2018年 介護編 1

1月
【15歳10ヶ月】

 年が明けて吹雪く日が続くようになった。ポッキーの体重増作戦は続けていて、背中のゴツゴツ感が少し減って太ってきたかな、なんて思っていた。
 そんな中、夕食後のルーティンの最後、歯磨きガムが上手く食べられない様子に気付く。食べ残すことはないが、上手く噛めずに時間が掛かっている。歯が弱くなったのかな、と考えていた。

 数日間その状態が続き、午後に排泄もせずよく眠っていた16日の夜、晩ご飯を食べている時にいつものようなガッつきが無いことに気付く。全部食べたが、大好きなご飯なのになんだか義務のように食べている。気になってしばらくポッキーの傍から離れないようにしていたが、その数十分後の18時過ぎ、ベッドの近くで歩いていた時に少し方向転換したとたん、私の目の前で板を倒したようにバッタリと倒れてしまった。去年からよく転ぶようになってはいたが、足が崩れるようにして転ぶのではなく、朝礼とかで人が倒れるみたいに立った姿勢からそのまま横にバッタリと倒れてしまった。
 倒れ方が普通ではなく一体どうしたのかと焦り、すぐに立ち上がる様子が無いためその状態のままポッキーにフリースのひざ掛けを掛けてみたが、意識はあるが体は力が抜けてぐんにゃり。背中を触っても無反応な様子から今度は躊躇なく抱きかかえてすぐにベッドに移動。次第に少し震え出し、またいつもの3ヶ月周期の体調不良が始まったと思った。いつものように体を温め様子を見ていると、21時頃には起きて外に出てシッコができた。

 その後も0時に起きてウンチをしたが、その後から部屋を徘徊。誰がどう見ても「徘徊」。今までの徘徊は部屋を大回りでゆっくり歩き回っていたが、これは私の声も聞こえていない様子で何かに憑かれたように結構な速さで半径1m位を時計回りでその場回転。今までネットの動画で見ていた徘徊そのものであった。このような徘徊は初めてで、それはpapaが帰宅するまで数時間続いた。不思議なのは、普段は歩いているとよく尻餅をついて転ぶのに、この時は転ぶことが無かった。

 その日、やっと明け方に少し眠って、その後起きて朝ご飯を食べたが、歩き疲れたのかポッキーはフラフラ。ご飯や排泄はするけれど、目の焦点が合っていない感じ。名前を呼んでも解っていない様子で、ああ、ポッキーがまた一段階変わった、と思った。

 その日の夜も前日(16日)同様に私は未明にpapaが帰宅するまではポッキーのいる1階でpapaの布団で寝ていたが、日にちが変わった午前0時、私が眠っている間にポッキーは隣の部屋で歩き回りウンチパラダイス。私が起きてやっと掃除を終えてウトウトしている時にpapaが帰宅。私は2階に行って眠った。
 翌朝起きて1階に降りていくと、1月の極寒なのにストーブが消え、寒い部屋の真ん中でポッキーが震えながらバッタリ横になっていた。同じ部屋で布団に入っているpapaはポッキーに背中を向けて眠っていた。
 急いでポッキーをベッドに連れて行きフリースのひざ掛けを掛けて体を温め、ストーブを点け、起きたpapaに何があったのかと聞くと、ポッキーが今まで行ったことがない洗濯機と壁の隙間に何度も行ってハマっていて、最後にはポータブル石油ストーブの真ん前で立ちつくして動かないため、危ないと思いストーブを消し、そのまま寝ていたとのこと。寒いのに、それなら何故テーブルの上にストーブを置いて点けていなかったのかと聞くと、今思うとそうすればよかったと話していた。
 ポッキーは9時頃に目を覚ましたので鼻先にふやかしたフードを近付けると食べてくれ、その後私が外勤に出て昼に帰宅するとポッキーは起きて私を出迎えてくれた。しかし夜になると20時にシッコをした後から全身震え出し動けなくなった。

 私は、この日の朝に布団を被って寝ているpapaの横でポッキーが寒い部屋の真ん中で震えながら倒れていた光景が衝撃で、papaは歳なのか昔と違って眠るとなかなか起きなくなっていて、仕事から帰り疲れているのだから尚の事で、申し訳ないけれどpapaにポッキーを任せられないと思い、私の方が眠りが浅くなっていることから、この日から夜はずっと私がポッキーの隣で眠ることにした。私は学生の頃から徹夜が絶対に出来ない質だったが、何とかなる、何とかせねばと思った。そしてこの添い寝は、睡眠不足で辛い毎日は、この時から1年間以上続くことになった。

 翌日に震えは治まり、食欲はある様子でご飯もよく食べてくれたが、食べ方が下手になりガッついて口を開けるわりにフードが口に入っていないため、この日から毎回、物を食べる時には私(またはpapa)がお皿の中に広がったフード等をスプーンで皿の中央に寄せて1か所に集めることで食べるようになった。ポッキーはすぐに状況を理解し、食べている途中に私がお皿の中にスプーンを入れても嫌がらずに、ご飯を集めるまでちゃんと待つようになった。
 これも昔のポッキーを考えるとスゴイことで、若い頃にはご飯を食べている時に近くを通っただけでも噛み付かれていて、papaなんて離れた所から「ご飯美味しかった?」と声を掛けただけなのに激怒して飛んできたポッキーに噛み付かれていたのに、あのポッキーが・・・と思うと感慨深かった。昔は噛み噛み危険度マックスだったご飯で、私の介助を理解して受け入れてくれる。「嫌なことはしない、噛ませない生活」の継続により、私はポッキーに「mamaは嫌なことはしない」と大きな信頼を得られたと思い、約14年間の頑張りが報われたと思って本当に嬉しかった。

 さらに!この日私は約14年ぶりに、ポッキーを「抱える」のではなく完全に「抱っこ」した。ポッキーは全く怒らない。怒る気配もない。ポッキーの温かさや匂い、存在感を全身で感じられる幸せ。ポッキーって結構大きい!
 抱っこが出来れば無理をして歩かせる必要は無く、玄関前は雪が積もって傾斜が出来ておりポッキーが歩くには危ないことから、この頃から徐々にオシッコで外に出る時には抱っこで庭に出るようになった。

 その日の日中は、ご飯→排泄→徘徊の繰り返し。いいのか悪いのか徘徊が元気な証拠、目安になっている。認知症状が強いため、とにかくポッキーの名前を呼び、何かと声を掛けるようにした。

