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インフルエンザと風邪症候群


■概要:
インフルエンザとはオルトミクソウイルス科orthomyxoviridae のインフルエンザウイルスの感染により引き起こされる疾患でA、B、Cの型があり、どれも冬期に流行します。A、B型は小児から老年者まで感染しますが、C型は乳幼児に感染する特徴があります。
現在ヒトに感染するインフルエンザはA香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)、B型の3種類です。

A型インフルエンザウイルスは強い伝播性(でんぱんせい)がある為、 一度流行ると広域に広まります。 特にウイルス粒子表面の赤血球凝集素であるHAタンパク質 (ヘムアグルチニン・ノイラミニダーゼhemagglutinin neuraminidase protein)と NAタンパク質(ノイラミダーゼ)シフトshift(不連続的かつ突発的な異変)が生じると、従来の型と全く異なる新型インフルエンザとして現われますから、対応にも困難が生じ、世界的な流行となりえます。

B型インフルエンザウイルスでもHA及びNAタンパク質による ドリフトdrift(シフトに対して連続的な異変) が認められますが、A型に比べて流行の規模は小さいものです。 C型ウイルスの場合は単発的なもので流行はしません。 尚、A型の特徴はヒトウイルスとトリウイルス遺伝子交雑を起こすことによって、新しいHA、及びNAを 持ったウイルスが新型のウイルスとして出現することとして知られています。



■症状:
インフルエンザも風邪の一種で、これにはいわゆる風邪症候群 (上気道粘膜の急性カタル性炎症の総称)の典型的症状である鼻や咽喉の痛みや炎症、微熱程度の病変から全身性の症状を伴うインフルエンザまで様々な病型があります。

くしゃみ、鼻水などの飛沫により感染し、2~3日の潜伏期間を経て発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感に留まらず、腹痛、嘔吐、下痢もしばしば起こり、また鼻汁、咳などの呼吸器症状も現われます。 回復するのに5~7日程要しますが、その期間の症状はかなりきついもので単なる風邪の症状とは一線を画し、相当の体力を消耗しますし、幼児や老年者では死亡することが稀にあります。 またインフルエンザ菌とはウイルスと混合感染したヘモウイルス属のグラム陰性桿菌 (いんせいかんきん)です。

鼻風邪はライノウイルス、RSウイルス、コロナウイルスがあり、のど風邪はアデノウイルス、 コクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルス、気管支風邪はアデノウイルス、 パラインフルエンザウイルスの他、マイコプラズマやクラミジアが起こしやすいとされています。



風邪症候群の治療薬:
発熱に:
アセトアミノフェン(ピリナジン末) 1回300-500mg 頓用(1日 2回まで)
(インダシンカプセル25mg) 1回 1カプセル 頓用(1日2回まで)
塩酸チアラミド(ソランタール錠100mg) 1回 1錠 頓用(1日 2回まで)

鼻閉・鼻汁・くしゃみに:
マレイン酸クロルフェニラミン(ポララミン錠2mg) 1回 1錠 頓用(1日 1-4回)
フマル酸クレマスチン(タベジール 1mg) 2錠 分2

咳嗽(がいそう:せき)に(喀痰がある場合は痰の吐き出しが不具合になるため、なるべく使用しないこと):
臭化水素酸デキストロメトルファン(メジコン錠15mg) 3-6錠 分3

咽頭痛に:
イソジンガーグル 1日数回 うがい薬

細菌感染がある場合:
クラリスロマイシン(クラリス錠200mg) 2錠 分2
レボフロキサシン(クラビット錠100mg) 3錠 分3





インフルエンザ中耳炎


インフルエンザ中耳炎とはインフルエンザの発症と同時か、遅ければ2週間後に発病するもので、 外耳道や鼓膜上に水泡形成(水泡性中耳炎myringitis bullosa) 、充血、出血を起こし中耳腔にも血清の貯留液を認めることもあり、、また 感音難聴を併発する場合もあります。尚難聴は感音性と伝音性に分類されていて、 感音難聴は主に内耳の障害で伝音は外耳及び中耳の障害と考えてよいでしょう。
日本の例として1995年に急性中耳炎876例中17例がインフルエンザ中耳炎が 認められました。そのうちの4例にA型インフルエンザウイルスを分離した報告があります。

インフルエンザ中耳炎の治療薬の一例ではセフトリアキソンナトリウムceftriaxone sodium(商品名:ロセフィン静注用0.5g・中外:セフィローム静注用0.5g・日医工、マルコ:リアソフィン静注用0.5g・むぎしま漢方など)を用います。この薬の半減期が8時間と長く、一日一回の投与にも適した薬です。

インフルエンザはかぜ症候群の代表的なものですが、急激な発熱、咳、咽頭痛などの上気道感染による炎症が特徴的なものです。 しかしそれだけの範囲の症状では別のウイルスのかぜ症候群か他の疾患の初期症状なのか区別が容易につくわけではありません。 それで流行状況や発熱を伴う特徴的な症状からインフルエンザとして疑われるものを総括してインフルエンザ様疾患と称しています。





