Podcast 山川浩一のスタンダードジャズ入門 補足情報 放送リスト
第81回 Fine and Mellow ゲスト米原さん 1940 広瀬麻美

第81回は、1940年のビリー・ホリディーの自作自演のヒット曲「Fine and Mellow」を紹介します。
http://www.youtube.com/watch?v=_tNSp7MaADM


村尾陸男先生のジャズ詩大全によると、この曲は、ミルト・ケイプラー(Milt Gabler)というレコード店主兼プロデューサーがコモドアという自分のレーベルのために、手を入れて、一味違ったブルースになったということです。

High-drape pants, stripes are really yellow, make me really mellow

などのフレーズと一部のメロディは、彼の発案によるものなだそうです。彼はとてもナイスガイで、ビリーのことを思い、クレジットの作詞・作曲に、自分の名前を入れなかったのだそうです。レコードの印税で大もうけできたはずですから、大変な美談なそうです。

面白いことに、レコードのA面が、放送禁止になった黒人差別を扱った名曲「Strange Fruit」で、B面がこの「Fine and Mellow」。
放送禁止のA面と異なり、B面のこの曲はジュークボックスで、がんがんかかり、大ヒットしたそうです。


歌詞大意です。


あの人は、私を愛してなんかいない。
とにかく冷たい男。
あの人は、私を愛してなんかいない。
いままで見たことのない最低の男。

派手な黄色の縞模様のシャツやズボンを着ている。

だけど、ひとたび、愛の営みを交えると最高の男なの。
愛し方が抜群で、優しくて、溶けてゆくみたい。


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ここで、米原さん、ビリーやこの曲にコメントをお願いします。
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Fine And Mellow は、まさに媚薬。
女性の率直さ、正直さ、コケティッシュ、が表現され、テーマが生々しいわりに、いやらしくない。
日本人にとっては、ジャズは、非日常性、アメリカ文化。

いいジャズ歌かどうかの判定のリトマス試験紙がある。
聞いた後に、
「情事をしたくなるかどうか」
「抱きたくなる」
「抱かれたくなる」
かどうかで、判定できるのだ。

二つ目のジャズの原則とは?
「ジャズに正解、答えはない。(何でもあり、自由だ)」
「名曲より、名演奏が、上である」
クラシックは、should be こうすべきだというところがある。
ジャズは、そこが違う。
As Is 今、どういう感性で、プレイしているか、聴いているかが大事。

コールポータを例にするとクラシックなら、コーポータ作曲作品32番ト単調、となるが、
ジャズなら、単純に、Night And Day だ。どうにでも解釈できる。

正木まどかも自由さ、奔放さ、を当然、持っている。
感じたものは、そのまま、受け入れて、理屈抜きで好きになること。

ジャズを聴いて、好色な気分になれなくても、幸せ、癒された、たおやか、ロマンチックな気分になることができればいいのである。

正木まどかのライブでは、セクシーな容姿も含めて、上記のジャズの要素が全て楽しめるのである。


どうして、ジャズには、女の正直な歌詞が多いのか?

男はかっこつけ。やせ我慢。ふられることになれている。女性は、一度、好きになると執着する。嫌よ嫌よと言っているのが本当は大好きだったりする。

Fine And Mellow も最初に最低の男と言っているが、実は、それは、ほめ言葉である。
馬鹿でシンプルな男だけど、好きだ。これが人間の真実。

こういう風に、ストレートに生きられればすばらしいよね。日本人は農耕文化でシャイでダメだめだけど、欧米人は、道端、キスしまくっているでしょう?(正木まどかは、道端で、キスしまくるタイプではなか?)

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では、広瀬麻美さんの歌で、お聞きください。「Fine and Mellow」
https://www.youtube.com/watch?v=KpmhYPgbgxc

 


山川浩一
http://www14.plala.or.jp/inu789/yama/
広瀬麻美
http://www14.plala.or.jp/inu789/yama/hirose-cd.htm
正木まどか
http://www.madocamasaki.com/
高井健
http://www.geocities.jp/onhermajesty_s/



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