 さらに翌日、いつもの薬をもらいに病院に行った時にここ数日の状況を先生に話したところ、先生のお姉さんの愛犬も昨年末に同じような症状になり脳梗塞を疑って点滴と漢方薬を続けたら1ヶ月で治ったとのことで、ポッキーも電解質輸液とビタミン剤の皮下点滴を受け、数種類の漢方薬を飲むことになった。
 点滴は休日を挟んで1日おきに通ったところ徐々に元気になってきて、外でオシッコ中に体を支えてあげることは時々必要で歩いていて座り込みはあるけれど、体の動きにキレが出てきて震えも治まったことから点滴は3回で終了、漢方薬も2週間で終了にした。

 今回の体調不良から、遊んでいる最中に転んでしまうため昨年末には2、3分で終わるようにはしていたが、長年続いた夕食後のルーティン(おやつ入りボールのひとり転がし遊び→歯磨きガム)は体に負担があるため終わりになった。そして朝と夜の、仕事に出掛ける私とpapaのポッキーの状況の引継ぎは、内容が増えたため紙ではなく小さなホワイトボードを使用し記録することになった。

 この頃からポッキーは伏せたり横になると自力では立ち上がることがほぼ出来なくなり、その都度私たちが立たせてあげることが必要になった。それでもポッキーは自力で立ち上がろうとして激しくもがくためポッキーから目が離せられなくなり、24時間私とpapaのどちらかが必ず在宅する生活になった。ポッキーはこの頃は夜間には3時間おきに目を覚まし、オシッコがしたかったり同じ姿勢が辛く起き上がりたがるため、添い寝中に目を覚ました私が毎回立ち上がらせたり、オシッコの時には抱っこで庭に連れて行き、徘徊する時には倒れたり危険なことにならないようにお付き合いをするようになった。私は不思議と、ポッキーが起きると目が覚めた。本格的な介護生活が始まった。
 今月の体重、11.6㎏。とうとう11kg台になってしまった。

2月
【15歳11か月】

 ポッキーは頑張って歩いているけれどふらついて部屋の敷居にある住み分けゲートの木枠に体をぶつけたり引きずった後ろ足を引っかけるようになっため、月初めにゲートを完全に取り外すことになった。14年前「噛ませない生活」のために設置したゲート。必要が無くなったことに感慨深い。そしてゲートを外すと、部屋がこんなに広かったんだ~と新鮮な気持ちだった。
 そして敷居にはゲートを外しても小さな段差はありそこでポッキーがふらつきやすいことから、左右にある壁や家具に緩衝材を張り付けた。

 日差しに春を感じ始めるが気温が低い日が続き、そんな日は散歩は無理せず見合わせている。この頃からポッキー、その場回転の徘徊をしていて力尽きて座りそのまま倒れて寝てしまったり、特に午後になると疲れるのか部屋を数分間歩いただけで倒れてしまい歩けなくなってしまうことが続いた。散歩に出ても2、30mで抱っこで帰宅したり、抱っこで外に出て同様の距離を歩いて帰宅したり。気候のせいで不調なのかと思う。
 
 先月から始まった私の添い寝、ポッキーが連続して眠っているのは最長でも3時間位で、ポッキーが再び寝ても私はすぐに眠れる訳ではなく、睡眠が細切れのため目の疲れがなかなか取れなかった。でも常に気持ちが張っているのかそれなりに生活が出来ていた。そして半ばには平昌オリンピックが始まったことが深夜の目覚めの助けになっていた。
 夜に起きてウロウロして落ち着かないポッキーを抱っこしてオリンピックを見ているとポッキーは落ち着いてきて全身脱力で眠ってくれ、もっと抱っこしていたいけれど、脱力ポッキーが重たくて腕が辛くなってくるので残念だがベッドに移すこともあった。元々ポッキーは抱っこが嫌いだったし、14年間出来ず、一生出来ないと思っていた抱っこをこんなに出来て至福の時間だった。

 徐々に太陽に春を感じるようになり、天気の良い日は日光浴をするようにしていたが(体内時計を整えて出来るだけ夜に寝てほしいため)、ポッキー、日向ぼっこ中に初めて近所の方に背中を撫でられる。とっても軟らかい毛と褒めてもらった。
 去年までは皮膚は皮脂でベタベタで全身粉を噴いたようにフケだらけのことが続いたけれど、気付いたら皮膚のベタベタやフケ、抜け毛は落ち着き、劇的に改善していた。私たちとしては去年1月から病院で勧められて飲み始めた、関節、心血管、腎臓、皮膚被毛に良いというモエギイガイ原料のオイルサプリメントの効果だと考えている。 

3月
【16歳】

 薬をもらいに行くのとポッキーの体重測定で病院へ。ポッキー11.2kg。全盛期は16㎏以上あったのに、11kg台が普通になり、しかも減り続けている。
 病院への行きは、私が車内で抱っこ。私の肩に頭を乗せるとウトウトとしてとっても穏やか。でも帰りは大騒ぎ。抱っこしていると嫌だと大暴れで、仕方ないので体を支えながら座席に立たせるが、それでも落ち着かない。たった十数分の時間なのに。次第に息が荒くなり擦れ声で鳴きだしてしまった。排泄がしたい時の様子に似てはいるけれど違う気がする。
 家まで耐えられずに自宅近くのコンビニでポッキーを下す。その場でくるくると回り出したのでウンチかシッコでもするのかと思い1、2分そのまま歩かせていたけれど、何もしないので乗車。まさかの単なる徘徊?
 するとポッキーは急に落ち着いてくれた。
 何だったのだろう?何かが不快だったのだろうと思うけれど何かは不明。ポッキーは高齢になり近年は吠えることが無くなっていたが、今年になってからは「起こして」とかの要求がなかなか私たちに気付いてもらえない時には時々擦れた声で吠えるようになっていた。落ち着いたので良かったが、夜泣きをするようになったらこんなことがずっと続くのだろうなと思った。

 確実に春の気配が強くなり、それに連動しているのかポッキーも落ち着かない様子が多くなった。特に夕方まで歩き続けて夜ご飯を食べた後に爆睡すると、決まって0時前には起きて徘徊。勝手に歩いてくれればいいのだが、すぐに倒れてもがくので私は起こしてあげる必要があり、音がうるさいのと眠れないことで私はイライラ。「うるいさい!」「頼むから私を寝かせて!」と本気で叫んでしまう。
 何かを食べれば少し落ち着くことが多いため朝のご飯の一部を2時頃にはあげてしまうことがあり、今までは大体6時位だった朝ご飯の時間がどんどん早くなっていった。

 16日にポッキーは16歳になった。いつもどおりの一日だが、小さな犬用ケーキでお祝い。この頃のポッキーは自転車と同じで、ゆっくりでも歩いているとすぐには転ばないのだが、止まってしまうと後ろ足が崩れて転ぶようになっていた。ご飯を食べていると(止まった状態)右後ろ足が崩れ立っていられなくなっていたので、ポッキーが棚に寄り掛かりながら立っていられるようにご飯を食べる位置を変えた。

