豊徳園おとぎ村オリジナル童話

馬とり天狗

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     第2話  ・・・・・  果て無しお洞(はてなしおどう)


 ところがそれから3日もたたんある朝のことじゃ。

傳兵衛さんが、馬小屋へあさめしをやろうと思っていってみると、

馬がおらんようになっちょる。

「やられた。天狗さまに見られたんじゃ。夜のあいだにつれていかれた。」

傳兵衛さんはあわてた。

しかし、すぐにあの「果て無しお洞」が頭にうかんだ。

いうことをきかん馬じゃけど傳兵衛さんにとってはだいじな馬じゃ。

傳兵衛さんはとるものもとらずに「果て無しお洞」へ走っていった。

そしてほらあなの奥の方にむかって、

「天狗さまや、おらのだいじなあおをかえしてくれ。

いまはいうことをきかんけど、けっしてわるい馬じゃあないんじゃ。

おらの気持ちがまだあおにはわからんのじゃ。

おらがちゃんとしたええ馬にするけえ、かえしてくれ。

あおがわるいんじゃあないんだ。おらがわるいんじゃ。

あおはかんべんしてやってくれ。」

と泣き出しそうな顔でさけびつづけた。

傳兵衛さんはそれから毎日あさ、ひる、ばんと馬のえさや水をはこんできては

ほらあなの前において、

「天狗さま。これをあおへやってくれ。

くうもんなかったらあおさ力がつかんけえ。

水をのまんと、病気になるけえ。」

とたのむのじゃった。

それがの、ふしぎなことに、

次に傳兵衛さんが来るときには、そのえさや水がなくなっているのじゃ。

それをみて傳兵衛さんは、

「天狗さまはおらのいうこときいてくれる。

天狗さまはおらの馬、かならずかえしてくれる。」

と信じちょった。

 さて、それから何日かがすぎた日のことじゃ。

その日もひよりのええ朝じゃった。

きのうの朝とおんなじように傳兵衛さんがえさと水おけをもって

「果て無しお洞」の前に来てみると、

ほらあなの奥の方で何か動くけはいがするじゃないか。

傳兵衛さんはびっくりした。はじめは天狗さまかもしれんとおもったが、

すぐにこりゃああおじゃとわかった。

天狗さまはやっぱり馬をかえしてくれるんだ。

あおかい。あおじゃろう。でておいで。おらといっしょに田んぼさ行こう。」

ほらあなの奥の方へ声をかけてみた。

するとほらあなの奥の方からヒヒーンと元気ないななきが聞こえ、

やがてぱかーん、ぱかーんとひずめの音がほらあなにひびきながら近づいてきた。

馬がほらあなの奥から出てきた。

傳兵衛さんは喜んだのなんの。

馬の首にだきつくは、ほおずりをするは、馬のまわりをはねてまわるは、

それはそれはうれしそうじゃった。


  (つづく    次回をお楽しみに)