花つれづれ
「花」、「花の香り」で思い出す事、思い出す人があります。
お店を始めてからも「花」を通じていろんな出会い、いろんな思いが増え続けています。
そんな花にまつわる話をつれづれに・・・。


金木犀の香り ふたつの記憶

今年は9月の終わり頃夕方にこの花の香りを確認しました。
まだまだ蕾ですがすでに香りがしていました。
秋を感じさせる香りの花といえば金木犀。
春の沈丁花と並んで金木犀の花の香も好き嫌いがあるようなことを聞きますが 私は大好きな香り(花の香はなんでも好きです) そして忘れられない香り。
手袋をはめた手にまだ香りの残っている金木犀の花をいっぱい拾い集め、ある人に見せたら その人は私の手に鼻を近づけ「どこからともなく香っていたのはこの花か…なんていう花?」と これだけの話。少女漫画の世界のように少し切ない。
記憶によるとその時手袋をはめていたが気候が少しずつ変わってきているのか、記憶違いか。
今では金木犀の咲く頃そんなに寒くないです。

  母が突然倒れ意識戻らぬまま一週間で亡くなり病院から一緒に帰ってくる時、金木犀の花の香りがはっきりとしていました。
付き添うことも出来ない病室へ一週間朝晩と毎日病院に行っている頃から香り始めていたのかもしれないけど、 あまりのショックでどんどん呼吸が浅くなり日毎に胸が苦しくなっていった私には金木犀の香りを察知出来なかったのかもしれない。
この香りがしてくるとどんなに時間が過ぎようとあの時のことが鮮明に思い出される。
ふたつの記憶は文字にすれば短いけれどあの時にタイムスリップする。
きっとどの人にも忘れられない花の香りの記憶があるのでしょうね。

その金木犀原産地は中国です。雄雌異株です。
しかし日本にあるものはほとんど雄株なので実はなりません。
どんな実がなるのか気になります。
中国に桂花陳酒という金木犀のお酒がありますが白ワインに花を3年間漬けるらしいです。
なんとも美しい。
以前に中東さん(「なかひがし」のご主人)から辛夷(コブシ)の花付きの枝をたくさん頂いた時にホワイトリカー、 氷砂糖で辛夷の花を漬けるとなかなか美味しいお酒が出来ると教えていただき早速に作ってみました。
見ても綺麗、なかなか味わい深いお酒になりました。食前酒に少し飲むのにいい感じです。
花を漬けたお酒は好みは別とし、夢のようです。
蔓梅擬
2018年10月1日



7月は日日さんという素敵なギャラリーで「竹の花かご 榎本千冬」展のお手伝いをさせていただきました。
榎本さんの花かご、ざるに花をあしらうという。
工程を考えると気が遠くなるような繊細な籠から、ざっくりとした籠、ざる。
展覧会の三日目、籠だけを見ていただいてそこからなにげに花をいけていくということをしました。
編みかけのような籠はひと目見て笹で包んだ麩饅頭、竹筒に入った水ようかんが似合う!とイメージは尽きることがありませんでした。
しかし花をいけました。
大きなざるは果物はもちろん、おにぎり、サンドイッチをのせてもいいですし使いみちはいろいろ。
そんなざるに花を(梶の葉)飾るのもいいですよという提案をやってみたりしました。
展覧会はあくまでも籠がメインなので花は本当に少し添える程度に。
1日は榎本さんの籠を使ったワークショップを開催。
参加者みなさんに榎本さんのいろんな籠を使っていけていただきました。
豪雨の後の暑い日で、ある人は特急がまだ走っていない(土砂崩れなどの影響)という丹後から、他にも遠方の方がおみえでした。
谷中の教室では1回のお稽古に1人か2人、それが8人。
凄い熱気の中開催されたワークショップは質問もたくさん出ました。
普段口数の少ない谷中店主はその質問に次々とお答えさせていただきました。
ひといけ後、籠を皆さん交換し2つめをいけていただきました。
ほとんどの方が初めてお会いする方ばかりでしたが花の選び方、いけ方、いけられたのを拝見するとその人となりが出ているようで実に興味深く、面白かったです。
何よりも人にお教えするというのはこちらも再確認することがあったり発見がたくさんあり良い刺激があり、勉強になります。
こういったお手伝いはまた機会があればやっていきたいと思いました。