 下旬、明け方までよく歩いていたポッキー、昼に私が外勤から帰宅するとベッドで震えている。また、だ。季節の変わり目だから仕方ないかとも思うが、いつもなら10時間も経てば震えは治まっていたのに、夜になっても治まらずご飯を少し食べただけでほぼ眠っている。でも、あんなに具合が悪そうだったのに翌日0時過ぎると起きて徘徊を始めるポッキー。徘徊の習慣って、すごい!
 徘徊は明け方まで休み休み続き、朝には疲れたようで動けなくなり眠り、再び震え出す。病院へ行ってステロイド、電解質輸液、ビタミン剤の皮下点滴を受ける。
 点滴をすると元気になるのだが、それで元気になって夜に思い切り徘徊して朝には動けなくなるパターンになってしまい、点滴は2回で終了。その代わりに以前も飲んだ漢方薬を再び飲んで様子を見ることに。また、徘徊しないように精神的に落ち着かせる効果があるという漢方薬も飲むことになった。
 ポッキーに疲れた様子が見えてきたら出来るだけすぐにベッドに運び寝かせるようにして、体に負担を掛けないように、転ばせないように注意していたら、幸い震えは5日で治まった。
 ポッキーの震えは3ヶ月おきに発生していたけれど、今回は前回から2ヶ月と周期が短く、ポッキーは今16歳。今まで漢方薬は、少々お高めと金銭的な理由もあるけれど、最後の砦みたいな物に思っていて、効く漢方薬を習慣にした時にまた体調を崩したら後がないと思って体調不良時にしか飲ませていなかったが、今回からは毎日の薬を漢方薬に替えることにした。

 ステロイドで頻尿になり起きたとたんに部屋でシッコジャーが続いたことから、今回初めて男の子のオシッコ用おむつデビュー。嫌がる子もいるとネット等にあったし、パッケージにもご褒美を使って慣れさせると良いと書いてあったが、ポッキーは特に異論はないようで無反応。すぐにおむつの中でシッコをしてくれた。これは慌てなくていいので安心。おむつは頻尿が治まるまで使用した。
 今月の体重、11.3kg。

4月
【16歳1ヶ月】

 徘徊をしては右後ろ足が崩れて倒れるポッキー、いつも右臀部を床にぶつけているため、痩せて飛び出たお尻の骨の所の皮膚が赤くなっていることに気付く。冬に肉球のひび割れに使っていたワセリンを褥瘡予防で塗るようになった。またポッキーは自分では常に左上で寝ているため、ポッキーが熟睡しそうな時には私が抱っこして右上でベッドで寝かせるようにした。そして、お尻の飛び出た骨の部分がカバーできるようパンツを履かせたいと思い人間の子供用パンツでポッキーのパンツを作ったが、裁縫が下手な私はどうも上手く作れず、服をインターネットで探し始めた。

 去年から寝ウンチ(睡眠中のウンチ)、尻餅ウンチ(尻餅をついた拍子にウンチが出てしまう)が時々あり、一番大変なのがウンチパラダイス(ウンチした後に引きずった後ろ足で踏んで床に擦り付けて歩き回る)だったが、それがミックスしてバージョンアップ(?)した。
 寝ている時にしたのか起きた時にしたのかは様々だが、私が目を離した時に横になった状態でウンチをし、起き上がろうとして出来ず暴れ、後ろ足、お尻、床がウンチまみれになるのだ。その光景が目に入った時、一瞬どこから手を付けたらいいのか判らずボー然とするが、横になっているポッキーは足をバタつかせて暴れているので、汚れを広げないようにまずはポッキーを綺麗にすることから始める。去年までは風呂場で比較的楽に足が洗えていたが、ポッキーはもう自力では立ち続けることが出来なくなっているため私が体を支えながら足やお尻を洗う必要があり、ひとりでは非常に大変な作業だった。

 今年も雪が無くなった。そしてpapaがアウトドアショップでカートを買ってきた。数年前からポッキーが歩けなくなったら大八車でも作るかと言っていたが、私はこのようなカートは初めて見て、とてもいいと思った。
 papaは乗ったポッキーが不安がって暴れないかと心配していたらしいが、ポッキーはすぐに慣れてくれた。カートを使うことで、去年は1度だけ、入り口までしか行けなかった近所の公園に、2年ぶりに行き中に入ることが出来た。
 ポッキーはカートから出たい時には上半身を起こして降りたいとアピールをするので、papaが抱っこで下す。するとポッキーはシッコやウンチをしたり匂い嗅ぎを楽しむのだが、そういった場所は以前papaと自転車散歩をした時に必ず立ち寄るスポットだった。カートに乗り、papaがカートを引っ張っている時には顔や上半身をカートから乗り出し所謂「ハコ乗り」で移動し、歩きたい所は下りて少し歩く。それを繰り返して、長年通った公園を散歩することが出来るようになった。
 papaによると歩く時はもちろん、ハコ乗りで周囲の景色を見ながらカートに揺られている時も、ポッキーは本当に心地よさそうで楽しそうとのこと。

5月
【16歳2ヶ月】

 すっかりpapaとのカート散歩が日常になったポッキー、薄め牛乳を持参して、雨さえ降らなければ午前、午後の2回は出かけている。降りて歩きたい、ウンチシッコがしたい、と思うとちゃんとアピールしてくれる(たまにカート内でウンチやシッコをしてしまうことはあったが)。月初めには何と、もう2、3年は行っていなかった石狩川河川敷まで行くことが出来た。それでも十分嬉しいのに、帰路は途中なんと900m位を30分位かけてゆっくりゆっくり歩いた。こんなに連続して歩けるのも何年ぶりかであった(でもこれが最後だった)。
 帰宅が遅く心配になった私が自宅前の道路で待っていると、カートに乗ったポッキーが帰って来た。この時のポッキーはハッハッ言っていてちょっと疲れてはいるけれど本当に満足そうで、ポッキーは散歩が好きなのだとしみじみ思い、出来るだけ散歩を楽しませてあげたいと思った。
 カート散歩はなかなか目立つので、ポッキーは今まで以上に老若男女に声を掛けられるようになった。そして散歩中の他の犬が近付いても、人に撫でられても全く平気(と言うか無関心)になった。papaからその話を聞き、若い頃は人が近付いて来たり犬を見たら激吠えで、私にとっては大変な散歩だったのに、あのポッキーが・・と感慨深かった。

