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川上回新堂薬局
千葉県鴨川市南小町772−3







漢方の考え方




漢方とは   

漢方という言葉は日本独特のものです。中国から伝わり日本で発展して定着した医学を総
称して漢方と呼んでいます。江戸時代中期にいたって、日本人にもっとも適した医学として
完成しました。鍼や灸そして養生法なども含んでいました。現在は西洋医学に対して東洋
医学と呼ばれ、通常、漢方といえば薬物療法の事を指します。

 本来の意味は、江戸末期から明治初期にかけて蘭方(らんぽう)とよばれた西洋医学の
オランダ医学と対照区別するために使われたことばです。



原料について

 漢方薬は何種類かの薬草を一定の基準に従って配合します。ですからそのうち一つが
欠けても薬の働きは変わってしまいます。生薬はニンジン、トウキなどの国産のものもあり
ますが、ケイヒ、カンゾウなど多くの生薬は中国をはじめとする外国から輸入されています。


漢方薬と民間薬のちがい

 薬物治療が漢方ということになりますと、民間薬も漢方ということになりますが、大きな違
いがあります。
  その一つは、漢方は数種類の生薬を合わせて用います。処方は原典である医学書に一
定の名称が記載されています。民間薬の場合ですと、ゲンノショウコが胃腸病によいなど
と民間伝承による場合が多く、大てい一種類の薬草です。また「OO湯」という名前もありま
せん。
  二つめは、民間薬は単一の病名や症状を対象に薬を用いますが、漢方の場合はいくつ
かの症状群を対象にして薬を選定します。



漢方の原典は今から約二千年前のもの

  今から約二千年前、張仲景という人が、一族を急性熱病で半数以上失い、よい薬はない
ものかと各地に伝わる漢方処方を研究、編纂し、急性熱病を中心とした書物「傷寒論」、
慢性病及び食養を中心とした「金匱要略」を著わしました。
  漢方が日本にもたらされたのは奈良朝以前にさかのぼります。たとえば鑑真和尚は仏
教の戒律のほか多くの医薬品を持って来たといいますし、正倉院には貴重な古いクスリが
保存されています。その後、鎌倉、室町時代には金元医学が留学僧などによって伝わり、
徳川時代には先の「傷寒論」、「金匱要略」に基づく古方派漢方が日本では盛んになり、わ
が国で独特の発展をしてきました。



人間の経験が出発点

  新薬はまず動物などで、有効性、安全性を確かめたうえで、特定の人を対象に臨床試
験が行われます。
 漢方はそれとは反対に人体の臨床治験から出発しています。二千年の人体実験の積み
重ねでした。それだけに、漢方医学は、貴重なデータの積み重ねがあったと思います。

 科学が発達してなかった時代にはやむを得なかったことで、科学的検定とか、多数例に
よる臨床試験などはこれから手がけなければならないでしょう。



「薬は毒」という考え方

  それだけに漢方では薬の用い方には慎重でした。
 「薬は毒である。偏ったものである」という考え方を基本に、有効な作用だけでなく、有害
な作用を重視し、いろんな性質の生薬を処方として配合し、さらに用いるときにはそれに
適応した体質、症状の人に用いるなど、なるべく身体に有害な作用が出て来ない方法を
追求してきました。



漢方生薬の使用量

 生薬の使用量についてですが、今中国や香港、台湾から比べると、同名の処方で、日
本の二倍から数倍の生薬が一日量として使われています。日本の漢方医学は、日本人の
体質・体格また風土に沿った最適量を見つけました。少ない量で効いてくれれば、当然、
毒(?)は減ります。



解明される生薬の成分と作用

  近年、有機科学や薬理学の進歩に伴い生薬の研究は進んでおります。たとえば、ニン
ジン、カンゾウ、サイコなど重要な生薬の成分や薬理作用について逐次、実験や研究によ
って解明されてきています。




五官にたよった診断

  体温計、レントゲンや血圧計などのない昔はどのようにして治療していたのでしょうか。
それは五官である目で視、耳で聴き、鼻で嗅ぎ、口で質問し、手で触れてシコリとか脈とか
を診て、病気の進行状況や症状、体質の強弱、病気の位置や性質などを総合的に判断し
て薬を選定していました。
  これらを望診(目)、聞診(耳、鼻)、問診(口)、切診(手)といい、また四診ともいいます。さし
づめレントゲンは望診の延長線でありましょうし、血圧計は切診、聴診器は聞診ということ
になりましょう。



病名よリも病人の訴えが重要

  現代医学ではまず検査をして、そして病名がつけられ、そして治療という順序になりま
すが、江戸時代では検査の機械や器具、まして試薬もなかった時代ですから、病名を決め
るというよりも病人の訴えの自覚症状や他覚症状を総合的にとらえて、漢方薬を選定し治
療していました。

  一例としてご紹介しますと、神経症の方で、胃弱の傾向があり、咽喉部から胸元にかけ
て痞塞感を訴えるとき、現代医学のテクノロジーでいろいろ検査しても異常は見つからない
ことがあります。こんなとき、半夏厚朴湯という薬方を服用してもらい、喜ばれる場合が多く
あります。このように病気らしくない病気に漢方が力を発揮する場合も少なくありません。(
この状態を漢方で梅核気といいます)