インフルエンザHAワクチン・ドリフト・シフト


インフルエンザワクチンとは毎年冬に流行するものを予防する目的で製造、接種されるもので、 ウイルスに対する抗体価を高めることにより罹患率を低下(絶対に罹らなくなるのではい) することを目標にして皮下注射hypodermic medicationの形でなされています。
日本では不活化全ウイルス粒子ではなく、ウイルスをエーテル処理したものをHAなどが含まれるタンパク質から出来たインフルエンザHAワクチンが用いられています。

ワクチンの早期生産や貯蔵が出来ないのは、A 型ウイルスの表面には 赤血球凝集素・HAの亜型が15種、ノイラミダーゼ・NAの亜型が9種あり、 それらの組み合わせ方で常に新種のウイルスが生まれているからです。
またこれら新種の生まれ方のひとつに連続変異:ドリフトがあり、連続的,継続的に異変してゆくもので、連続抗原変異もしくは小異変を起こすタイプのものと、 不連続変異:シフトと呼ばれる不連続的で突発的な異変によるもので、不連続抗原変異もしくは大異変とも呼ばれ、これが数年から数十年を経て唐突的に現われるために予測が付きにくく対処が遅れるため、大流行する危険性があります。

ワクチンの接種(皮下注射):
成人においては0.5mLを1回。もしくは、免疫効果確認後出来れば4週間後にもう1回。
次に該当する場合などは接種が出来ない事もありますので、 自分の症状や健康状態を医師にはっきり伝えなくてはなりません。

●ワクチン接種に不適合な場合:
現在発熱があったり、急性疾患的症状が出たり、心臓や他の臓器に疾患が有る。
鶏卵、鶏肉、など鶏食品でアレルギーがあったり、その可能性がある。
前回の予防接種で2日以内に発熱や発疹が出た。
痙攣が時々起きる。気管支喘息である。免疫不全の診断がなされた。


日英対語:
インフルエンザ:influenza   ウイルス:viruses   感染:infection   インフルエンザ中耳炎:influenza otitismedia   
インフルエンザ様疾患:influenza-like disease   インフルエンザ菌:Haemophilus influenzae   風邪症候群:cold syndrome
グラム陰性桿菌:gram-negative coccal infection
インフルエンザ:influenza ワクチン:vaccines   ドリフト:antigenic drift    シフト:antigenic shift
ウイルス:viruses   皮下注射:hypodermic medication   蛋白質:protein
   





ラピアクタ:抗インフルエンザウイルス剤


■概要:
●ペラミビル水和物でありノイラミニダーゼ阻害薬として作用する
ペラミビル水和物からなるラピアクタ(販売商品名)は塩野義製薬が世界に先駆けてインフルエンザ販売治療薬として 2010年1月13日付けで厚生労働省から正式な承認を得たものです(成人適応のみ)。 それまでは米国にてBio Cryst社(バイオクリスト社)によるペラミビル水和物を緊急措置的に 使用許可がおりていたに過ぎませんでした。 それで純国産とは言えませんが準国産としての新薬となります。

更に2010年10月29日に塩野義製薬はラピアクタ(点滴用)の小児への適応追加の承認を取得しました。

ラピアクタはノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)阻害剤としての働きにより、細胞内で増殖した インフルエンザ・ウイルスが更にその細胞外に出て増殖するのを阻害することが出来ます。



■効果及び用法:
●経口投与が出来ない場合に点滴静注が功を奏する ラピアクタはA型またはB型インフルエンザ・ウイルス感染症の治療に効果があり、当初成人の 単回点滴静注および症状に応じて連日反復投与するものとして使用されています。 またタミフル耐性例にも効果が得られます。

●効果や副作用に関しては未知の部分が多い
かなりスピードアップした承認の為、効果や副作用などに関しては未知の部分があります。 使い方によってはタミフルやリレンザよりも副作用が強くでるかも知れません。 それで経口投与が可能な患者に対してはタミフルやリレンザの使用を優先する場合が一般的です。

剤型および含量:
点滴用バッグ:ペラミビルとして300mg/袋(60mL)5792円
点滴用バイアル:ペラミビルとして150mg/瓶(15mL)薬価3117円
薬価は原価計算方式にて算定し営業利益として20%加算。

用法・容量:
成人:通常、ペラミビル30mgを15分以上かけて単回点滴静注。
重症化のおそれがある場合、1日1回600mgを15分以上かけて単回点滴静注。 ただし連日反復投与も可能。

小児:通常、ペラミビルとして1日1回10mgを15分以上かけて単回点滴静注。
更に連日反復投与も可能だが1回上限600mgまでとすること。



英日対語
ペラミビル水和物:Peramivir Hydrate  点滴:drip  静注:intravenous injection
インフルエンザ:influenza  ウイルス:viruses  感染症:communicable disease
シアリダーゼ:sialidase  ノイラミニダーゼ:neuraminidase  阻害剤:inhibitor




