花つれづれ
「花」、「花の香り」で思い出す事、思い出す人があります。
お店を始めてからも「花」を通じていろんな出会い、いろんな思いが増え続けています。
そんな花にまつわる話をつれづれに・・・。


彼岸花


「彼岸花」(曼珠沙華)とはよくつけたもので 秋のお彼岸頃になると必ず咲き出してくる。
茎がすっと伸び、燃えるように真っ赤な花が咲く。
この花が咲きだすと父の事を思い出す。
父は季節の山野草、山菜に詳しく、蕨、蕗の薹がでる頃には必ずといっていい程私は山菜採りに連れて行かされた。
釣りの大好きだった人で鮎釣りに行った時などは自然の蓼、山葵などを持ち帰り自分で料理をする人だった。
父から自然の匂いというのを教わった気がする。
山の匂い、雨の匂い、土の匂い、そして蕗の薹の匂い、鮎の匂い...。
そんな父がお彼岸の頃になると必ず両手にいっぱいの彼岸花を摘んで帰ってくる。
父の勤めていた松ヶ崎は今と違って田畑がもっと有り、秋には畦道を埋め尽くす程彼岸花が咲いていた。
祖母には「彼岸花を家の中にいけるものではない」と言われていたが、そんな事はお構いなしで毎年その時期になると摘んで帰って来た。
そして彼岸花をいけられた床の間は妙に赤々となり秋一色になるのでした。

彼岸花:
曼珠沙華ともいう。『法華経』に出てくる梵語で赤い花を意味するといわれている。 ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。中国から渡来した帰化植物であるといわれ日本全土、中国に分布する。


笹百合

「笹百合」この花が咲く頃になると思い出す人があります。
その時の状況、配達途中の景色が思い出されます。
知っている方のご主人が歳若くして亡くなりました。
お供えのお花をそのご夫婦がお勤めになってられる会社からご注文をいただき主人と美山の方まで配達に行きました。
奥様はうちの花をお願いしたいと思われたようですが、あまりにも遠いので諦められたようです。
その時の花は季節柄笹百合をいっぱいいれました。遠方お花をお届けしたことにも感激され、亡くなったご主人が笹百合がとてもお好きだったということで感激していただきました。
ご夫婦がお勤めになっている会社は花・谷中の古くからのお得意様で、仕事上でご主人とも何度かお会いしたことがありました。
ご主人とお別れさせていただいている時に、奥様がご主人の顔をさすりながらお話しになったことを 今でもはっきりと覚えている気がします。


うれしいときの花、かなしいときの花、個人的にもいろいろ思い出がありますが、 お店をしているとお客様の数だけいろんな場面にも遭遇し、私達にも忘れられない花になったり、 その時お客様に「この花」をという希望がなくても後からその方にとって忘れられない花になったり、 いただかれた方が忘れられない花になったりすることがあります。
それは日本に四季があり季節ごとの花があることも大きな理由なのでしょう。

あなたはどんな花が好きですか
あなたには忘れられない花がありますか




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