2015年~2016年 体調の変化 1

 「継続」から10年。
この10年の間にガブリ事件が無くなったと言うことはなかった。

 私たちの何気ない動きに反応して噛み付きはちょくちょくあり、ひどい時には私が足の指の間を噛まれてpapa曰く病院レベルの深い傷を負ったり(私には傷口がよく見えず、驚く程出血が少なかったので病院には行かなかったが)、papaも同じく足の指を関節を挟み込む形で噛まれ恐らく関節を骨折した(papaも病院に行かなかったので断定は出来ないが状態からまずヒビが入っているかと・・)こともあった。またポッキーの首のカラーからリードだけが外れてしまい、方法を考え抜いてpapaが恐怖で指を震わせながら3日がかりで何とかカラーを外したこともあった。
 でも「私たちが配慮して噛まれないようにする、嫌なことはしない」「危険の可能性がある時にはゲートを閉めて住み分け」は習慣としてずっと続けていた。
 そして年々確実に噛まれる頻度は減っていき、papaはちょくちょくあったが私mamaは噛まれない生活が年単位で続けられていて、いつしかその日数を数えることも忘れていた。ポッキーの方も家の中で偶然足がぶつかっても以前と違って怒らなくなり、以前にも増して立っている私たちの足に巻き付いてきたり、座っている私たちの体にすぐに自分の背中やお尻を押し付けて座ったり、何かと甘えてくるようになっていた。

 体調の方は、5歳頃の鎮静剤トリムの時にレントゲン検査を受けたら若干の心肥大はあるが心配する程度ではないとのことで、6歳頃に牛皮100%ガムは吐くようになり食べるのは止め、8歳頃から眉毛に少しずつ白い毛が混じるようになり、血液や粘膜が付着した便が出たり下痢をすることが時々あり、一度にたくさん食べると嘔吐することがあり11歳の頃にはドライフードはフードミルサーで軽く砕き、一日2食だったのを4食位に分けて食べるようになっていたが、便の不調は内服で治まってくれ、体重も中年になり少し増えたが(4、5歳の頃はいつも14.7㎏)16㎏前後と良好な状態を維持していた。また徐々に眠りが深くなり、以前から嫌いだった雷を息が荒くなる程震えて怖がるようになっていたが、ほぼ毎日5km位は自転車散歩に行き、立ち上がってテーブルに両手を付いておやつを催促して食欲も旺盛で、いつも活発に動き元気だった。ポッキーは年齢よりまだまだ若いと思っていた。

2015年 

【13歳6か月】
 9月半ば。

 土曜日の朝、私が起きてポッキーとpapaがまだ眠っている1階に降りていくと、テーブルの上に「Pくん歩行困難に」のメモが。未明にpapaが帰宅すると、室内でウンチをしてしまった後に何とか歩いて外に出ていつものように深夜のオシッコが出来たが、排泄後にいつもご褒美でもらうおやつや薄め牛乳を全く口にせずpapaの足に巻き付いてしまい、ポッキー自身が不調の理由が解らず困惑している様子とのこと。
 起きたpapaに更に話を聞くと、なかなか立ち上がれない状態で、ポッキーはそんな自分に怯えてすぐにクレートに入ってしまったとのことだった。

 いつかはそんな日が来ることは頭では解ってはいたけれど、とうとうその日が来たのか。でも、昨日まで全く変わらない様子でいつもどおり、ご飯食べて元気に私に甘えていたのに。何故突然?何か変わったことをしただろうか?早い、早過ぎる、としか思えなかった。

 その後朝ご飯を用意するとクレートから出て来て何とか食べてくれたため、ひとまず様子を見ることに。ポッキーはその後横になっているpapaの隣に行きいつものように寄り添って伏せたため、私は気持ちを落ち着かせようと普段通りに掃除をしたりしていた。
 11時頃になりふとポッキーを見ると、ポッキーの目が左右に動いている!しかもよく見ていると上瞼まで眼球の動きに合わせて上下に痙攣している!こんな怖い異常な動きは初めて見て、目の異常な動き=脳の疾患、と思った私はすぐに病院に電話し症状を説明したところ、すぐに来てくださいとのことで、震える手で支度を始めた。

