無料で読める家庭の医学 病気・疾患の解説、英語名、原因、症状、診断方法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
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淋疾:淋病(りんしつ:りんびょう)と淋菌感染症(りんきんかんせんしょう)


●淋病は淋菌による感染症で尿道が冒されると膿が流出する。
淋疾(淋病)gonorrheaは淋菌による細菌感染症のことで、淋しい病気と書きますが漢語の淋には滴り落ちるという意味があって、文字通り症状として淋菌性尿道炎にかかると膿が出てきます。 淋菌gonococcusは0.6-1.0μmのグラム陰性双球菌で、ソラマメ状の2個の球菌同士が平面部分で接し合う配列をなす菌です。 この淋菌感染症gonococal infectionはヒトのみに見られる疾患で殆どの場合、性交時接触が原因となっています。

●淋菌性尿道炎(りんきんせいにょうどうえん)gonococal urethritis:
淋菌が感染すると2、3日後に一般的には尿道炎を起こし、外尿道口から普通見られる膿より若干乳白色をした膿と排尿時疼痛をもたらします。 女性の場合は尿道から膣、子宮頚管へと侵入して行き粘膜が化膿して病巣を作ります。 この病気が進むと尿道球部の内側にあるカウパーが侵され、淋菌性カウパー腺炎gonococal cowperitisを起こすこともあります。 また近い部位では亀頭包皮炎のひとつである、淋菌性亀頭炎(りんきんせいきとうえん)gonorrheal balanitisにも罹る場合があります。

●淋菌性結膜炎(りんきんせいけつまくえん)gonococal conjunctivitis:
淋菌の感染で結膜炎を起こす病気で、感染してから2、3日を経て粘液膿性の眼脂分泌が多量に見られます。 診断と治療が適切でなければ、普通の結膜炎程度にとどまらずに角膜炎や角膜穿孔を起こし失明する場合もあります。



■診断:
尿道炎の診断には尿道分泌物や初尿のグラム染色鏡検によって赤く染まったグラム陰性双球菌が観察されます。 その他PCR法(DNAポリメラーゼ連鎖反応を利用した検査)、LCR法、DNAプローブ法(一本鎖核酸の配列と核塩酸基配列の 結合を利用した検査法)、酵素抗体法などが用いられています。

■治療:
一般的に用いられる抗菌薬としてペニシリン系、セファロスポリン系、テトラサイクリン系、マクロライド系、 また化学療法剤のニューキノロン系を用います。 しかし淋菌は薬剤耐性のものが増えてきて薬によっては効果が得られない場合もありますので、 感受性試験(当該患者にとっての薬の効果の程度や有無を検査します)を行い、有効のものを選択するのが望ましいです。 ですから闇雲に個人で抗生物質を使っても悪化する一方になってしまう場合もあります。 適切な薬を用いれば数日で効果が現れて完治する病気です。




梅毒syphilis・梅毒トレポネーマTreponema pallidum(トレポネーマパリダム)


■原因:
梅毒とは淋病と同様に性感染症の代表的な疾患で、病原体は梅毒トレポネーマtreponema pallidum(トレポネーマパリダム) と呼ばれている規則的ならせん状を認める菌で、一端に3~8本の鞭毛(べんもう)があります。 この菌は意外と抵抗性がかなり弱く、外界との接触では直ぐに死滅します。



■症状:
●第一期梅毒
性的接触の後、2~3週間で陰部(男子では亀頭、冠状溝、包皮、女子では大陰唇、小陰唇、膣、子宮頸部など)に 一個から数個の小指の頭大の固くて平たい光沢のある赤い無痛性の硬結が生じ、それを初期硬結(こうけつ) と言います。 更に硬結の中央部の上皮細胞が崩壊してびらんや潰瘍が出来、周囲が硬く盛り上がってきます。 それを硬性下疳(こうせいげかん)hard chancre,hard soreと呼んでいます。 (稀に陰部以外にも下疳が見られます。) 下疳が出来ると直ぐに鼠径部のリンパ節が腫れ上がりますがこれも無痛ですし、このシコリも自然に消えて しまいます。

●第二期梅毒
更に約4週間を経て梅毒血清反応(ワッセルマン反応;Wassermann reaction)が陽性となり、三ヶ月でバラ疹rose spot(バラ斑点;薔薇の 花に似た色のえんどう豆大からそれ以上の大きさの斑点)、 丘疹状梅毒症や梅毒性乾癬を見ます。しかしこの症状も一旦収まります。

