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見上げた空は暗くて、雲でおおわれたその下で、俺は学校の屋上にきていた。 …俺のいとこで、3つ、年上で…初恋の人で。 俺が手を伸ばしたら届きそうなところに立ってたけど、でもそれは屋上の縁で。 なんでだろう、いかなくちゃいけないと思って。サっちゃんの手をとって、引っ張らなくちゃって思って 「椎名!!!!!」
ハっとして顔をあげる。 「お前…飛び下りるつもりか」 言いかけて、目を瞬く。 「サっちゃん…? サチさん? 大丈夫か、椎名。サチさんはお前… 1週間前に、もう亡くなっただろ…」
朦朧とする頭の中で、俺は考えていた。 体が急に壊れていく、妙な病が流行りだしてて、大人はバタバタ死んで、もう子どもも半分くらい死んで。
俺達に、時間はなくて。
生き残った子どもが、死ぬまでにやらなくちゃいけないことは、ここにあったものを、ここであったことを
意味なんかない、誰も生き残らないってわかってる。
「ケイゴ? どこいってたんだ?」 「ねえヤイト… ヨリちゃんは…?」 「姉ちゃんは…たぶん、もう…長くないんだと思います。もう…左腕、ない、から」
佐久弥の言葉に対して、兄貴の返答は淡白だった。
「ヤイトとケイゴも手伝えよ。俺は絵の具探してからいくから、さきにホール行ってな」
ホールに立っているオブジェは…羽みたいな形をしていた。 …俺もいつか消えてしまうのに。 『ケイちゃん』
気のせいじゃない、また、確かに耳の奥で、サっちゃんの声がした。
日々は俺達の人数と共に少しずつ、でも確かに減っていく。 サっちゃんの親友で、サっちゃんが死んだ日から口がきけなくなってた日依さんも死んでしまった。
そしてサっちゃんの声は 俺のことを呼んでる。
ホールの隅にしゃがみこんでいた俺のすぐそばの扉が、ふいに鉄の軋む嫌な音を立てて開いて、そこに兄貴が 「……ヨリちゃんが、死んだんだ」
冷たい床、冷たい空気、兄貴の足音は今までにきいたいつのときよりも硬質な音をたてていた。
「…誰もいなくなるって、わかってるはずなのにな」 「誰もいなくなるって、俺の周りからも、誰もいなくなるってわかってたはずなのにな」 はは…って、力なく笑うのが、きこえて。 「変なの… 俺、ヨリちゃんだけは、最後まで一緒にいるような気がしてたよ…」
兄貴のこんな声をきくの初めてだった。 もしかしたら泣いてたかもしれないけど、でも、俺は兄貴の顔を見ること、出来なかった。
兄貴と離れて、誰もいない教室に立って、何もない天井を見上げて、俺の存在。 誰も。 誰も。
俺はふと振り返った。
「佐久弥…?」
階段を駆け上がってた。
そう思ったら俺は階段を上がらないでいられなくて。
サっちゃんの声は何度も、何度も俺を呼んでた。 だけど、それを、必死で引き止めていたものは…何?
「佐久弥ッ!!!」 屋上の扉を勢いよくあげると、佐久弥は屋上に立っていて、俺を振り返った。 「…椎名…」 虚ろ声と、虚ろな空。 優しいサっちゃんの声は、この空の下へくればどんどん俺の中で大きくなっていくのに。 『なのにどうして?』
サっちゃんの声、振り切って、佐久弥の腕を俺が掴もうとしたら、佐久弥の足がふいに、屋上の縁から 「佐久弥ァ!!!!!!」 ギリギリで、あいつの手を掴む。 「どうして手を掴むんだよ」 佐久弥がつぶやいた。 「みんな消えてしまうのに、どうして手を掴むの!! 同じなんだよ!! みんな消えるんだよ!!」 わかってる。 「みんな死んでしまうんだよ!!俺もお前も消えるのに…!!」 わかってる! わかってるけど!!! 「いやだ、死にたくない!!!」 俺の叫んだ言葉と一緒に、涙が佐久弥の頬にかかった。 わかってるんだ、ほんとにわかってるんだ。 『ケイちゃんを引き止めていたもの』
何も残るものなんかない。 いやなんだ。
いやなんだ…!! 「俺……俺…消えたくない…!!!!!!!」
だから……!!!!!!!
「椎名!!」
ハっとして顔をあげる。 「お前、こんなとこで何やってるの? 屋上なんかで寝転んで」 「…え?」 体をおこして見渡したら、そこは、屋上で。
ゆ… め… ?
「授業はじまるぞ? 探したらこんなとこで寝転がってるし…死んでるのかと思ったよ、まったく」 「お、俺、ここにいるよな? 生きて…」 生きて… て…
「…何言ってるの?」 そう言って、俺の手を離して階段を降りていく。
夢…
夢オチなんて、こんな、格好わるいことない。 そう思いながら立ち上がって、屋上を見渡したけど、それはもちろんいつもの当たり前の風景で。 ……全部……
俺は屋上を降りようと、階段へ続く扉の取っ手に手をかけた。 サっちゃんの笑顔が見たいなと思った。
ここを開いたら俺は現実の世界へ戻って、みんないる。 そうわかってるはずなのに、どうして? 俺はこの扉を開くのが、おかしなくらい、怖いまま。
『消えたくない』 と 思った。 |
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でも一気に書き上げることができたのは、なんでだろう…。 彼をあのまま終わらせたくなかったから、と言い訳しておくことに致します…(何 |