異聞録


-転がってきたタイヤ-
ときどき車で通る国道のあの場所……
以前、夜に通りかかったとき、視界の片隅に、すごい勢いで転がってくる真っ黒な塊が見えた。
自動車のタイヤのように思えたそれは、道路を横切って私が運転する車のボディに激突した。
あっという間の出来事で、避けようもなかった。たしかな衝撃があった。
慌てて車を路肩に停め、損傷のほどを調べてみたが、ボディのどこもへこんでおらず、傷ひとつない。
辺りにタイヤらしきものも見あたらなかった。

先日また、こんどは昼間通りかかると、毛のふさふさした黒い塊が視界の隅に一瞬映った。



-未解決-
昔、女児二人が行方不明になった。
二人が通っていた小学校のトイレの汚物用タンク内で遺体が発見された。
犯人はまだ捕まっていない。



-音楽室の明かり-
ある学校の音楽室は夜になるとひとりでに明かりが灯る。
宿直の職員が照明のスイッチを切っても、巡回するたびに明かりが灯っている。



-わんわん-
車に撥ねられて死んだ野良犬を不憫に思い、埋葬してやった人がいる。
後にその人の奥さんが妊娠・出産したが、赤ん坊の産声は嬉しそうな「わんわん!」
その人は激しく怒って犬の墓を掘り返した。



-目撃その1-
子供の頃、友人が夜中に我が家の屋根の上を漂う火の玉を見ている。


-目撃その2-
二十歳の頃、近所の幼なじみと一緒に、鋭角に曲がって飛び去る“流れ星”を見た。


-目撃その3-
従兄弟は、昔、夕焼け空を火の鳥が飛んでいるのを見たと言って譲らない。


-黄金色の光-
母が近所の人と語らっていたとき、その人の傍らに忽然と光が現れた。
黄金色に輝く美しい光だったという。
脳腫瘍を心配して病院でMRI検査をしてもらったが、異常なしの診断だった。



-318-
大学生のとき、入院した祖父の病室でお迎えの人を見た。
あぐらをかいて座る四人の人影であり、まばゆく輝く光でもあった。
「313もしくは318」の数字が心に浮かんだ。祖父は午後3時18分に息を引き取った。



-産湯-
昔は田畑のあちこちに肥溜めがあった。ときどき子供が落っこちて糞尿にまみれていた。
生まれてすぐに落ちた赤ん坊もいる。
農作業中に便意をもよおした臨月の母親が、肥溜めの上で力んだ拍子に出産してしまったのだ。



-苦い味-
子供の頃に我が家では乳牛を飼っていた。乾いた牛の糞の破片は黒砂糖に似ている。
祖父は一度、牛の糞を黒砂糖と間違えたことがある。地面に落とした黒砂糖と思い込み、孫のおやつに混ぜて出した。
世界広しといえども、牛の糞を味わった経験者は、この私一人だろう。



-罰当たり-
修学旅行で寺の仏像に悪戯して小便をかけた男子生徒がいた。翌日、彼のちんちんが腫れて痛くなった。
男子生徒は引率の先生に打ち明けて仏像に謝り、それでようやく腫れがひいたという。



-花嫁さん-
我が家の天井裏に棲みついているネズミのことを話すとき、母は「花嫁さん」と呼ぶ。
「ネズミ」と言うと、それを耳にしたネズミが自分の悪口だと思い、腹を立てて悪さをするそうだ。
茶の間の天井に開けられた穴はそのせいらしい。



-家ネズミ-
従兄弟の家に出没する子ネズミは、人のいる部屋を堂々と徘徊し、人が近づいても逃げない。
飼われていると思い込んでいるようだ。



-土左衛門-
祖父は溜め池のなかに泳いでいって、入水した人の遺体を引き上げたことがある。


-キャトルミューティレーション-
近所の家で飼っていたニワトリが、キツネかタヌキに襲われた。
鶏小屋の金網を破って忍び込んだそいつは、ニワトリの尻の穴から内蔵と血を吸い取ったとのこと。
アメリカの牧場で起きた事件、牛の内臓が肛門から抜き取られる“キャトルミューティレーション”のようだ。
キツネかタヌキだろうと推測されている正体不明の犯人は、まさか宇宙人……。





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