幸福の実 作:como 絵:syel
幸福の実って知っていますか?
幸福の実は小さな妖精が育てています
そして新月の夜 その実の収穫作業が行われるのです
今日はその収穫の日
小さな穴の中で 妖精クルルと見習い妖精のエルルが
幸福の実の収穫をしています
大きな実 小さな実
色も大きさも みなそれぞれ違います
けれども そのどれもが 暖かな光を湛えています
そして二人は
その一つ一つを 大切に小箱へと詰めてゆくのです
「1つ2つ・・・3つ」
クルルが数えながら 幸福の実を小箱に入れます
「ねぇクルル 最近 この鉢の実は少ないですね」
エルルが1つの鉢を抱えて 寂しそうに言います
収穫をしていたクルルがその手を止めて答えました
「大人になるとね どの人も栄養を送るのを忘れがちになるものなのさ・・・
見てごらんよ あの鉢の実はもう1年も待っているのにね・・・」
クルルの視線の先には 一本の立派な幸福の木の鉢がありました
けれどもその枝の先には 本当に小さくて光も無く
まだ当分収穫の出来そうに無い実が1つだけついています
「少し前まではあの鉢も たくさんの枝を出して
その枝いっぱいに実がなっていたんだよ」
穴の中には 大小たくさんの幸福の木が並んでいます
小さく若い木ほど 多くの枝を出し鈴なりに実をつけているのは
見習い妖精のエルルにも すぐにわかりました
いろんな色の実をたくさんつけた木や
数では負けていも 大きさでは他に引けをとらない実を育てている木
そして ゆっくりでも 1つの大きな実を育てている木もあります
「クルル この実の栄養ってなんなんでしょう
お水も肥料もあげないでしょう?いつも不思議に思っているのです」
クルルは穴の上部から降り注いでくる光を指差しました
その光は太陽のものでもなく月のものでもない光でした
「幸福の実はね この光だけで育つんだよ。
この光の中に 人間の愛や希望や夢とかの暖かい栄養がいっぱい入っているんだよ」
「収穫できる実にはいろんな色があるだろう?」
「うん どれも とても綺麗です」
「その人の思いによって 色は変わるんだって僕の先生は言ってたよ
どの色がどんな物かなんて僕たちにはわからないけれど きっとその人にはわかるんだろうね」
エルルは幸福の実を1つ手に取り それをまじまじと見つめました
その実は薄く青みがかった白色に光っていました
この実の栄養はなんだろう 夢かな 希望かな・・・
この実は大きいけれど 光りだすまでに時間のかかっていた実・・・
これを届けたら きっとその人は喜ぶんだろうなぁ・・・・
エルルは この実の持ち主が喜ぶ顔を見てみたいと思うようになりました
「ねぇクルル この実 僕が届けに行ってはいけませんか?」
「・・・・・・・・え?」
幸福の実の配達は配達妖精のお仕事です
幸福の実の配達はただ届ければ良いというものではなく
クルルもまだ 配達の経験はありません
ちゃんと試験を通った妖精のみが
王様の許可を貰ってから就けるお仕事なのです
「だめだよエルル 王様に叱られちゃうよ・・・・」
でも本当は クルルも幸福の実を受け取った人間の幸せそうな顔を
いつも見てみたいと思っていたのです
配達妖精が幸福の実を受け取って去って行った後
クルルとエルルの前には その薄く青みがかった幸福の実が残されていました
「これを・・・箱の中に入れるの 忘れちゃったね」
クルルがポツリと言いました
「うん そうですね」
エルルがいたずらっぽく笑いながら答えました
「届けないとね・・・・・・」
クルルの目もちょっといたずらっぽく 光っています
さぁ 行こう
太陽の光が東の空を薄紅色に染めています
二人は わくわくしながら出発をしました
このゆっくりと育った大きな幸福の実
貴方の実なのかもしれませんね
ちょっとだけいたずら者の妖精二人組みが きっと届けに行きますので もう少し待っていてあげてくださいね