               









水  毒 と は

 古代のはじめの頃、人の身体は、気(き)と血(けつ)の2種類によって成り立つと、考えられ
ていましたが、やがて血以外に 水様物があることに気づき、血と水を区別するようになりまし
た。
 西洋医学的には「水(すい)」とは体液、各種の分泌液、排泄物、参出液や食事や飲料の水
も含まれていて、体の中の水分全てを「水」といいます。
 
 身体の内の、60〜70%は水分なのだから身体全体の水分の変化は即、身体に変態・変
調を及ぼします。
 この水分の変態や変調により起こった病気を、「水毒」といいます。漢方ではこの「水毒」と
いう言葉は、病因として用いる場合と、水毒による病的変化を表現する場合の二つの意味を
もちます。

 古人は「怪病は痰として治療せよ」といって「難しい不可解な病は、水毒を疑え・・」と教えてく
れています。

 漢方では、「水」のことを、「痰」とか「飲」ともいいます。
この「痰」というのは、体液や分泌液が正常であれば身体は健康でありますが、わざわざ病的
な水の状態を表すために、「痰」と言ったのだと思われます。
 「痰」は、すなわち、たん、ぜんそく、淡に通じ、
 「淡」は、すなわち、あわい、うすい、水のさま、たん、に通じます。
 「痰」は「淡」に通じるので、水の意味も含まれます。
次に「飲」とは、人間の体は主として飲み水から水分を摂取されるという考えから、水の病変
により起こる表現になり、時に「水飲」ともいいます。また、生理的な体液を「津液(しんえき)」
といいます。

 さらに金匱要略(漢方の基本の原典のひとつです)では、水毒症状を、痰飲(たんいん。現
在の胃下垂など)、懸飲(けんいん。水毒が胸に溜滞して肺炎等をおこしたもの)、溢飲(いつ
いん。水毒が四肢に流れ、水腫を起こしたもの)、支飲(しいん。水毒が心下部にあり呼吸困
難等を起こしたもの)、伏飲(ふくいん。水毒が潜伏して発見されにくいもので、病状や脈状、
腹状等により水毒を知り得るもの)等に区別しています。
                                                           
 経験的に同一患者に幼年期から高齢になるまで、一連の水毒症状を発するようです。これ
はどうも一種の水毒体質あるいは水毒準備体質らしきものがあり、そういう方が病気に罹患
すると、一連の水毒の症状を呈します。例えば慢性腎炎の方の既往症を聞いてみると、蕁麻
疹、湿疹、胃弱(アートニー)、気管支喘息等で悩まされていたとか、カゼをひくたびに気管支
炎や喘息が出て困ったとか、カゼが引き金になり、アレルギー性鼻炎が悪化した・・等です。



水毒の病因

 @体液の性状変化による自家中毒。
 A体の組織に浸潤して、組織の機能を減弱し、また組織を膨化弛緩させて細菌の進入や
増殖を助ける。
 B組織液の停滞による物理作用によって諸臓器を圧迫する。
 C間脳、脳下垂体付近の変化によるもの(藤平健)
 D血液の性状の化学的変化は同時に体液にも影響を及ぼす。



水毒の病的変化(起こる症状)

 @むくみ(浮腫)。胃内停水(腹水音ともいい、みぞおち付近でチャプチャップ音がする)腹中
雷鳴(お腹でゴロゴロ音がする)。
 A自覚症状として心機亢進(心臓部の動悸)、腹部の動悸、呼吸困難(いきぎれ)、咳、喘鳴
(せきこんで咽がゴロゴロ鳴る)、身体倦怠(からだがだるい)、便秘、悪心(むかつき)、嘔
吐、下痢、冷え性、眩暈(めまい)、耳鳴り、頭重、頭痛、各種の疼痛(関節痛、胸痛、神経痛
など)、振戦(ふるえ)、痙攣(ひきつけ)など。
 B分泌障害として唾液や涙の分泌過多、喀痰、多汗、無汗、口渇(くちがかわく)、または水
を飲むことを嫌う傾向。
 C排尿状態の異常として、尿の回数または量の増減。
 D病的な滲出液の分泌。
 以上の症状を、「表・裏」と「上・中・下」に分けると
 「表」→ 汗、浮腫、関節痛、神経痛、蟻走感(ぎそうかん)。
 「裏」→ 痰、喘、胸痛など。
 「上」→ 頭痛、頭重、めまい、耳鳴り など。
 「中」→ 心下部の振水音、心下堅い、便の硬軟など。
 「下」→ 尿量の増減など。



 水毒により起こる病気

 @胃下垂、胃アートニー、胃腸カタル。
 A気管支炎、気管支喘息、肺炎、湿性の肋膜炎。
 B心臓病、常習頭痛、鼻炎。
 C結膜炎、角膜炎、網膜炎、視神経炎。
 D神経症、ヒステリー、ノイローゼ様疾患、リウマチ、神経痛。
 E腎臓病、膀胱疾患、湿疹、蕁麻疹。
 F関節リウマチ、糖尿病、脚気、妊娠悪阻、更年期の不調等(血の道等)。
 

 

 
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