 そして問題は、ポッキーをどうやって連れていくか。ポッキーは伏せた姿勢なのでこのままではカラー(以前にカラーからリードだけが外れてしまい大変な思いをしているので、カラーとリードは外れないように一体化している。以下、カラーとはカラー+リードのことを言う)が付けられず、いつもと様子が違う時にカラー付けをすると唸って危険なのでどうしようかと思い、私は大判バスタオルで目眩ましをしようかとpapaに提案したが、papaが極力いつもどおりのふりをしてカラーを持ち「さあ、散歩に行こうか~」と言うとポッキーが一瞬首を上げたので、papaがその隙に頑張ってカラーを付けてくれた。カラーさえ付いていればいざという時にある程度のコントロールが出来て噛まれる危険度は減るので、ひどくふらつくポッキーを上下半分に離したクレートまで誘導していき、ポッキーが中に入ったところでクレートの上半分をすぐにはめロックをし、病院に連れていくことが可能になった。

 病院に行くと先生は、電話で聞いた症状は高齢犬によく見られる症状で、先生方はよく「あたった」という言い方をしているとのこと。でも脳血栓や脳炎の疑いもあるとのことで、カラーが付いていれば大丈夫と言う先生がポッキーに素早くエリザベスカラーを装着してくれた。

 エリザベスカラーを装着していれば噛まれる心配がないので先生とpapaが診察台の上にポッキーを乗せ、ポッキーの足から採血、ステロイド注射を行った。その時のポッキーはキャイイイインと叫び声を上げていて、痛いという訳ではなく恐怖で鳴いたのだと思うが、私は胸が潰れる思いだった。
 その後は点滴となったが、普通の犬であれば動かない状態で静脈に時間を掛けて行えるのである程度の成分が入った点滴が出来るけれど、噛み噛みポッキーには出来ないため、短時間で行え体に負担がない皮下点滴(点滴内容は電解質輸液、ビタミン剤、強肝剤)をしてもらうことになった。
 皮下点滴は数十分だがポッキーが暴れたら危険なので床に下ろし、ポッキーの体には持参したバスタオルを巻いてpapaが動かないように抑え込んだ状態で実施。でもポッキーは針を刺した時にも動くことは無く、すぐに大人しくなってくれた。私は少しずつ気持ちが落ち着いてきた。そこで、ポッキーは7歳になった時にはシニア入りのためにもう鎮静剤を使用してのトリミングが出来なくなっていたので、これは良い機会と思い、病院でハサミを借りてポッキーの足の毛をカットすることにして、カットしている間に私の気持ちはますます落ち着くことが出来た。

 点滴後に帰宅。ステロイドを投与したので副作用で飲水量やシッコ回数が増えるが、暫くはステロイド等の内服を続けるよう指示された。しかし帰宅し数時間後に嘔吐。そして食べないどころかお水も全く飲もうとしない。食べないから内服も出来ない。私は脳血栓や脳炎が心配で、ポッキーの症状をインターネットで検索。調べていると、眼振状態(横の動き)、嘔吐、若干斜頸がありふらつくこと等、「前庭疾患」という症状に非常に似ていた。この疾患なら命の心配は無く、場合によっては後遺症があるかもしれないけれど数週間~数ヶ月で治まるとのこと。少し希望が見えてきた。ポッキーは眼振を続けながらもパソコンに向かって座る私の足元にわざわざ来て伏せている。いじらしい、かわいいこの子を絶対に守る、と思った。

 2日目。
 ポッキーは昨日の夕方から明け方まで6回以上は嘔吐。立つことは出来るが依然として眼振が続きふらつきがあり、食欲も無く水も飲まない、だから内服も出来ない。症状を電話で伝えて通院。内服出来ないため先生にお願いして昨日同様の皮下点滴に吐き気止めをプラスしてもらった。自宅出発から受診まで、私たちが落ち着いたので昨日よりもスムーズに行える。今日の点滴中にはポッキーはスウスウと寝ていることも。しかし余裕が出てきたのか点滴が終わる頃に少しだけ嫌がって動いていた。
 物を食べられないと内服が出来ないため、先生から、今は匂いが強いフライドチキンでも人間の食べ物でも何でもいいから食べさせてみるよう助言を受ける。
 ポッキーの体重は点滴後で16.5kg。食べないので心配していたが急激に痩せるようなことは無かった。また血液検査では、白血球が多いが、それ以外は異常無しとのこと。

