炎(オタク)のさだめ


オタクというのは因果な趣味。
常人と一線を隔したマニアックな趣味。
それゆえに色々と戸惑うことも多いのです。
今日はそんな私の体験談をお話しましょう。

服などを買いに行ってショップ店員に話しかけられる、というのはよくある話です。
個人的にはまっぴらごめんなのですが。
服ぐらい自分一人で買わせろ!
買い物ぐらい俺一人でできるわ!
見ず知らずの店員に話しかけられたりなぞ、面倒なだけ!
とか思っていました。

その点フィギュアショップだと、
売る方も買う方も淡々としている。
これですよ。
これぞ真理!このスタイルこそ僕に合致しているのです。
しかし、そんなフィギュアショップにも隠された牙が存在するのです。



・地元フィギュアショップ 『蜂力 〜Bee Power〜』の場合・
我が島根県にあった店、蜂力。
中高と僕のミクロマンカスタムライフを支えてくれた店です。
何せ、足の届く範囲ではここが唯一ミクロマンを取り扱っていたのですから。
素体が欲しくなれば、駅から電車で30分。
毎度毎度ミクロマンばかり買っていたのです。
そんなある冬の日でした。
当時は「着ぐるミクロマン」発売を翌月に控えた年末。
いつものようにミクロマンを手に取り、レジへと向かいます。
会計を済ましている最中にも会話などない…はずだったのです。
「…来月、ミクロマンでゴジラ出ますね」
「?!」
突然話しかけてくる店員にテンパります。
どうやらミクロマンの買い過ぎで店員に顔を覚えられていたらしい。
そりゃ、毎回ミクロマンしか買ってかないんですから当然です。
突然のフリに驚きつつも、ここで負けてはダメだと思い必死に切り返します。
「あぁ…あれっていつごろ入荷するんですか?」
渾身の返しです。
会話を成立させながらも、着ぐるミクロマンの情報を入手する!
ほんの一瞬の間に脳細胞が活躍して導きだした返答!
さぁ!会話を続けようかッ!!

「…さぁ…?」
「?!」
こ、これは予想外だ!
知らないのかよ!知らなかったのかよ!マズい!俺の切り返しが!
「…」
しかももう終わりなのかよ!!



・Joshin キッズランドの場合・
Joshin。島根を出て初めて知った店ですが、地元の店にはないような「基本的に値引きしてる」システムが魅力でした。
「安い安い!」とばかりに新作ソフビなんかが出たら通ったものです。
蜂力事件の傷もすっかり癒えていた、今年の頭。
発売されたばかりのウルトラQのDVDを、彼女が買ってくれるというので行ったのです。
ウルトラQが見れる!しかもDVDで!
もうウッキウキですね。うかれポンチです。
1、2巻を手に取り、レジへと向かいました。
レジにはおばちゃん店員
DVDをカウンターに置き、会計してもらいます。
その最中、それは起こった。
「…特撮とか好きなんですか?」
「?!」
まさかまさかの隠し剣・鬼の爪!
なんたること、覚えられている!!
「ウルトラQとかテレビで見たことないでしょ?」
「私らは当時テレビで見てたからねぇ!」
こ、これが関西の力か…!
会話が、会話の波が押し寄せてくる!
しかも彼女の前で!
俺が特撮オタクだというのは重々承知のうえなのでしょうが、さすがにこれは恥ずかしい。
耳がヒートアップしている!
「は…ハァ、まぁ、レンタルとかで見てたりとかしますけど…」
今はこれで精いっぱい。
後ろでニヤニヤされてるのがわかる!
やめてくれ!もうやめてくれ!
自分の彼女にウルトラQのDVDを買ってもらっている最中に店員に話しかけられる。
こ、こんな恥ずかしいことが他にあるのか…
その後見たウルトラQ。
はじめて見る『五郎とゴロー』は涙の味がした。



・東京駅地下 ウルトラマンショップの場合・
つい先日東京へ行ったのですが、地下のキャラクターショップ街へ行ったのです。
ジャンプショップやらフジテレビショップ、どんぐり王国などがある中で、やはり目を引くのはコレ。
円谷ショップです。
ちょうどEXゼットンも出たところだし、久しぶりに円谷を感じていくか!とワクワクしながら行きました。
途中、ジャンプショップで『超像可動 空条承太郎』を発見!
上がりまくったテンションの前では値段など関係ない。
即・購入です。
これが悲劇の引き金になるとも知らずに…
そして、ついに円谷ショップへ。
『LIGHT IN YOUR HEART』が流れ、店内モニターでは大怪獣バトルのプロモーション映像!
嫌でもテンション上がりますね。
欲しかったEXゼットンを手に、他に目ぼしいものもなかったのでレジへ。
会計を済ましていると、若い男性店員が一言。
「そちらの荷物(承太郎)とまとめましょうか?」
はいはい。その方が楽だし、お願いします。
「では、お預かりします」
承太郎の入った袋を渡します。そして受け取った店員が一言。
「おっ、ジョジョですねぇ!もう出たんですか?」
「?!」
まさか、承太郎に食いつくとは!
円谷ショップの店員で、ジョジョに反応する…
こやつ、只者ではない!!
こいつはくせぇーッ!同族の匂いがプンプンするぜェーッ!
ク、クソッ!こんなところで負けるわけにはいかない!返すんだッ!
「あぁ、そこで買ったんですよ」
「へぇ、これって凄い動くやつですよね?」
「えぇ、まぁ。スタープラチナ買ったんで、やっぱ一緒に」

「これってスタープラチナは別なんですか?」
ヤバイ楽しいぞ。
このままだと帰れなくなる!

ということで会話を適当に切り上げ、脱出。
ウルトラ好きでジョジョ好き。彼とはいい酒が飲めるような気がした…



いかがでしたでしょうか。
フィギュアショップの狭間に潜む伏兵。
こういう思いをするのも、オタクの醍醐味なのかもしれませんね。