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*hide-and-seek*
もういいかーい
遠くから 遠くから声がするような気がする
物陰に隠れて 僕は息をひそめている
昔からよくこうして膝を抱えて隠れた。
体が小さかったから、誰もが想像しえぬところへと
身をすべりこませることができた。
勉強ができたり、スポーツのできる兄弟や幼馴染みに比べ
何事にも劣りがちだった僕が、唯一自慢できる、そして勝つことができること。
…かくれんぼ。
幼い自分にとっては、たったそれだけのことが嬉しかった。
よくねだっては仲間に入れてもらい、身をひそめてその声を待った。
もういいかーい
もういいよー
あちらこちらから声がして 鬼になった者が探しはじめる。
茂みや、木々の影、壁や塀の向こう側。
近付いては遠のく足音に、胸を高鳴らせて。
次々と見つかっていく仲間の中で、自分は最後までいつも
見つからないように上手に隠れていることができた。
そっと目を閉じる。
周りの騒がしさから、自分だけ切り取られたようになって
まるでその場に溶け込んで、透明になったかのようになる。
石ころになる。
木の葉になる。
そうすれば見つからない。
鬼は、自分を見つけることができない。
そうして僕は、隠れていることができる…
目を開くと、アスファルトの冷たい感覚とコンクリートの壁が
視界を埋めていた。
いつのまにか、うたた寝をしていたのか。
手を開くと冷たくなっていた。 物音をたてぬように、ぎゅっと握りしめる。
いったいどのくらいの期間 こうしているんだろう?
未来の自分に問いかけても答えはない。
過去の自分は、ただただ逃げ続け、隠れ続けてきた記憶を残すばかりだ。
犯罪者、という一言は 世の中から隔離されている。
そしてそれはいま自分を含めた1つの単語として成り立っている。
犯罪者と呼ばれて数カ月がたった。
本来の自分を取り戻すことができるかどうか わかりはしない。
それが誤解だとどれだけ説明しても
奴らに罪をかぶせられている自分に、勝ち目はないのだろう。
それが冤罪なのだと どれだけ大声で叫んでも。
自分に出来ることはこうして…逃げ、隠れることだけだと知った。
かくれんぼが得意だった自分が、できることが ただそれだけだと知った。
そっと目を閉じる。
周りの騒がしさから、自分だけ切り取られたようになって
まるでその場に溶け込んで、透明になったかのようになる。
石ころになる。
木の葉になる。
そうすれば見つからない。
鬼は、自分を見つけることができない。
誰にも見つかることはない。
誰も見つけることは出来ない。
ああ そうだ 誰も見つけることが 出来ない。
祈るような気持ちでいる自分に気がつく。
いつの間にか 助けてと思っているような自分に気がつく。
その声を待っている。
ただ自分を導くその声を待っている。
目を閉じて隠れている自分。
息を潜めている自分。
それに誰かが気がついて
いつかようやく、大きな声で言うのだ。
みーつけた!! と。
その声が天使の呼び声なのか 悪魔の手招きか
今の僕に知り得る術はない。
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