イナビル:抗インフルエンザウイルス剤


■概要:
イナビルは抗インフルエンザウイルス剤として厚生労働省による製造販売の承認を 2010年9月10日に取得しました。同年1月にラピアクタ(塩野義製薬)が承認されて以来の事となります。 →ラピアクタ

商品名:イナビルに関しては第一三共による純粋の国産品で長時間作用型のノイラミニダーゼ阻害剤の作用により治療が行えます。尚、薬剤としての一般名はラニナミビルオクタン酸エステル水和物です。ラピアクタ が点滴静注による用法に対してイナビルは1回の吸入で完結となります。

ノイラミニダーゼ阻害剤とは細胞内のウイルスが増殖して細胞外に放出するのに必要な蛋白酵素である ノイラミニダーゼを阻害する作用があります。そのためウイルスの影響範囲は停められ回復を早めます。

剤型および含量:イナビル吸収粉末剤20mg



■効果・効能及び用法・用量:
A型またはB型インフルエンザ・ウイルス感染症の治療

成人:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。
小児:(10歳未満)ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与。
    (10歳以上)ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与。

注意点:本剤は粉末状であるので湿気には気をつけて保存し、使用直前にアルミ袋から 開封し取り出すこと。使用期限は製造から16ヶ月だが新薬の為現在長期保存試験を 継続中である。



(日英対語)
イナビル吸入粉末剤:INAVIR DRY POWDER INHALER
ラニナミビルオクタン酸エステル:laninamivir octanoate
ノイラミニダーゼ:neuraminidase  阻害剤:inhibitor
感染症:communicable disease  吸入:insufflation




タミフル(リン酸オセルタミビル)・リレンザ(ザナミビル) ・シンメトレル(塩酸アマンタジン)

抗インフルエンザウイルス薬(成人用)の代表的なものとして 次のものがあげられます

●タミフルtamiflu[中外製薬](成分名:リン酸オセルタミビルoseltamivir)
 薬品名:タミフルカプセル75 1カプセル・75mg タミフルドライシロップ3%
 用法・用量:成人・小児(37.5kg以上)カプセル1回75mgを1日2回 5日間
      成人1回75mg 幼小児1回2mg/kg(体重) 1回75mgまで 1日2回 
           

細菌性かぜ症候群などには効果がなく、 A、B型インフルエンザウイルス感染症のみに有効で、 発症後48時間以内の投与が必要です。 2001年2月2日より保健が適応されていて、現在はカプセルでの経口投与が可能となり、 またタミフルドライシロップに限って幼小児の適応を有しております。
副作用
(重大なもの)ショック、アナフィラキシー様症候群、肝炎、肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜症候群、中毒性皮膚壊死症、白血球減少、血小板減少
(その他)発疹、蕁麻疹、口内炎、神経系(幻覚、興奮、しびれ、妄想、不眠症など)神経系では致命的な異常行動に移る可能性がありますので服用後48時間は十分かつ慎重な看護が望ましいです。



●リレンザrelenza[グラクソ・スミスクラインgsk](ザナミビルzanamivir hydrate水和物)
 薬品名:リレンザ(粉末ブリスター梱包・1ブリスターに5mg・専用吸入容器付き)
 用法・用量:1回10mg 1日2回吸入 5日間


タミフルと同様で、A、B型インフルエンザウイルス感染症にのみ有効の シアル酸誘導体です。ドライパウダー(粉末)を吸入投与によってウイルスの増殖部位である 気道粘膜上皮細胞の表面に直接到達して増殖を抑え、 またシアルダーゼ(ノイラミダーゼ)阻害剤として働きます。 これもタミフル同様2001年2月2日より保健が適応されています。
生産量は少なく、流行や状況によって生産が調整されていますが、2009年に入ってタミフルが効かなくなる場合が出てきたり、タミフルが不足していることなどでリレンザを使用する例が大幅に増加しています。
副作用
(重大なもの)アナフィラキシー様症候群、気管支攣縮、呼吸困難
(その他)発疹、蕁麻疹、顔面浮腫、耳鳴り、嗅覚障害、発汗、発熱、失神、視力障害など

●シンメトレルsymmetrel[チバガイギー-ノバルティス](塩酸アマンタジンamantadine hydrochloride)
 薬品名:シンメトレル細粒10% シンメトレル錠50mg シンメトレル錠100mg

元来パーキンソン症候群や脳梗塞に伴う意欲、自発性低下の改善のために使用されるもので 常時供給され、使用されているものではないようですが、1998年12月に抗A型インフルエンザ薬として認可されています。 これも、A型インフルエンザウイルス感染症にのみ有効で、発症後48時間以内の投与が必要です。
副作用
(重大なもの)皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、角膜炎、角膜上皮浮腫様症候群、腎障害、 意識障害、精神症状(幻覚、妄想、せん妄、錯乱など)痙攣
(その他)便秘、下痢、悪心、口渇、発疹、立ちくらみなど。

インフルエンザウイルス抗原検出キット(迅速タイプ)
医師が診断に使用するもので、検査所要時間は5~20分、 有効期間は10~16ヵ月程度。

●注意:副作用は必ずしもおきるものではありませんが、服用の際慎重に考慮すべきです。



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