*under cover of darkness*

山は静寂…

夜はすべてを闇に染め、溶け込むものの姿を隠す。
風は草木を掠める音で、その足音を紛らわせる。

「全員揃ったか」

暗闇に低い声が届いた。
頷く影の姿が20、暗号を伝えあう足音が40。
雲が呪術に操られるがごとく、月の光を遮って彼らの姿と気配を飲むと
影はいくつかの塊となって離れる。

20の姿 瞳は40。
闇の中でも驚くほど物をとらえることのできる瞳が、2つあった。
2つの目は山の梺に近くに身を潜め、人の話し声と多くの足音、松明の明かりを見た。
獣のように山を走り、そして伝える。
山を通る役人の行列が、用心棒を幾人もつれて、我らが山へとやって来たと。

低い声は頷いて、闇の中を立ち上がる。
役人達が持つ松明、用心棒の剣の鞘の音。
見えたところでその手を高くあげて振り降ろした。

それはまるで傾れて夜をつくる闇のごとく 素早くそして恐怖をつれて。
山の中腹から20人のその姿は、今まさに麓を横切っている役人達の行列へとなだれ込んだ。

地響きのようなその音に顔をあげ、役人達の顔色が変わる。

「出たな…叶生の盗賊共…!!!」

用心棒達が剣をかまえる。盗賊達も武器を抜く。
一瞬の月の光を鋭さに変えて、剣が風を凪ぎ、役人の武器を弾き飛ばした。

「うぐぁッ!!」
「ぎゃああ!!!」

あちらこちらで悲鳴があがる。

「用心棒など何人雇ったところで同じこと…!」

盗賊の低い声が倒れる役人や用心棒達の耳をかすめる。
逃げ惑う役人達、倒れる用心棒達…崩れる馬、奪われる荷物。
ぶつかり合う刀や斧や鎖の金属音の中、盗賊達は右手に左手に荷物を抱えた。

「村や街の奴らから奪った税金だろう?」
「元々お前達のものじゃねぇんだ、奪っても文句は言えなかろう!」

盗賊達の言葉に役人達は歯ぎしりをする。
その中で、この行列のリーダーだろうか?豪華な着物をまとった男が喚いた。

「薄汚ない盗賊共が偉そうに何をほざく!?!」

その男の胸ぐらを、盗賊の大男の一人がものすごい怪力でわしづかみにして宙に浮かせた。

「うぎゃあぁッ!!」

男が手足をじたばたさせているその側に、盗賊の…頭と呼ばれる男が軽蔑した表情で近寄る。
そして睨み上げている…憎悪そのもので。

「ああそうさ、薄汚ねぇ盗賊なんだ。人の獲物盗んでんのさ、禿鷹見たいにな…
 だがな、てめぇらみたいな腹ん中腐りきってる腐れ役人共より よっぽどマシなんだよ…!!」

底冷えするような低い声。 鋭く輝く瞳。 鋭利な眼差し。

「てめぇらを見てると吐き気がする…!!
 偉そうにふんぞり返りやがって、村人街人苦しめて何が役人だ …とっとと何処かへ失せろ…!!」

地面へと叩き落とされ、役人はつぶれた蛙のような声をあげて、打った腹を抱えた。
ふん、と鼻を鳴らすと、盗賊の頭は叫ぶ。

「引き上げろ…!!!」

立ち上がれない役人、用心棒達をあざ笑って盗賊達は山を登っていく。
まるでそれは闇へと溶け込むかのように。

ほとんどの盗賊達が山の木々の間へと消えたところで、盗賊の頭が振り返った。

「帰っててめえらの頭に伝えろ…
 てめえらがどれだけ束になってかかっても 変わりゃしねえってな…」

そのまま頭も夜へと消えていく…

叶生の山を通るものが怯えるもの。

闇から現れる20人の盗賊。

その鮮やかなまでの素早い姿の後には 元の静寂しか残らない…

(SS−29 静寂)

20人の中の頭の名前は痣龍
中にはまだ幼い者もいますが 凄腕の盗賊達。
半分は自分達の取り分にしてしまいますが あと半分は町へと返す半義賊。
叶生の山をお通りの際には 御注意を。

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