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稲城中央公園のキンラン保全活動


稲城中央公園では、継続的に雑木林を手入れしてきたことにより、貴重植物のキンランが多数再生した。この公園を管理している公園管理者の了解と協力をいただき、2005年から保護活動を開始しました。

2014年には、キンラン約433株、ギンラン39株、ササバギンラン43株が確認できました。キンランをより身近に観察できるキンラン観察路もできた。

これまでのキンラン保全活動の経緯と今後の活動を考えてみたいと思います。


  1. 1.中央公園の現状


稲城市の中央公園は、1991年、稲城市の基幹公園として開園しました。

多摩ニュータウン地区の丘陵地を開発して作られた総合公園で、雑木林を含む緑地エリアの面積は、15ヘクタールの広さがあり、体育館、グラウンド、ランニングロード、そして遊歩道が整備されています。

公園は公益財団法人いなぎグリーンウェルネス財団(以下公園管理者という)が稲城市の指定管理者になって管理を行っています。


2. キンランの再生と保全活動に至った経過


1)中央公園では自然の遊びを中心とした行事が行われていました。

公園管理者では、市民の健康を図ることを目的に、ネイチャーゲームを中心とした行事を2001年から2006年まで行われていました。


2)キンランが突然再生した

2003年頃から、施設の手で雑木林の隅々に手入れが行われるようになりました。

2005年に、手入れした場所から突然キンランが再生しました。


アズマネザサなどの植物の間で、細々と生きていたキンランが、林の手入れによって日当たりがよくなったため再生したものと思われます。


3. キンランが再生した価値を考える


キンランは、根に固有の菌根をつくって、その菌から栄養を得ていると言われているので、盗掘して自分の庭や鉢に移植しても、やがて枯れてしまうことになります。


1960年代に、多摩ニュータウンの住宅開発事業が始まり、多摩丘陵からキンランが見られなくなりました。

雑木林の宅地化、雑木林の放置、盗掘などから、全国的にキンランは減少し、絶滅が危惧されています。1997年の環境庁レッドリストには、絶滅の危険が増大している種(=絶滅危惧㈼類)に掲載されています。


キンランが生育する価値として、次のようなことがあげられます。


イ,希少植物としての価値----キンランは、絶滅が危惧される希少植物

 になっている。

ロ.精神的な価値---花が咲いている姿を見て人々に安らぎを与えてく

 れる。

ハ,固有の価値—中央公園にもともと生えていたものである。


キンランは、このようにさまざまな価値があるだけでなく、キンランを題材にして、雑木林の保全活動や生物の多様性について学んだり、体験的に環境を学ぶことができるので、貴重な学習資源としての価値も考えられます。


4. キンランの盗掘から守るための保全活動を開始


キンランが再生して花が咲き始めた直後から、キンランが盗掘されるようになったため、2005年からキンランの保全活動を始めました。

最初は一人で、約30株のキンランと3株のギンランの株の根元に、保護を表示したタグを取り付け、3本の竹で囲って保護をしました。

公園管理者の主催行事に参加してくれた家族に、キンラン保護を呼びかけ、施設からも職員3名の応援を出していただきました。


2008年3月に施設者の手で遊歩道を作っていただきました。5月3月には、キンランの観察会が開催されました。

2005年から保全活動を開始し、9年後の2014年には、キンラン約433株、ギンラン39株、ササバギンラン43株が確認できました。     


                      <キンラン(青)とギンラン(緑)の個体数の推移>






















5. キンランの持続に向けて


1)キンランの価値を地域の人たちに伝えていく

キンランを継続的に保全していくためには、公園管理者によるキンラン観察会を続けていき、中央公園にキンランが自生していることの価値を伝えたり、キンランの花をみんなで楽しむことの大切さを地域の人たちに伝えていく必要があると思われます。


2)次の世代に伝えていく

地域の学校や幼稚園に働きかけて、キンランの保全活動を次の世代に伝えていく必要があると思われます。

キンラン保全活動