 連休中の暖かい日に今年初めてのシャンプーを実施。ポッキーはもう自力で立ち続けることは出来ないため、papaが抱っこした状態で私が薄めたシャンプーでサーっと洗い、湯船にはぬるいお湯を張っておき抱っこしたpapaと一緒に浸かることでシャンプー成分を根元から洗い流すようにした。この時のポッキー、とても焦った様子ではあったけれど、papaに抱っこされながら前足を規則正しく動かしていて犬かきがとっても上手だった。ポッキーは泳いだことはないのに、水に入ったら本能的に泳ぐんだなととても感心した。

 日中にどんなに散歩に行っても、午前0時になると起きる生活は続いている。時々はウンチをしてもご飯を食べても何をしても、息荒く落ち着かないことがある。私は以前からポッキーの眠らない状態には月齢が関係しているのではと考えていて、ポッキーが落ち着かない夜には月齢を確認するようになっていた。すると月が満月や新月に近づく頃(若潮~中潮)に落ち着かず眠らない傾向があった。でもそれは月齢と言うよりも日にちの周期なのかもしれない。しかしそんなことを考えるのがちょっとした気晴らしや、今後の予想になった。

 月半ばを過ぎ、天気が良い日は夏の日差しになり、papaがパラソルを買ってきた。papaが工夫してカートに取り付けてくれたので、日差しが強くなってもカート散歩が続けられた。さらに暑くなってからはカートの中の敷物をひんやりジェルマットに替え、中にいるポッキーの暑さ対策をした。そして散歩に行くpapaと自宅に居る私でトランシーバーを使い、papa達が自宅近くに戻ってきたら通話ができるようになるので、papaが帰宅を知らせると私が足ふきシートを準備して玄関で待つことが習慣になった。

 ポッキーは去年から鼻水がよく出るようになった。色は白や透明のことが多いが、歯周病の薬を休むと粘度が強くなり色も黄色くなる。そのため内服は継続中。
 今月の体重、11.5kg。

6月
【16歳3ヶ月】

 褥瘡予防のためにずっと探していたお尻まで隠れるウェア、papaがインターネットで見つけて買ってくれた。散歩に怪我予防と汚れ予防で着ていくようになったが、ウェアを嫌がらずに着てくれるポッキー。散歩コースの近所の公園の隣には数年前に動物病院が開業していたが、ポッキーはそこの患者では無いが看護師さんに声を掛けてもらったり、病院のテラスで歩かせてもらったりしている。
 自宅では19時頃までは室内を歩き回り、それが終わると2時間位は眠ってくれるため、その間に私はお風呂に入ったり仕事が終わっていないと集中してパソコンに向かうことが出来る。

 体調はとても落ち着いていたが、下旬になると肌寒い日になったかと思うと本州の梅雨のようにジメジメと蒸し暑い日があったり、気候の変動が激しくなった頃からポッキーに疲労が見られ始めた。そしてさらに後ろ足が弱くなって排泄で踏ん張るのが本当に大変そう。家の中では座り込みが多い。ポッキーは部屋を家具や壁に沿って大回りで歩くことが多いが、時々ふらつきながらテーブルの足に寄り掛かり、そのままくるくると回って(徘徊に近い)最後に座り込んでしまうことも増えてきた。この行動はよくあり私たちは「ポールダンサーしてる」と呼んでいたが、座り込んで倒れそのまま眠ってしまうこともあった。
 ご飯を食べている時にも、お皿の外で口をパクパクしているので私がマズルをお皿の中に誘導するようなことがあり、目もほとんど見えていないんだなと思った。普段はまだおむつやマナーウェア(おむつよりも薄い)はしていないが、さっきのオシッコからだいぶ時間が経っていてそろそろかと心配な時には着用すると、徘徊途中で立ち止まってマナーウェアの中でオシッコをしてくれていることがある。
 今月の体重、11.75kg。

7月
【16歳4ヶ月】

 突然涼しい日もあるが、本格的に暑くなってきて自宅はほぼ毎日エアコンフル活動。人間でも気怠い気候はポッキーの体調にも影響し、後ろ足の不調や老いがさらに感じられるようになった。
 日中の日差しがますます強く朝から気温が高くなってきて、散歩にはパラソルを付けて朝は早めに出発し、夕方は出来るだけ遅い時間に行くようにしたり、暗くなるまでに気温が下がらない日は中止している。散歩に行くと芝生や日陰で休憩し、リゾート気分を楽しむポッキーとpapa。でもこの頃から、家の中だけでなく公園でも、時計回りでその場回転をするようになる。

 夜はますます眠らない期間が長くなる。22時頃にシッコに起きてから翌明け方まで、途中ウトウト程度でまとまって熟睡しなくなることがさらに増え、気持ちを落ち着かせる効果があるという漢方薬を倍量飲ませるようにしたが効果のほどはいまいち。眠らない期間が1週間位続き、数日落ち着く、の繰り返しの感じ。夏バテの私には、夜に連続して眠れるのは運が良くて2時間位、細切れを合計してやっと毎日4時間程度の睡眠は本当に応える。
 そんな中、パージョンアップしたウンチパラダイス発生は私に追い打ちをかける。
 ポッキーは不快なのかエアコンのある部屋やその部屋に置いてあるベッドにはあまり眠らなくなっていて、隣の部屋で徘徊の末にバッタリ倒れ眠っていることが多いが、私が夜に仕事がなかなか終わらずパソコンに向かって集中している時や、深夜にやっと眠りに入った頃に、ポッキーが暴れる音で気が付くと隣の部屋でポッキーはお尻と後ろ足、その周囲の床がウンチまみれ。仕事が終わらない、やっと眠れたばかりなのに、何で今やるんだ!と怒りが込み上げてくる。ポッキーだって嫌がらせでやっている訳ではないのは十分理解していて、やり場のないイライラも相まって自分の感情が押さえ切れなくなる。
 ポッキーは目の前で暴れていてさらに汚れを広げているので、ポッキーを抱き上げて風呂場に行く。嫌がってかすれた声でひゃんひゃん鳴くポッキーだが、体を支えながら自分も濡れながら体についたウンチを洗わなければならない。その後床の掃除。掃除をしている時に横になってるポッキーが起きたい、動きたい、と暴れて鳴くと「うるさーい!」とさらに怒鳴ったり雑巾を床に叩き付けてしまう。
 一通り片付け終わると気持ちも少しずつ落ち着いてきて、後で思わず怒鳴ったり大きな音を立てた自分に後悔なのだが、未明に掃除をしている最中にpapaが帰宅した時が私にとってはイライラの頂点だった。
 帰宅したpapaはイライラしながら掃除している私を見て「ポッキーに怒ったって仕方ない」「そんなに嫌ならポッキーのお尻の毛を全部刈っておむつをすればいいだろ」と不機嫌に言うのだ。私にとっては火に油を注ぐ発言。
 ポッキーが軟便であればおむつをするが、普通のウンチをしてくれるポッキーがおむつをしたところで今より広範囲にお尻を汚すだけで、床のウンチの掃除が無いか少ないだけで、後始末の手間は±0でそんなに変わらない。それにポッキーに怒ったって仕方ないのは私だって十分解っていること。papaも去年はひとりでパラダイスを掃除したことがあったけれど、今年になってバージョンアップしたこのまみれた状態をpapaはひとりで後始末したことは無いのに、私の苦労も知らないでそんな正論だけ言われたくないわ!と思う。
 掃除を終わらせて布団を被って寝た。立場の違いによる家族の介護葛藤あるあるだと思った。