 3日目。
 眼振の勢いが少し治まってくる。私たち人間の動きを見ることが出来るようになる。方向転換する時のふらつきが減る。外に出て家の周りを歩くことも出来る。
 しかし依然として、食べない、飲まない。犬が変わったように、どんな好物を目の前にしても無反応。通院し点滴を継続。食欲増進も目的として皮下点滴にステロイドをプラスしてもらう。
 この日はなんと私のズボンを裾噛みすることもあり、通常なら「ダメ」と思うことが嬉しく思える。食欲以外は回復が見られている。

 4日目。
 歩行は安定してきて、昨日よりも少し先へ外を歩くことが出来ているが、ブルブルをしようとすると倒れそうになる。
 ステロイド効果かやっと水を少しだけ飲んでくれる。食べ物もやっと口にしてくれるようになったがすぐに止めてしまう。通院し昨日同様にステロイドをプラスした皮下点滴を受ける。点滴中は大人しいポッキー。
 1、2時間おきにシッコをするようになる。食べ物は大好きだったバナナは無視だが、午後になるとおやつを少量、フード2、3粒を食べてくれるようになる。

 5日目。
 明け方から水をガブ飲み。おやつやフードをますます食べてくれるようになる。
 食べられるようになったので、点滴通院は中止(その後の経過も良好で終了となる)。
 物が食べられるようになったので、1日目にもらっていた飲み薬(抗生物質、脳梗塞の可能性があったので脳の血流を良くするサプリメント、ビタミン剤)を砕いてヨーグルトに混ぜたところ、それも食べてくれる。
 夜にはふらつきながらも頑張って軟便を出してくれる。

 6日目。
 水のがぶ飲みが落ち着いてきたが、シッコはまだ頻回。食欲も旺盛になってきて今までのようにおやつを催促をするようにもなる。薬は砕かなくても特別な犬用おやつやスーパーで売っている人間用のチーズケーキ、シュークリームの破片の中に入れて丸めることで、そのまま食べられるようになる。ウンチも固くなってくる。
 たまにふらつきはあるが、ゆっくりと1㎞位の散歩が出来るようになる。

 その後は徐々に安定。内服のうち抗生物質は終了。シッコ間隔も戻っていく。でもサプリメントとビタミン剤は続けることになり、ああ、ポッキーも毎日の内服が必要になったシニアなんだと実感する。ふらつきはあるが、少しずつ、少しずつ、回復。

 25日目。
 夕方にウトウトしている時に顔を見ると、再び眼振あり。上瞼の上下の痙攣もあり。インターネットでいろいろ調べた時にも再発することがあるとあったけれど、もう始まったことに不安を感じる。

 26日目。
 病院に連絡し、食欲はあるためステロイドの内服を始め、数日前に終了していた抗生物質の内服も再開。
 今回は起きている時は眼振はほとんど無いが、顔を左下にして横になっていると瞼を閉じて寝ていられるのだが右下にすると眼振があり瞼も痙攣している。そして起きてからも暫くは眼振が続いている。
 ふと、前回も今回も大型低気圧が接近しているタイミングなことに気付く。人間も気圧の変化で体調が悪くなるが、ポッキーもそうなのかなと考える。インターネットで調べた前庭疾患ならいいけれど脳の疾患ではないよね、と不安になる。

 その後4日位で、瞼の痙攣は時々あるが眼振が治まり、ステロイド減量を開始。その後は眼振が出現することは無いものの瞼の痙攣は時々あったが、ステロイドと抗生物質は終了にした。体重は16.4kgと維持。