●第三期梅毒
この時期に現れる特徴的病変としてゴム腫gummaがあり、皮膚や皮下組織、骨や関節などに見られるようになります。 灰白色でゴムのような弾力性のあるもので、大きさは目に見えるものから顕微鏡レベルの小さいものまで多種存在します。 心膜に生じる炎症で限局性または粟粒性の
ゴム腫なども生じます。  その影響が心臓や血管に現れてくると、大動脈瘤や大動脈弁閉鎖不全をおこして死亡することもあります。 感染機会から約三年が経つと神経梅毒neural syphilis(脳梅毒)が出て歩行障害、痴呆症状もみられるようになってくるとそのまま第四期へと進んでいきます。

梅毒は第四期まで区分されていますが、現在では薬が有効のために大体は第一期の症状が現れた時点で病院で治療を受ければ悪化せずに治す事が出来ます。



■診断:
代表的な検査では梅毒血清反応serological test for syphilis;STS(ワッセルマン反応)があって、 補助結合反応、沈降反応、凝集反応に分けられていますがいずれも梅毒トレポネーマの反応を直接示すものではありませんので、梅毒患者でなくてもこれが陽性を示すこともあります。

■治療:
ペニシリン系の薬剤で治すことが出来ます。
抗菌薬名アミノベンジルエぺシリンのアンピシリンampicillin(ABPC)・商品名:ソルシリンSolcillin(武田)、ビクシリンViccillin(明治製菓)
フェネチシリンカリウムphenethicillin potassium(PEPC)・商品名:シンセペンSynthepen(明治製菓)
ベンジルペニシリンベンザチンbenzyl-penicillin benzathine(DBECPCG)・商品名:バイシリン Bicilline(万有)
その他にもマクロライド系のアセチルスピラマイシンacetylspiranycin(ACSPM)・商品名も同じで協和発酵のもの。
キタサマイシンkitasamycin(LM)・商品名ロイコマイシンLeucomycin(旭化成)などがあります。





クラミジア感染症chlamydia infection:クラミジア尿道炎clamydia urethritis

■原因:
クラミジア感染症とは、クラミジアという名前の偏性細胞内寄生性微生物によって感染し炎症を起こしたりする疾患のことです。そのクラミジア属の中でヒトに感染するものの種類とそれに罹る病名として以下にとりあげます。その中でもクラミジア・トラコマチスによる尿道炎は、性行為による感染症です。

・クラミジア・トラコマチスChlamydia tracomatis:眼病のトラコーマ、尿路性感染症、鼠径リンパ肉芽腫
・クラミジア・ピスタッチChlamydia psittaci(オウム病クラミジア):オウム病
・クラミジア・ニューモニエChlamydia pneumoniae:市中肺炎などの呼吸器感染症

このようにクラミジア属は性感染症以外に多くの疾患をもたらすもので、ここではクラミジア・トラコマチス の感染症の中で最も一般的な疾患である尿道炎について扱います。



■症状:
クラミジア尿道炎の初期症状は、性的接触後3~7日で尿道にかゆみを覚え分泌物が出るために下着にシミが付きます。 排尿時の痛みは殆どなく、女性であればおりものの量が増えたように感じる程度です。

更に感染症が進むと男性の場合は副睾丸炎や前立腺炎、精巣上体炎、精嚢炎、精管炎、 女性では骨盤内炎症疾患が起こり卵管炎などに罹りると不妊になる可能性も出てきます。 また、性行為の多様化に伴い、直腸感染や咽頭感染も増加しています。



■診断:
菌は培養して検査するかPCR(ポリメラーゼ連鎖反応polymerase chain reaction:DNA断片を熱変性反応などによって 繰り返し反応を起こして人工的増殖させて10万~100万倍にするもの)などがあります。

■治療:薬による処方例(①~④を適宜用います)
(①・②マクロライド系 ③ニューキノロン系 ④テトラサイクリン系)
①アジスロマイシン水和物(ジスロマック錠250mg) 4錠 分1 1日間
②クラリスロマイシン(クラリス錠200mg) 2錠 分2 7日間
③レボフロキサシン(クラビット錠100mg) 3錠 分3 7日間
④塩酸ミノサイクリン(点滴静注用ミノマイシン 100mg) 1回100㎎(初回のみ200mg) 1日 2回





カンジダ症Candidiasis:カンジダ尿路感染症Candidal urinary tract infection

■原因:
●クリプトコッカス科・カンジダ属の真菌による感染症で表在型と深在型がある。
そのカンジダ属Candidaというクリプトコッカス科の酵母様不完全菌の一属の中でもカンジダ・アルビカンスCandida albicansは代表的な菌種です。 不完全菌deuteromycetesは真菌fungus(かび)の一種ではありますが、有性生殖が認められていない真菌のことを指していて数多くの病原菌が存在しています。 細菌と違うところは真核がありミトコンドリアmitochondriaや小胞体があることなどです。

