群馬県立医療短期大学卒業論文

日本語が通じない患者さんへの対応に関する研究
−外国人患者対応支援システムの開発−

992023 高橋将史、992008 江口奈々、992024 高橋美幸、992030 松本江里子
指導教員:鈴木英樹(医療法人岸会岸病院)、石原十三夫


要旨

本県は全国的にみても外国人の居住率が高く、検査時に言葉の壁が大きな障害となっている。そこで、
より円滑な検査ができるように、外国人(日本語が通じない患者さん)への対応支援システムを開発した。
臨床においてよく用いられる患者さんへの指示を他言語に翻訳し、綴り、読み方、音声を用意した。
また、患者さんに読んでもらうための、検査についての説明文を作成、翻訳し、これらをhtml形式
にてまとめ、ホームページの形態として利用できるものを完成させた。

1.はじめに

本県は全国的にみても外国人の居住率が高く、検査時に言葉の壁が大きな障害となっている。そこで、より円滑な検査ができるように、外国人(日本語が通じない患者さん)への対応支援システムを開発し、インターネットを通じて、本県のみならず、全国の病院・診療所でも利用してもらおうと考えた。

2.事前調査の実施

計画の実行に先立ち、まず実状を把握したいと考え、5月に群馬県内の医療機関65施設に対して事前調査を実施した。39施設からの回答が得られ、回収率は60%であった。以下に調査の結果を示す。

Q1.「1ヶ月あたりの外国人の検査件数はどのくらいですか?」
外国人の方の検査件数は各施設によって様々であることが分かった。1ヶ月あたりの検査件数として、月1人〜4人が最も多く、9施設であり、続いて週10人〜19人と週1人〜4人が7施設であった。

Q2.「どのような言語を使う方が多いですか?」
最も多く使用されている言語はポルトガル語であり、英語、中国語、スペイン語と続いている。しかし英語が母国語でない人でも、英語が理解できる場合があるとの回答もあった。ポルトガル語やスペイン語が多かったのは、南米からの労働者が多いという群馬県の特色である。
「その他」には、フランス語、フィリピン系言語、イラン語、ベトナム語、パキスタン語などが含まれる。
この結果より、今回は上位4カ国語であるポルトガル語、英語、中国語、スペイン語を翻訳対象とした。
なおグラフ中の数値は、順位と件数を乗じた値を表している。

Q3.「現在まで、貴院では外国人の患者さんに対してどのように対応してきましたか?」
外国人の方に対する各施設の対応については、ジェスチャーで対応しているとの回答が最も多く、特に対策を講じていないとの回答も、約半数の20件に上った。しかし中には外国語で話して対応している、マニュアルを作成しているという施設もあった。その他得られた意見として、
・通訳に付いて来てもらう。
・簡単な単語で対応する。
・日本語で根気よく説明する。
・現地出身の職員がいる。
等があった。

Q4.「外国人の方が受ける検査として、どのような種類のものが多いですか?」
外国人の方が受ける検査の種類としては、一般撮影が最も多く、以降CT、MRという順になっている。「その他」として、IPやパノラマなどの回答があった。

Q5.「こんなシステムがあったら便利だと思うことがあれば自由にお書き下さい。」
以下のような意見が得られた。
・医療用の小型翻訳機
・音声だけではなく文字を同時に表示させるシステム
・一般撮影にもCTのようなオートボイス機能が欲しい
・何語を話すことができるかを知る方法

Q6.「試作品完成後、モニター使用にご協力いただけますか?」
はい:23件  いいえ:9件  無回答:7件

Q7.「何かご意見等ございましたら自由にお書き下さい。」
以下のような意見が得られた。
・今後、受診者が増加するようであれば、何らかの対策が必要に思う。
・件数が少ないので何も対策を考えていなかったが、必要性はあると感じている。
・検査中、患者の近くにいられないCTやMRIなどでは特に検査方法、内容を伝える手段を考慮したい。
・以前より件数が多くなっているので、外国語を勉強する必要はあると思う。
・現在のパソコンで利用できる、音声認識や言語変換、音声合成機能を統合して使用する。
・英会話の本は購入してあるが、実際の業務上では本を見ている余裕はない。
・英語以外に関しては参考となる書籍は用意していない。

3.ホームページの作成

次に、ホームページの作成に着手した。その過程において、特殊文字をどうやって入力し、表示させるかという 問題が生じた。ポルトガル語やスペイン語の特殊文字・記号、中国語の漢字は、通常の方法で入力することができない。
html上で特殊文字を扱う方法の1つに、文字をコードで指定するアスキーコードというものがある。ところがこれはhtml ver4.01からの規格であるため、これに対応したブラウザでないと文字化けが発生してしまう。また、中国語の漢字は膨大な量になるため、コードの利用は事実上不可能と判断した。
そこで、中国語については全てを画像で表示させることにし、ポルトガル語とスペイン語についてはアスキーコードを利用したテキストと画像の両方を用意することにした。画像版では、表示が遅くなる、印刷時にやや不鮮明になるといった問題が生じる。そのため、テキスト版が正しく表示できない場合に限り、画像版を利用してもらうようにする。