 この頃から深夜のウンチパラダイスが心配で、私はポッキーの肛門を触ってウンチの状態を確認し、出そうな位置に来ている時には指で肛門を摘んで出すことを時々するようになった。

 月半ば、ポッキーの口がとても細かく震えていて、薄め牛乳を飲ませたら落ち着くことがあった。その後もたまに口に同様の動きがみられることがあったが、すぐに治まっていて癲癇なのかは判らない。

 今月の体重、11.55kg。月末にはシャンプー実施。
 去年からポッキーは右後ろ足が弱いため自分からだといつも左上で横になっていたが、月末には左後ろ足が弱り、右上になって倒れたり、そのまま右上で寝てしまうようになった。

8月
【16歳5ヶ月】

 右目に白い目やにが増えてきた。目頭に溜まった目やにを取るが、ポッキーは目をつぶらない。左目を取ろうとするとつぶる。右目は見えていないのだろう。
 そんな時、右目の角膜のほんの一部が僅かに陥没しているように見え、ポッキーを連れて病院に行った。診察を受けたが乾燥した目やにが角膜にこびりついているのでしょうと言われ、目の潤いを増やすためヒアルロン酸の目薬を出された。確かにポッキーは今年になってから睡眠中に目が半開きになるようになっている。目薬を差すと目やにが取りやすいためその後も時々差すようにしたが、でもやはり直径1ミリ位だが角膜が陥没しているように思った。私は様子を見ることにしたが、これは判断を誤り、5か月後に悪化させてしまい後悔することになってしまった。

 少しでも夜に眠ってほしいと、papaがビニール傘や透明なビニールシートでカートに簡易屋根を作り、雨が本降りでなければ散歩に行くようにしている。それでも午前0時を過ぎると起き、明け方まで眠らない夜が長くなっている。 そして月半ばになると秋を感じる気候のせいかポッキーの行動パターンに時間のズレが出て来た。
 今までは晩ご飯を食べた後暫くして、19時頃から22時頃までは熟睡してくれるのでこの間に私はお風呂に入ったり仕事に集中が出来たのだが、17時すぎに早々にウトウトし始めて19時すぎには起きてしまい、ハアハアと息荒く落ち着かずに徘徊をするため私がお風呂に入れなくなってしまったり、寝たと思ってお風呂に入ると髪を濡らしたタイミングで「ひゃんひゃん(起こして)」とのポッキーの吠えが聞こえるため(風呂のドアは閉めるが、それ以外のドアは全開にしているためポッキーの声が聞こえる)裸のまま飛び出すこともあった。
 また夜にシッコで起きる間隔が3時間から2時間に短くなり、徘徊にお付き合いする私は連続2時間は眠れないようになり、最悪だと睡眠時間が合計して2時間位しか取れない日もあった。
 そして、ウンチシッコもした、フードも少し食べた、のに息荒く興奮して歩き回ることが増えてきた。寝かせようと抱っこをしたりベッドに連れて行くとますます大暴れ。「一体何がしたいの?!」と思うが、ポッキーは寝ていたくないとか何かが不快なだけで、自分でもそんなことは解らないのだろうと思う。
 ウンチのタイミングも変わってきたため深夜のウンチパラダイスが怖く、ウンチは出来るだけ昼間にしてほしいと思い、夜のオシッコ後にあげるおやつや深夜0時や2時のプレ朝ご飯の食べる量を出来るだけ減らし、早く眠ってほしいためにあげる時間がどんどん早まっていた朝ご飯を4時台に戻すようにした。
 夜はポッキーも大変だが、午前や昼過ぎはぐっすりと眠っている。熟睡した寝顔を見ていると、例え目が半開きでホラーでも(笑)、やはり可愛くて仕方がない。私たちがこの子を守るんだ、と思う。

 購入したナックリング予防の足先サポーターが届いた。
 後ろ足が弱り、2、3ヶ月前から見られ始めた「つま先歩き」の頻度が増えてきたため。ポッキーは時々後ろ足の裏(肉球)を床に付けて歩くことが出来ず、バレリーナみたいにつま先だけを床について壁に寄り掛かりながら歩いているのだ。足指が突き指しないのか、つま先だけでよく自分の体重が支えられるものだとある意味ビックリなのだが、足先を痛めるしふらつきの原因で危ないので、ネットで足先サポーターを購入してみた。
 しかし仕方が無いのだが、装着してみると肉球に当たる部分の生地に意外と厚みがあり、指は浮いていて足裏全体を床に付けないので何だか危なく、自宅内は転倒のために床にカーペットを敷いているのでマジックテープの部分がカーペットに引っ掛かりそうで心配だった。注意事項に「長時間使用はお控えください」とあって確かにそうだと思うし、装着した感じが想像と違ったので結局使用頻度は少なかった。ただpapaが外で散歩中に使ってみると、確かにナックリングにはならないとのことだった。