カンジダ症は皮膚粘膜に病変を起こす表在型とその他に肝脾カンジダ症などを起こす深在型があります。 舌や歯肉などの口内や唇、また膣や消化管にも感染症を引き起こします。 これが条件によって菌糸状になったり、または酵母yeast(イースト)形式をとったりしますのでこの場合はイースト感染症と呼ばれたりします。



■症状と診断:
皮膚では股の間や脇の下、乳房の下など、動くと擦れる位置に赤い強い痒みを引き起こします。 水仕事をしている人では手の指の股にアトピーに似た炎症を起こします。 この菌が元でカンジダ症をはじめ爪真菌症、白癬、膣炎、鷲口瘡などを引き起こします。 鷲口瘡(がこうそう)は口の中に痛みを感じる白い斑点が出来る病気です。

●カンジダ尿路感染症は深在型
健康な人の陰茎や膣前庭に常在していますが、日和見感染症の部類に入るもので普段は何の影響がないのに過労していたり抵抗力が落ちている時などに感染することがあります。 ステロイド、抗菌薬を長期にわたって使用していたり、カテーテル留置があったり、膠原病、糖尿病、エイズなどが原因で症状が現れることもあります。 尿中にカンジダ属の存在が認められたカンジダ尿症の患者に膿尿が見られるとカンジダ尿路感染症と診断されます。

■治療:
抗真菌薬で治療します。真菌は比較的長期間のケアが必要になります。
ポリエン系抗生物質:アムホテリシンB amphotericin B(AMPH)
商品名:ファンギゾンFungizone(ブリストル)、ナイスタチン(明治製菓)
フルシトシン(5-FC): フルシトシンflucytosine(5-FC)・商品名:アンコチルAncotil(協和薬品)
イミダゾール系: ミコナゾールmiconazole(MCZ)・商品名:フロリードF(持田)
トリアゾール系:
フルコナゾールfluconazole・商品名:ジフルカンDiflucan(ファイザー)
イトラコナゾールitraconazole・イトリゾールItorizole(ヤンセン-協和発酵) などがあります。



トリコモナス症trichomoniasis
尖圭コンジローマcondyloma acuminatum・陰部ヘルペスgenital herpes



●トリコモナス症trichomaniasis
トリコモナス症(性器トリコモナス症)とはトリコモナス属Trichomonasの原虫による感染症で、 この原虫は動物鞭毛虫属のトリコモナス類に入ります。 膣と口腔と腸のトリコモナスが確認されています。 この病気に罹ると膣や尿道に痒みを覚えますが殆ど無症状の場合が多いです。 また女性では泡沫状の黄色い悪臭のするおりものを確認出来ます。

トリコモナス検診

■治療:
抗トリコモナス薬が内服と坐薬であります。膣炎には坐薬を使用します。
メトロニダゾールmetronidazole・商品名フラジールFlagyl、内服及び膣坐薬(塩野義)
チニダゾールtinidazole・ハイシジンHaisigyn、内服及び膣坐薬(富士製薬)



●尖圭(形)(せんけい)コンジローマcondyloma acuminatum(陰部イボ・性器イボgenital wart)
これはヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルスhuman papillomavirus)(HPV)の70型以上確認されている内の 6型、11型によって起こる感染症で、性的接触などが主な原因です。 ヒトの上皮細胞の一部でのみ増殖するもので、特に外陰部、膣、子宮頸部、また亀頭や陰茎や肛門周辺の皮膚に好発し、 感染してから2~3ヶ月を経て腫瘍が出てきます。 小さな粟粒大から米粒大の淡紅色か褐色がかった乳頭状もしくは鶏冠状のとげとげやブツブツした腫瘍が出来ます。 痒みは殆どありません。 一般的にこの6,11型は癌のリスクは低いとはいえ、16,18,31,45型になると子宮頸がんに罹る可能性が高くなりますので しっかりと根治すべきです。尚、子宮頸がんの90%にこのウイルスが検出されています。

■治療:
症状が重くなければフルオロウラシルfluorouracilの5-FU軟膏(協和発酵)も用いられます。



●陰部ヘルペスgenital herpes
単純ヘルペスウイルスⅡ型による感染症で性的接触が原因で、感染機会後、3~7日で外陰部に痛みの伴う水疱や潰瘍を発症します。 また発熱、倦怠感、頭痛を伴うこともあります。 この単純ヘルペスⅠ型の場合は口唇ヘルペスに見られます。 そのままにしておいても治ることが多いですが再発するタイプももあり、その場合は疼痛を起こします。

■治療:
水疱だけの症状であればアシクロビルaciclovirの軟膏(商品名:ゾビラックスZovirax(gsk) を塗るだけで水疱が破れてきて乾いた後に7~10日で治癒します。 (他にビダラビンvidarabine・商品名アラセナA;持田があります)



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