花つれづれ
「花」、「花の香り」で思い出す事、思い出す人があります。
お店を始めてからも「花」を通じていろんな出会い、いろんな思いが増え続けています。
そんな花にまつわる話をつれづれに・・・。


烏瓜


「烏瓜」秋の楽しみはなんといっても実のものでしょうか。
日に日に寒くなり木々も色づき始め、実も紅くなったり黄色くなったり、 そんな中でもこの烏瓜はいつも人気です。
まだ緑のものもあるけどいろんな色、黄色だったりオレンジだったり それらをひとつにまとめ縄をかけます。
それを和紙でラッピング。
袋に入れたりせずこのまま手に提げてお店のオープンに、お誕生日に... 。

和紙に包んだまま飾るも良し、和紙をとり縄のまま壁に掛けるも良し、 縄をはずし籠に入れたり、大きな器に入れたり、想像はつきません。
実の中にはたくさんの種が入っていますがこれは「打ち出の小槌」の形をしています。
財布に入れておくとお金が増えるとか....。
そしてこの烏瓜の花は夜にレースのような花を咲かせます。
なかなか咲いているところお目にかかれませんが美しい花です。

(カラスウリ 別名烏の枕)

椿

お店をオープンして1年目の11月のことです。
「明日大徳寺で結婚式を挙げます。
今からお寺へご挨拶に行くので花束を作って欲しい」とご注文いただきました。

いろんな花がある中で椿だけの花束をさせていただきました。
とてもおしゃれでセンスがよく素敵なお二人だったのでとても印象に残っていました。
そのお二人から毎年11月になるとご注文のお電話を頂くようになりました。
お二人が式をあげられた大徳寺の塔頭へ椿の花束をお届けするように、年によってはそのお電話が遅れることもあり、正直なところ私達はあらぬことも考え心配しました。
少し遅れ「子供が生まれ忙しくしていて遅くなりました」とお電話をいただいた時には、ホッとしたことがあります。
奥様から「辛いこと、悲しいこと、淋しいこと、うれしいこと、楽しいこと、どんな時でも初心の気持ちにすーっと戻れるよう大事にしたい「椿」との出会いです」と最近にお手紙を頂きました。
本当に花屋冥利に尽きる気がします。
ご結婚1周年に感謝の気持ちを託された花束がかれこれ10年です。
結婚記念日にご夫婦でも何かされているのかもしれませんが、それを挙式の時にお世話になったお寺にも...。

東京の方なのに京都の大徳寺で挙式をされるというのはお寺とも何かご縁があったのかもしれません。 それでもなかなか出来ることではないと思います。
そのお二人とは年に一度のお電話と年賀状のやりとり。
お会いしたのは一度だけなのですが忘れることの出来ない大切な人たちです。

ここまでが2003年「花・谷中便り」(その頃ペーパーで作っていました)に掲載した ものです。

それからもまだしばらく花束を届けていましたがそれはある時からなくなりました。
そんな訳で今は年賀状のやりとりだけですが今年の年賀状に 「結婚...21年目を迎えました...いろいろ...ありましたが...(笑) 谷中さんからの賀状は初心を思い出します。
大事!感謝!感謝!」と書かれていました。
そうかあれから21年か...そらいろんなこともあります。
子供さんももう高校生。 いつか再会をしたいと常々思っております。

この椿、花がぽとっと落ちるので縁起の悪い花のように言われますがそんなことはありません。
戦国時代とか、これから出征するという時に床の間にいけていた椿の花がぽとっと落ちると それは縁起が悪い感じがするのでそういう場面ではいけないでおこう...と。
おめでたい席、お正月に椿はいけます。青竹に椿などはまさに頌春です。
そして字も木に春、なんて素敵な字でしょう。
(春まで咲きます、薮椿なんかは特に) そしてこれほど種類の多い花もありません。
そして奥の深い花です。





© 2012 · HANA Taninaka