4.使用法について

まず検査中の指示については、コンピューターの音声出力端子にスピーカーを接続し、撮影室に直接音声を流す、カタカナで読み方を示してあるので、それを術者が読み上げる、紙に印刷したり書き写すなどして直接患者さんに見せる、などの方法が挙げられる。
検査内容の説明については、印刷するなどして、検査前に患者さんに読んでもらうようにする。
また、検査に来た患者さんが何語を話せるのか分からなくては、使用することが出来ない。そこで、今回翻訳した4カ国語について「私は○○語が話せます。」という文章を用意した(言語チェックシート)。これを印刷して患者さんに見せ、指し示してもらうことで、今回用意した4カ国語が利用できるかどうかを把握することが可能である。

5.モニターの実施

事前調査実施時に、各施設にモニター使用の協力を依頼し、ご協力いただけると回答のあった23の施設で試用していただいた。原則的にホームページはインターネットを通じて利用してもらうが、希望に応じてCD-Rディスクの配布も行った。

6.モニター後調査の実施

改良や修正の参考とするため、モニター後に改めて調査を実施した。試用中の23施設に対し、19施設からの回答が得られ、回収率は83%となった。以下にその結果を示す。

Q1.「実際にホームページを使用しましたか?」
使用した:4  使用しなかった:11

Q2.(使用しなかったと答えた方)「使用しなかった理由は何ですか?」
・外国人の検査がなかった:4
・使用するコンピューター側の問題で利用できなかった:2
・使用しなくても対応できた:6
・必要な言語・文章がなかった:2

Q3.(指示編を使用したと答えた方)「患者さんへの指示編をどのように使用しましたか?」
・スピーカーに接続して音声を流した:1
・直接読み上げた:2
・紙に書いて(印刷して)患者さんに見せた:2

Q4.(説明編を使用したと答えた方)「検査の説明編をどのように使用しましたか?」
・紙に書いて(印刷して)患者さんに見せた:2
・パソコン画面を患者さんに見せた:1

Q5.(いずれかもしくは両方を使用したと答えた方)「どのような検査で使用しましたか?」
一般撮影:4  MR:1  US:1

Q5.(いずれかもしくは両方を使用したと答えた方)「実際の検査で役に立ちましたか?」
はい:4  いいえ:0

Q6.(いずれかもしくは両方を使用したと答えた方)「使いやすさはどうでしたか?」
使いやすい:1  使いにくい:0  どちらとも言えない:3

Q7.「今回の試みについての意見・感想、またホームページに対する要望や改良の提案などがございましたら自由にお書き下さい。」
以下のような意見が得られた。
・大変良かったと思う。今後も少しずつ増やしていって欲しい。外国人の患者さんが来た際にはぜひ利用したい。
・検査前の説明をコピーして見せるだけでも患者さんは安心すると思う。
・今後、機会があれば使用していきたいと思う。
・イランやフィリピンの母国語があると良かった。
・大変勉強になった。
・「どこが痛いか」「息が苦しいか」といった患者さんの容態を聞く文も欲しかった。
・大変便利で役に立った。他にも必要な文章があるので追加して欲しい。
・これを見せて納得して頂くことは、私達にとっても患者さんにとっても安心できることだと思う。当院としてはとてもありがたかった。

7.試用後調査結果より

要望については、対応言語を追加して欲しいというものが最も多く、ミャンマー語、韓国語、ペルシア語、タガログ語などの意見が得られた。これらについては、翻訳の依頼先が見つかり次第順次対応していきたいと考えている。
その他に、「こんにちは」等の挨拶や、「痛くないですか?」等の容態を尋ねる文章もあった方が良いとの意見もあり、これについては文章を追加することにした。
また、検査のみでなく、放射線治療にも対応できるようにした。
実際に使用していただいた施設からは、「とても役に立った。」「患者さんも安心していたようだった。」との意見を頂いており、臨床に貢献できたと言える。
なお、公開アドレスは以下の通りである。
テキスト版:http://www14.plala.or.jp/flrt/
画像版:http://www.gchs.ac.jp/flrt/index.html

8.結語

今回の調査を通して、本県における外国人受診状況とこれまでの対応状況について知ることができた。
今回の試みが本県のみならず、全国の病院・診療所でも使用され、外国人患者さんの理解・協力の下、より質の高い検査が行われるようになれば幸いである。

9.謝辞

この研究を行うに際し、ご協力いただいた以下の方々に厚く御礼申し上げます。
(財)群馬県国際交流協会 
 キーラン・フラナガン様(英語翻訳)
 SATO TOMIKO様(ポルトガル語翻訳)
 堀口 礼子様(スペイン語翻訳)
 大路 潔江様(中国語翻訳)
アンケート調査やモニター使用にご協力いただいた群馬県内の医療施設の皆様方

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