「都わすれ」…2月末のこと、裏千家学園国際科の方から3月の卒業茶事のお花のご相談を受けました。
希望は11月からずっと椿をいけているので違うものをいけたいと、店頭には早々と都忘れ、小手毬、蔓の付いた豆の花(スイトピーではないのです)、春らしいものが色々ありました。
その中でも都忘れ、小手毬に目がいかれどうしてもこれを使いたいと・・・
お茶の席ではまだ早いし、きっと先生も「都忘れはまだ早いですね」と言われるかもしれませんとお伝えしました。
それでも彼女の都忘れへの思いは強いので、どうして「都わすれ」と名前がついたかを説明しました。
「都を忘れさせてくれるほどの美しさ」とありますが、逆に3月末にはハワイに帰ってしまう彼女にとって京都でのことは忘れられないという解釈もよいのではないかとアドバイスをしました。
「それはいい!そのように説明します!」と言われ学園最後の茶事では一番気にいられたお花をいけられました。
その後、どうだったかは聞いていませんがきっとうまくいったはず。
彼女にとって都忘れの花がきっと忘れられない花になったことは間違いない!そんな気がします。

*鎌倉時代「承久の乱」により佐渡に流刑になった順徳天皇が悲しみに暮れる日々に一輪の花を見つけ  「しばし都を忘れさせてくれるほどの美しさ」と、この花を見て心を慰めたところからつけられた。


例年に比べ京都も6日ほど桜の開花が早く、3月も残すところあと一週間という頃に嬉しい電話をいただきました。
その電話は鎌倉から。
そのお客様の話は花・谷中便り(昔はペーパーで作っていました)にも「椿」というところに書き、ホームページを作るようになってからはその続きのような話をあげていますがその椿の方から。
「25年ぶりにお寺へ親子3人でご挨拶に行くので花束を」ということでした。
25年間全く京都には来られていなかったそうです。
そんなわけで私達は25年振りの再会。
その間電話、年賀状のやり取りはしていましたが...
少し説明をすると大徳寺での結婚式を前日に控えられたお二人から「お寺へご挨拶に行くので花束を作って欲しい」とご注文していただき紅白の椿で花束を作りました。
それから結婚記念日の頃には必ずお寺へ椿の花束のご注文を頂き配達をさせていただいておりました。
当時何かの雑誌に掲載された花・谷中を見て来られたそうですが、嬉しいことにその切り抜きをまだ大事にされていて今回も持参されていました。
それと結婚式の写真も拝見しました。
ご友人の写真家の方が撮られたという写真はいわゆるザ・ブライダル写真ではないのですが素敵でした。
「是非また訪ねてきてくださいね」と次なる再会を楽しみにしながら見送りました。

その当時も超がつくほど格好いい素敵なお二人でしたが25年経った今も素敵でした。お嬢さんも...

こんなことがあると「あ〜お店をやってて良かった!」と元気が出た次第です。

2018年4月1日

「チューリップ祭り3」 Fête de la tulip

寒い毎日ですが季節はもう春。
日もずいぶん長くなりました。
庭の植物を毎日観察しているとどれだけ寒くても小さな春がいっぱい。
都忘れが大きく新芽を出し、木苺が小さな新芽をつけていたり。
里では雪ノ下に蕗の薹が出ているはず。
この時期は1つ2つと春を数えるのが楽しみです。

花・谷中では今年で3回目となる金沢「乗越」企画によるチューリップ祭りを致します。
和の花が多いように思われる花・谷中ですが市場にチューリップが出るようになると大好きでいつも仕入れます。
日本のチューリップ生産は富山、兵庫、新潟です。
チューリップ祭りの時はご縁のある富山県高岡市から100種類以上ある中から原種の球根付チューリップをはじめ30種類ぐらいが店頭に並びます。
毎回見たこともないようなのもやってきます、この機会に是非チューリップの魅力を、お気に入りを探しにいらしてください。
プレゼントにも素敵です。

2018年1月28日




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