 月末、午前の外勤から帰宅すると「ポッキーに昼ご飯をあげていたらポッキーがプラスチックのスプーンを間違えて噛んでしまい、口から出したらスプーンが欠けていた」とpapaの報告。血の気が引いた。スプーンを見るとスプーンの中央部2.5cm×0.8cmが欠けている。
 3、4年前にテーブルの上に置いていたラップに包まれた蒸しパンを飛び上がって口で取って食べてしまったことがあり、その時はお芋をたくさん食べさせたらラップが小さく固まってウンチから出てきたことがあった。でも当時と違い今のポッキーはご飯を一度にたくさんは食べられないし、下痢や嘔吐をしやすくなっていて年齢的に内臓機能が低下している訳で、しかもプラスチックの破片はラップと違い形が小さく変わらないし折れたのだから尖っている部分で胃や腸を傷つける可能性がある訳で、胃の出口や腸で止まって詰まったら即、命に関わってしまうのだ。
 焦ってすぐに病院に連絡したところ、大きさからウンチで出せる可能性があるとのことで、ウンチがスムーズに出て来るようにウンチをフィルムするオイルのような液体を出され、それをご飯に混ぜてご飯をたくさん食べさせるように指示された。
 早速液体を混ぜたご飯を、一度にはたくさん食べられないので回数を増やしてあげ始めたところ、ポッキーはご飯は食べるが明らかに消極的。いつもと違い、美味しくないのだろう。それに、短時間のうちにたくさん食べてもらったのでお腹が重くて立っているのが辛そうだ。
 今までここまで頑張ってきて、そして今も毎日頑張って生きているポッキーを、絶対にこんなこと、私たちのミスで死なせたくない。私たちの予防できたミスで命の危険にさらし、辛く苦しい思いをさせていること、ポッキーに申し訳なく思い、辛かった。どうか1時間でも早く出て来てほしい。そして、もし万一のことがあったら、ポッキーと同じ思いをして私も死ななければならないと思った。

 13時前からたくさんのご飯を食べ始め、翌日7時過ぎからウンチが軟らかくなってきた。オイル状の液体の効果も見られ始めてきたが、プラ破片は出て来ない。たくさん食べているから今まで以上にウンチの回数が増え、その度にウンチスタイルになるのが後ろ足の負担になり、見ていて本当に大変そう。ポッキーに申し訳ないと思うと同時に、絶対に私がこの子を守ると思った。

 さらに次の日、必死になってウンチを崩して探すが、プラ破片は見つからない。もう2日経つ訳で、もしかしたら細長い形状だから胃から出ていないのかもしれない。ネットで調べたら、死ぬまで胃の中に入っているのならその方が安全と書いてあった。異物を内蔵に入れたままにしているのは爆弾を抱えているのと一緒だが、腸で詰まったり傷つけて死んでしまうのなら出来る限り胃の中にあってほしいとさえ思うようになった。

 3日目の12時過ぎ、約72時間後に、細い小さ目のウンチで「こんな細いのには入っていないだろう」と諦めながら探していたら、プラ破片を発見!体の力が抜けた。スプーンの欠けた部分にピッタリはまる。でも触ってみたら断面に少し尖っている部分があったのに、よくぞ無事に出て来てくれたと思う。ポッキーには謝罪と感謝しかない。スプーンは既にステンレス製に変更、ご飯は適量に戻した。

9月
【16歳6ヶ月】

 6日未明、私は突然目を覚ました。あれ?揺れている、地震だ。大きな揺れではないけれど結構長い。ベッドで眠らず窓際に敷いたマットの上で横になっているポッキーを見るとバッタリ熟睡。思わずニッコリしてしまった。すぐにテレビ本体の電源に手を伸ばしたが、暗いので押し間違えたみたいで点かない。この辺りは地震が滅多に無いし(今までのところ)この程度の震度なら心配ないだろうと思い、少しでも睡眠を取ろうとすぐに眠ってしまった。
 朝起きると停電していた。テレビの電源は押し間違えたのではなかったのだ。我が家の水は地下水なので電気が無いとポンプが動かず水が出ないため、常に災害対策を心掛けているpapaが車のバッテリーを使って電源を確保してくれた。しかし冷房まではまかなえない。この日は晴れて室温は午後に27℃まで上がったが、幸い風が強く、耐えられないような暑さまでにはならなかった。たまたま私はこの日に仕事を入れていなかったので一日ポッキーの近くに居ることが出来、ポッキーは暑かったと思うが風通しの良い窓際や台所のひんやりしたポイントで休ませるようにした。散歩、ご飯や水は、普段通りにするようにした。
 時々テレビを点けて情報を得ると、北海道全域で「ブラックアウト」になっているとのこと。初めて聞いた言葉。こんなに長い停電の経験は初めてで、これからどうなるんだろう、ポッキーの体調や生活リズムが心配だから早く復旧してほしいと願い眠った。いつものように夜中にシッコに起きると足元が懐中電灯の明かりしかなく真っ暗で大変だったが、見上げる空は山奥にでも来たかのような、こんなに星、と言うより光があるのかと思う夜空だった。
 朝になってもまだ停電が続き心底ガッカリしたが、7時すぎになり突然通電してくれ、本当に嬉しく安心した。
 後日談だが、病院の先生が自宅で飼っていた高齢犬は、この停電でエアコンが使えなかったことがきっかけで、その後ガクッと体調を崩したとのことだった。(翌春に亡くなっている)

 日中はそれなりに暑いが、朝晩は肌寒く、秋の気配がますます深まってきた。季節の変わり目、ポッキーの様子も1ヶ月前とは明らかに変わった。
 散歩中にほんの僅かな傾斜(上り坂)でも立ち止まってしまい歩けなくなっていたが、平地でも長い距離が歩けず2m位ですぐに立ち止まってしまいpapaが片手で体を支えてあげないと倒れてしまうことが多くなった。それ以上の距離が歩けるのは自宅と同じでその場回転の徘徊歩きのみ。散歩中にカートで移動時も、この頃からカートの中で眠ってしまうことが増えてきた。
 自宅内では今までは普通にスルー出来た角で立ち止まったりハマるようになった。ほんの僅かな家具のくぼみに鼻先を突っ込んですぐにひゃんひゃん鳴くようになり、100円ショップに行って網や軟らかいプラスチック板を買ってきて家具の隙間を塞ぐようにした。部屋を物や壁に寄り掛かりながら大回りで歩いたりその場回転で徘徊し、ナックリングで後ろ足が崩れ、行き倒れてそのまま眠ることが増えた。また四肢の柔軟性が無くなったため綺麗に丸くなって寝ることが出来ず、この頃から前足を伸ばしたままで体だけ丸めて眠ることが多くなった。(傍から見ていると、その体勢は辛くないのかなと思ってしまうが・・)
 暑い夏の頃は午前中は眠っていることが多かったが涼しくなって日中に眠る時間が減ったのはいいが、日中にさんざん部屋の中を歩き回っているのに夜にも何かに憑かれたように歩き回り、倒れても倒れても起こせと鳴いては歩き回っていて、生き急いでいるみたいで見ていることが辛かった。
 先月から夜もポッキーが歩き回るため私がなかなか入浴が出来ず、入浴してもポッキーの声で浴室から出なければならないことが増えていて、私がストレスを抱えていたことから、この頃から私が入浴する時には仕事中のpapaが休憩として時々家に立ち寄ってくれるようになった。(しかし不思議なことに、ポッキーはpapaが立ち寄り中には起きることが少なかった・・)