 今回の体調不良を機に、年々速度は遅くなり早歩きくらいにはなっていたが、長年続けていた自転車での散歩は終わりになり、以降の散歩は匂いを楽しんだりのんびりした徒歩散歩となった。
 そして季節は我が家が大好きな秋が深くなり、ポッキーの変調があったことでポッキーとの生活には時間の限りがあることを痛感し、ポッキーの体調に合わせて今まで以上にあちこちに車で遊びに行くようになった。今までポッキーは難なくジャンプでRV車に乗降していたけれど、眼振を起こしてからは後ろ足が少し弱ったため危なくなり、すのこの台を地面に置きステップにすることで乗降するようになった。初めはpapaがスロープを作ったけれどポッキーは怖いようで慣れずスロープを飛び越えていこうとして危険で、ステップに変えて台を置き台の上にはおやつを置いて動きを誘導することで、上手に乗降できるようになった。papaの実家に再びフェリーで連泊で帰省したり、道内あちこちに行きポッキーと同じ景色を見て楽しく遊び歩いた。
 そしてRV車は年末には、車検が普通には通らないような劣化があったことから、それを機にポッキーが乗降しやすい車高が低く後部がスライドドアの車に替えた。


【13歳8か月】
 11月半ば。

 ポッキーが左耳を気にして頭を振るようになった。ポッキーに不審がられないように注意してこっそり左耳の匂いを嗅ぐと、明らかにポッキー本来の匂いでは無く異臭がする。病院に相談したところ外耳炎の診断を受け、普通の犬なら耳に直接軟膏を塗るがポッキーは出来ないため、抗生物質等の内服で治療することになった。
 外耳炎はなかなか治らずやっかいだとインターネットで調べていたけれど本当にやっかいで、状態は一進一退を繰り返していた。左耳の毛には砕いたクッキーと溶かしたキャラメルを丸めたような茶色い耳垢の塊が付着し、触れないポッキーなので取ることも出来ず、イヤリングみたいに常に塊をぶら下げて歩いていた。
 そして年が明けても外耳炎が悪化しているため病院で耳垢の培養をしてもらったところ、やっかいな緑膿菌が出ているとのこと。抗生物質は数種類だけ効果があるかもしれないことが判り、内容を替えて治療を続けることにした。
 ポッキーもシニア、外耳炎は命にはすぐに直結しないけれど、このままずっと耳垢を出し続けるまま生きていくのか、痛そうな様子はないけれど可哀想で自分が代わってあげたい、と思った。

2016年

【14歳、誕生日はケーキでお祝い】
 3月半ば。

 去年体調を崩してからますます眠りが深くなっているポッキーで、この頃には私は寝ている間にコッソリ体の絡まった毛がハサミで切れるようになっていた。気が大きくなった私はポッキーが熟睡している時には耳の裏や下の毛の塊(第3の耳)も少しずつ切ることが出来ていて、毛に絡まった耳垢も少しずつだが一緒に切るようになっていた。
 ポッキーが熟睡していればこんなことが出来るので、水鉄砲みたいにして離れた所から直接耳に薬を入れられないものかと思っていて、病院に薬を取りに行った時に笑い話のつもりで先生にそんな話をしたところ、近年に発売されて効果に持続性があり、1回使えば大丈夫な外耳炎の軟膏薬があり、それは耳の穴にピュッと入れればいいのでそれをやってみてどうかと言われた。早速処方してもらったが、想像した水鉄砲ではなく小さなチューブだったけれど、チャレンジしてみることにした。
 夜、ハウス(クレート)の中で頭だけを外に出して左上で横になって爆睡しているポッキー。チューブが小さいのでポッキーの耳に私の手を相当近付けることになる。大丈夫かな・・・。私は意を決して耳の穴があるだろう方に向かって左耳の中にチューブから軟膏を押し出して垂らす。ポッキーが気付いて怒って飛び掛かられないように、すぐに手を引っ込め、逃げる体勢になる。ポッキー、起きない!数秒すると軟膏の冷たさで起きたのか、ポッキーが目を開けて頭を上げる。その後いつも起きた時にする頭だけの軽いブルブル。おお、軟膏が遠心力で自動的に拡散し塗った状態になっている!大成功。
 念のために1週間後にもう1本入れてみたが、1本目の時から既に効果抜群で、軟膏薬を入れてからはポッキーの耳から浸出液や垢が出ることが無くなった。やはり患部に直接治療出来るのは効果がある。意を決してやって本当に良かった。去年から4ヶ月も掛かったけれど、治って本当に良かった。


 メニューへ戻る