豊徳園おとぎ村オリジナル童話
第3話 ・・・・・ お礼参り
その後、馬は傳兵衛さんのいうことをよくきき、実によくはたらくようになった。
傳兵衛さんも馬をとてもたいせつにした。
傳兵衛さんと馬は見事に気が合った仕事っぷりで、
米や野菜がよその家の2倍も3倍もできるようになったんじゃ。
その米や野菜を馬車に積んで町へ売りに行くと、これがまた、よう売れてな、
傳兵衛さんはみるみるうちに大金持ちになった。
りっぱな家も建て、村一番の器量よしの嫁さんももらった。
げんきな子供にも恵まれ、幸せな毎日を過ごすようになったんじゃ。
傳兵衛さんはある日、丘の上の天狗岩へお礼に出かけた。
「それもこれも天狗様のおかげじゃ。
天狗様があおを果て無しお洞であんなにりっぱにして、
おらさにかえしてくれたおかげじゃ。」
天狗岩に向かって、傳兵衛さんは手をあわせてこうお礼を言った。
ところが、これをたまたま通りかかった村一番のなまけもの権作が
天狗岩のうらで聞いちょった。
「よし。おらもどこからか安い馬を探してきて、
天狗様にしっかりかせぐ馬にしてもらおう。
そして、おらも金持ちになっちゃろう。」
と悪知恵をはたらかした。
早速、権作は町へ出かけ、できるだけ安い馬をとさがしまわった。
なん頭か目に、やせ細った馬を見つけた。
力がなさそうじゃとか、毛の色つやが悪いとか、いくつかのけちをつけたあげく、
「こんな馬じゃあ売れりゃあせんじゃろうが。おれが買っちゃるけえ安くせえや。」
とむりやりに値切った。
権作はそのやせ馬を村へつれて帰るやいなや、
「天狗様。後はよろしゅうたのんまっせ。」
と、馬をあの「果て無しお洞」へむりやりおしこんでしまった。
「どうせやせ馬じゃ。2、3日食わんでも、もうこれ以上やせりゃあせん。」
と言って、えさも水もやらんでさっさと帰ってしもうた。
それからも、権作はたまあにやってきて、
「天狗様。まだかいの。もうぼちぼち馬を返してくれんかいの。
傳兵衛のところの馬のように、よう金をかせぐ馬にしてから返してくれんさいよ。
ええかの。」
と、ほらあなの奥の方に向かって、勝手なお願いをしちょった。
しかし、あいかわらず、えさ一束、水一杯持ってくるわけじゃあなかった。
(つづく 次回をお楽しみに)