 16日、半分の誕生日。ポッキーは毎日全身で頑張っていて、16歳半はすごいことなのでケーキでお祝いしたかったが、先日の停電の影響で冷蔵や冷凍が必要な物流が滞り犬用ケーキが手に入らないため、代わりに体に優しいと考えて人間の蒸しパンでお祝い。でもこれはあくまで半分。次は本当の誕生日でお祝いをしたい。でも出来ないかもしれない。でも絶対にお祝いしたい。するんだ。

 今年になって抱っこで外にシッコに出るようになってから、たまに抱っこの途中でオシッコが出てしまい私の服を濡らすことがあったけれど、月末には夜中に寝間着を2回替えることがあり、夜の間はマナーウェア(おむつより生地が薄い)の着用を始めた。その数日後には日中の昼寝の後にも間に合わずに出てしまうことが続いたことから、マナーウェアは自宅内では常時着けるようになった。
 女の子のマナーウェアやおむつはパンツタイプになるので嫌がる子もいて、ズレて漏れてしまうこともあり上手くいかず大変なことがあるようだが、ポッキーは男の子で下腹部に巻くだけなので、違和感も少ないようで嫌がることも全く無く(若い頃なら噛み噛みと関係なく嫌がるだろうが)、本当に助かった。
 今月の体重、11.65kg。

10月
【16歳7か月】

 ポッキーは毎日どんなに眠っていても日中も夜中もご飯や午後の散歩の時間になると必ず起きてそれを要求。昼夜逆転していてもその時間は判るんだなと少し感心してしまう。でも部屋の中の何でもない所で立ち止まり吠えることが増え、最近はベッドで眠っている時にも要求とは違う鳴き方で突然一瞬吠えることがある。ポッキーも自分の身体の変化が理解出来ず、目や鼻が利かなくなりとっさに状況が理解出来ず、不安なのだろうなと思う。

 相変わらず0時に起きると明け方までウトウト程度でほとんど寝ず、最近には朝も7時8時にまでならないと寝ないこともあるポッキー。私は今年になって睡眠不足の生活が毎日続き、家で仕事中も外勤時以外は常にポッキーの様子に昼夜気を張っている状態で、心身が疲れ果てていた。
 夏頃から私は、週末のpapaが在宅時にスーパーに買物に行く時間だけが休息時間になっていた。食料品や日用品程度の買物で短時間だが、介護のことを一瞬忘れられる。そして、買物が終わるとまた家でポッキーの様子に常に注意をしていないといけないと思うと、家に帰りたくないと思うようになってしまった。私が外出している間に何か起こっても嫌だし、心配でもある。用事が無ければ早く帰った方がいいのに、でもそう思ってしまう。
 papaは「時間がある時に昼寝をすればいい」と言うけれど、平日は家に居ても細切れにポッキーの介護に時間を取られ、夕方や遅くなると夜までパソコン仕事が終わらないし、私はお年頃になってpapaのように横になってすぐになんて眠れない。「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない(言葉のままで解釈)」と言われているようなもので正直腹が立つ。
 そして去年重い物(まだポッキーの抱っこはしていない)を持った時に痛めた腰が、介護生活になり中腰姿勢や持ち上げ動作が毎日あるため痛みがますます辛い。酷くなると夜布団に入ると右下肢が痺れて眠れないこともある。
 ふと、こんな生活はいつまで続くのだろうと思う。しかしこの生活が終わると言うことは、ポッキーが居なくなるということだ。それは嫌だ。そんな日は早く来て欲しいなんて思わない。
 ポッキーに申し訳なくて、こんな気持ちでいたくない。でも今の生活は体が本当に辛い。
 こんな気持ちでいると、ポッキーに何かあった時、私はきっと後悔だけが残ると思った。だから私は思い切って、この頃からpapaが休みの日の夜は、papaに添い寝を交代してもらうことにした。正直papaは大丈夫なのかと心配であり、眠りが浅い習慣が身に付いているので2階でひとりで寝ても夜中に物音で何度か目が覚めてしまう。でも週1回位ではあるが添い寝交代は、自分の気持ちに少しだけ余裕が出来た。

 私たちは13年前の5月にシバザクラを見に行ってから毎年何度もポッキーとドライブを楽しんできたが、去年11月のお出かけが最後だった。今年3月に病院からの帰宅途中に車内で大騒ぎしたことがあったのでお出かけは無理だと思っていたが、もしかしたら行けるかもしれないと思い、何度も行った片道40分位の隣町の道の駅までドライブに行ってみた。しかしポッキーは行きも帰りも車内で落ち着かず、抱っこしても何しても動こうとしてひゃんひゃんと鳴き続け。私の方が疲労困憊してしまい、逆に寝たきりにならない限りドライブはもう無理だと思った。通院以外の外出は、これが最後になった。

 ポッキーは時計回りに歩き回るが、この頃から家だけでなく散歩中でも常に頭を左に傾け、左耳を垂らして、下を向いて歩くようになった。ナックリングがひどかったりすぐに倒れたり少しの傾斜でも歩けないようになっていたが、この姿勢の変化は足だけが原因ではない、いろいろな機能の衰えを見るようで寂しかった。

11月
【16歳8ヶ月】

 例年11月初めには初雪で、一昨年なんて既に積雪が始まっていたけれど、今年は冷たい雨が降ることは増えているけれど雪の気配はまだなし。でもお陰で変わらない散歩、地面の上の散歩が続けられていて助かっている。歩くと言ってもpapaの手で体を支えられながら数mを何度か歩く散歩だけれど、ポッキーに歩く意欲はあるのだ。いつもの公園に行くといろいろな人に声を掛けられ撫でられて、励ましてもらっている。公園に姿が見えないと心配してくれる人もいて、ポッキーはすごいね、人気者だね、人を笑顔に出来るんだね、と思う。

 そんな散歩中の出来事で、月半ばにpapaから印象的な話を聞いた。
 この頃になるとさすがに雨に雪が混じって来たが、そんなある日の夕方(と言っても15時半頃だがこの時期はもう日没直前)、夕方で人気が無くなったいつもの公園でポッキーが顔を左に傾け下を向いて徘徊に近い散歩をしていたところ、80歳位の男性がポッキーに近づいてきて、顔を上げられないポッキーの顔を見ようと地面にガバッと両手を付いて、ポッキーの顔を覗き込んだそうだ。そしてポッキーに「お前いい爺さん(papaのこと)に飼われたな」と言った後、地面に涙をぼとぼと落とし始めたそうだ。papaがすぐにポッキーを抱っこして男性にポッキーの顔を見せたところ、男性はポッキーの両前足を両手で握り、そのまま「お前・・・お前・・・」と言葉にならず、数分間泣かれていたとのことだった。
 この時期この天気だと16時には暗くなり、雨が雪に変わってきていたので、papaは男性に帰宅を促して別れたそうだが、この男性は9月頃にも少し離れた所から散歩中のポッキーの姿を見て涙を流されていたとのこと。
 その男性は昔犬を飼っていて今も何か後悔の気持ちを持っているのかもしれない。もしかしたらご自身に何かがあって辛い思いをされているのかもしれない。どんなことがあるのかは全く判らないが、高齢のポッキーが懸命に歩き、生きている姿というのは、こんなにも人の心を揺さぶるものなのだとポッキーに尊敬の気持ちを抱いた。
(papaと男性の健康状態も心配していたが、翌年の夏にその男性が散歩している姿をpapが見かけた)

