼い主の責任』と言われているゆえに、恥ずかしさもあり、なかなか人に相談出来ない事。
しかしある時、同じような愛犬の噛み癖に悩んでいた方がその内容をHPに公開しているのを見た時、また、犬のことで相談出来るHPの掲示板にウチと同じような内容の書き込みを見た時、
『悩んでいるのはウチだけではなかったんだ』
と少し救われた気がしたのです。
そこで私も、同じようなことで悩んでいる方がきっとまだいると思い、そういう方々に我が家の愛犬の問題行動やその原因を知ってもらい、私がそうだったように
『悩んでいるのはウチだけではない』
と知ってもらい、少しでも元気を出してもらえれば、と思ってパソコン超初心者の私、pockymamaですが、papaに助けを借りてこのHPを作ることになりました。
愛犬の問題行動に悩んでいる方はもちろん、そんなことはないよという方にも是非、こんな犬もいるんだ、ということを知ってもらいたいと思います。
またこれを読んで掲示板も使ってもらい、情報交換はもちろん、お互いのグチ、エールも言い合って、少しでも前向きに、元気を出してもらえたらいいな、と思っています。
それでは私たちの、まさに「血と涙の記録」を紹介させていただきます。
【 お願い! 】
本文中にはポッキーの、具体的な噛み癖改善の過程や原因の一例などが書いてあります。
しかしこれはあくまでも「ポッキーの場合」です。同じ噛み癖と言っても犬それぞれでは犬種の違い、今までのしつけ方の違い、飼い主や家庭環境の違い、噛む理由や状況の違い、噛み方の違い・・などさまざまな違いがあるため原因も違い、よって対処法も異なります。
犬の問題行動は原因などがとても複雑で、繊細で、個別性の高い問題です。
なので実際に噛み癖に悩んでいる方は、本文中のやり方などをご自分の判断のみで愛犬に行うことは絶対にやめてください。
そうすると、ご迷惑をおかけしてしまう方々もいらっしゃいますし、何より私たち自身も、ポッキーを一般論や聞きかじり、他の人の方法などを素人判断で行って大失敗しましたので、同じようなことにはなってほしくないし、絶対にやめてほしいのです。
でも、正しい専門家による犬の行動カウンセリングを受けることはとてもおすすめです。
そういう意味で読んでいただけることをお願いしたいと思います。
この「プロローグ」をはじめ、記録前半に「権勢症候群」という言葉が出てきますが、行動カウンセリングを受けて知ったことは、ポッキーは権勢症候群ではないということです。
それ以前に現在では、犬と人間の間に権勢症候群は存在しないというのが欧米をはじめ日本でも日々研究される真の専門家の間の常識だそうですし、私たちもそう考えております。日本でも権勢症候群という古い考え方が広く再検討されることを望んでおります。
メニューへ戻る