 この出来事の翌日、とうとう積雪が始まった。毎年のことだが積雪の地面を見ると一瞬体が固まるポッキーだが、これまたすぐに状況を理解して普段通りに歩き始めるポッキー。軽い積雪ならカートは車輪のままで行けるかと思っていたがやはり駄目で、papaがすぐに車輪に、太い結束バンドを使って子供用のプラスチックのスキー板を設置。雪の上でもソリにしてカート散歩が続けられるようになった。
 ポッキーはフカフカの雪面を歩くのが変わらず好きで、土が見えている部分は積極的に匂い嗅ぎ。帰宅後にグッスリ眠る姿を見ると、体だけでなく意識の面でも疲れたのだとは思うが、充実もしているのだろうと思う。

 月末には今年3回目のシャンプー実施。もちろん体の負担を考えて短時間。いつもは12月にするけれど、お腹周りのオシッコの匂いが、ドライシャンプーでは消えず強くなってきたので早めに。そして体重は10.9㎏。とうとう10kg台になってしまった。一番太っていた時は16㎏以上もあったのに。どおりで横になっている時に毛の分け目が目立ち、肋骨や背骨のゴツゴツガリガリ感が増した訳だ・・・

12月
【16歳9ヶ月】

 本格的に雪になり、papaが散歩用カートに風雪除けの屋根を作ってくれた。100円ショップで買った網で両側の壁と天井を作ってそこに透明なビニールを張り、横風になっても痩せたポッキーが寒くないようにしたのだが、ポッキーは大騒ぎして全力で拒否。囲まれた閉塞感が嫌らしい。すぐに撤去となり、秋に使用していた簡易屋根にするか、屋根なしになった。そして寒くないようにカートの中ではフリースのひざ掛けを毛布代わりにポッキーの体に掛けたり去年papaが作ったフリースの簡易コートを着用するようにした。

 週1回位papaに夜の添い寝を交代してもらって1ヶ月以上経ち、papaもポッキーの対応に慣れてきた。翌朝papaにポッキーの様子はどうだったかと聞くと、0時、2時に起きる間や、その後の明け方まではよく寝ていたとのこと。それなら今日もまだ落ち着いているだろうと思い私が添い寝に戻ると、まあ、寝ない(笑)。偶然なのか、ポッキーは私だと思ってわかってやっているのか?!

 家の中で歩いている時に隙間にハマらないように、9月頃に再度家の壁の段差や隙間にはガードを設置していたが、最近はたった1cm位の家具や壁の段差に鼻先を付けただけで動けなくなり私たちをひゃんひゃん呼ぶようになった。支えが無いと歩けないため全面的に壁に体を預けて歩くようになり、「あれ?ポッキーがいない?」と思って姿を探すと、換気のために扉を数cm開けていた押入れの中に鼻先を入れそのまま突進して扉を開けたポッキーが、頭だけを押入れに突っ込んだ状態で立ち尽くしていたこともあった。ガードをさらに増やし、部屋の中は様々な形のガードだらけになった。そしてナックリングもますます増え、両後ろ足がつま先立ちになり、体を支えられなくなってそのまま倒れてしまうことが増えた。

 夜中に壁や網ガードに寄り掛かりながら歩き回ると、支えが無くなった所に私が添い寝している布団があることから、私の布団の上にバッタリ倒れてそのまま寝てしまうことがある。床や自分のベッドの上に倒れると「起こして~」となるが、布団の上だとそのまま寝てしまう。ポッキーは人間の布団の心地良さが解るのかなと思う。
 以前は寝ウンチが心配なので私の布団の上で寝かせることはなかったが、この頃には肛門を触りウンチの有無を確認したりつまんで私が出してしまうことが習慣になっていたので、寝ウンチの心配がほとんど無くなり時々一緒に布団で寝るようになった。
 ゴロ寝や昼寝をする私にピッタリ密接して隣で一緒に寝ることは常にあったけれど、噛み噛みワンコだから夜に同じ布団で寝ることは長年あまり無かったので、今になってこの幸せ。私の布団でスヤスヤ眠っているポッキーを見たり、隣で寝るポッキーの体の暖かさや呼吸の動きを直に感じると、とても幸せだった。

 年末になり寒波がやってきた。夜から明け方までほとんど起きていることは相変わらずだが、朝の寒さに比例してポッキーが朝起きる時間が遅くなっていた。そして寒さに比例して午前中の熟睡度が増した。ポッキーは6時7時にやっと眠って10時過ぎて起きるので、それから朝の散歩に行ったり、起きない時にはそのままカートに乗せてしまい散歩中に目を覚まさせるようにすることもあった。
 また夕方からオシッコにも起きず心配なくらい深く眠ってしまったり(でも22時までには絶対に起きる)、日中のオシッコの回数が減り午後から深夜0時まで出ないこともあった。
 寒波が来ると明らかに睡眠や排泄が変わるので、注意して見ていた。

 大晦日、珍しくpapaの仕事が休みの日。十数年ぶりくらいで大晦日をずっと家族みんなで過ごした。大晦日も寒く、ポッキーは散歩以外では30分間位部屋を歩き回り、バランスを崩し倒れたその場で力尽きたようにそのまま眠ってしまうことがほとんどだった。

 今年は、ポッキーにとっても、私たちの生活にとっても、激動の一年だった。理解はしていたけれど、1年がこんなに大きいのか、1年でこんなに違うのか、と思う。でも、何とか新しい年を迎えられそうなので、今の目標は17歳の誕生日を迎えること。ここまで来たらきっと迎えられる。絶対迎える。
 でもその前に、これから寒くなってくるのがとても怖い。今から、早く暖かく、春になってほしいと思う。でも私にとって経験上春先と言うのはとても注意が必要で、冬を越せるか、春を迎えられるかが大きな事。絶対に17歳の誕生日をお祝いする。春になってもしまた車に乗れたら、行きたかった花畑にポッキーと一緒に行くんだ、と思う。

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