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心臓のしくみと血圧:高血圧症


●血圧の定義:
血圧blood pressure(BP)とは血管の中の血液が血管の壁に及ぼす圧力のことを言います。 閉鎖された循環系内での血管や心臓を流れる血液は、動脈血圧と静脈血圧との差があることで血管内を循環することができます。

物理学的に言って、液体も気体も大抵のどんな物体でも圧力の高い(強い)所から低い(弱い)所へと移動します。 電気は電位差があるときに電流が流れます。電池の容量がなくなれば電位差がなくなりますから、電流は流れなくなります。 上水道も高い位置に水源があれば、自然と低いほうの水道本管へ流れますし、標高差がなくなって流れなくなっても、増圧ポンプで圧力をかければ圧力のない一般上水道へ流れていくわけです。

●心臓の内部の血圧
心臓や血管などの場合、圧力をかけられる場所が心臓の右心室と左心室になります。心臓の心室には逆止弁がつけられていて、圧力をかけたとき、静脈に流れずに動脈のほうへ流れるメカニズムを備えているわけです。

●収縮期と拡張期の血圧・平均血圧の求め方
血圧は主に三種類あって、心臓が収縮して圧力が最も高くなった時の数値(収縮期血圧)と、心臓が拡張(弛緩)して最も圧力が 低くなった数値(拡張期血圧)を出して、その差の三分の一を最小血圧に加えた数値を平均血圧と言います。 収縮期血圧のことを一般に「高いほう、もしくは上」、拡張期血圧のほうを「低いほう、もしくは下」と呼ぶ人も多いと思います。

例:収縮期血圧が131、拡張期血圧が80の場合、差が51でその三分の一は17ですから80+17で平均血圧は97という事になります。

●高血圧
血圧が異常という場合は殆ど高血圧となって現れてきます。その血圧の分類は以下のように定められています。この分類は1999年に改定された比較的新しい基準です。しかし分類の方法に関しては各国の機関などによって多少の開きがありますが日本人であれば日本の機関の基準を参考にするのが妥当でしょう。

●原発性高血圧症(本態性高血圧症)
原因がわからないタイプで幾つもの素因が複雑に関係していると考えらており、平滑筋細胞のポンプ作用の低下や遺伝などが関係しているとも考えられています。また環境因子面では塩分摂取量、肥満、ストレス、喫煙などに影響される場合もあると考えられています。 以下に詳しく取り上げます。

●二次性高血圧症
原因は様々で腎疾患、褐色細胞腫、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、バセドー病などがあります。 以下に詳しく取り上げます。



分類収縮期血圧(mmHg)拡張期血圧(mmHg)条件
正常血圧100~12960~84両方合致
正常高血圧130~13985~89どちらか合致
軽症高血圧140~15990~99どちらか合致
中等症高血圧160~179100~109どちらか合致
重症高血圧180~110~どちらか合致
収縮期高血圧140~~90両方合致


下図に心臓内部の代表的な血液の循環を示します。矢印の通り血液が循環していきます。
上大静脈及び下大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺でガス交換→
→左右の肺静脈→左心房→左心室→大動脈弓
    



原発性高血圧症(本態性高血圧症・一次性高血圧症)

■原因:
原因が腎臓病であるなど原因が明らかな高血圧症である二次性高血圧secondary hypertentionとは異なり、 原因不明、言い換えれば血圧が高いことそのものがこの疾患の本態である場合に、 原発性高血圧症(別名:本態性高血圧症essential hypertension・一次性高血圧症)と呼んでいます。 原因が特定できないものの、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡みあっているために起こると考えられています。 この本態性高血圧は全体の85~90%程になり、残りの10%近くが腎疾患が関係していて、 更に残りの5%程度がその他の疾患が原因となっています。



■症状:
自覚症状は人によりまちまちで、かなりの高血圧になっても症状のない人もいます。しかし一般的に起こるものとしては 頭痛、肩こり、めまい、耳鳴り、不眠、不安感、息切れ、便秘などがあります。 更に重度の高血圧が長く続くと無理に心臓を働かせてしまうために心臓が肥大したり細動脈の硬化も起こります。 また動脈硬化が心臓や脳や腎臓の血管におこると、狭心症、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞、脳卒中、尿毒症などを起こすことがあります。



■診断:
先ず血圧を頻繁に様々な状況で計ります。本態性か否かを判断するためには考えられる高血圧の様々な原因の有無をはっきり させなければなりませんので、種々の検査が必要になります。基本的には問診、聴診器的診断、X線写真、心電図、尿検査 、血液検査、眼底検査などがあげられます。



■生活習慣の改善:
薬に頼るのではなく、生活の中から休養をとることや食事や運動などで改善を図ることが出来ます。
●食事の面で気を配るべき点は食事の量を抑えてカロリー過多にならないことが先ずひとつあげられます。 肥満は糖尿病になり易く、余分なカロリーは血管の周りに脂肪となってくっつきますし、そうなると動脈硬化を起こしやすく、 あるいは悪化させやすくなります。5kgほどの減量をすると血圧低下に効果があることも実証されています。

肉食傾向にせずに菜食に努める事も大切ですが、それは主としてコレステロールや飽和脂肪酸などを含む動物性脂質を減らす目的であると考えるべきです。 魚や鶏肉や赤身のミートなどからとれる良質の蛋白質は筋力増強のためだけではなく、健康維持にも大切なものです。 例えば蛋白質、アミノ酸類に入るコラーゲンcollagenは血管の弾力性を維持するために欠かすことの出来ない物質で、それは肉類から容易に摂る事が出来ます。
更に菜食にすると食物繊維を効果的に摂る事が出来ますので、胃や腸の健康維持に有効ですし、 植物から得られる様々な物質は体の健康に大きく貢献します。

●更に塩分を控えめにすることも大切です。出来るだけ1日に7g(食塩としては4g)以下に抑えるようにします。 患者にとってどの減塩方法が効果的であるか個人個人に違いがありますから、まず自分がどんな食事をしてきたか 表にまとめてそれぞれどの程度の塩分吸収をしてきていたか考察してみるのも良いでしょう。
それで自分が実行しやすい所と、しなければならない所をマークすると良いと思います。 現代人の食事はコンビニ弁当に頼っている場合が多く、お弁当に含まれる塩分は防腐目的のためにかなりのものになります。 もしコンビニなどで弁当を多く食べる機会が多ければ減らす方法を考える事もしてみるべきです。

味噌汁が好きな人は出来るだけ薄味にしたり、イモ類などの具を増やして味噌の量を減らすように出来ます。 ラーメン好きで、汁を飲みきる習慣があればラーメンを食べる回数を減らすしかないでしょう。 煮物などで具材全体に味がしみわたっている場合、思いのほか塩分を多く摂ってしまいます。 むしろゆで卵に塩をまぶすような食べ方であれば、卵自体に塩分は回っていませんから少量の塩でも効果的な味付けになります。 要するに舌に塩辛さを感じればよいわけで、舌に触れない部分には塩分は無くてもすむわけです。 薄味で美味しくないと感じるなら、酢や香辛料をうまく利用した料理を増やす方法もあります。

●アルコール摂取量はエタノールとして20~30g、日本酒にして約一合(180mL)程度に抑えるのが望ましいでしょう。 ただし女性の場合の摂取量は10~20gが望ましいとされています。

●軽い程度から中程度の有酸素運動も血圧をさげるのに効果的です。出来るだけ毎日30分程度こなすようにします。 しかし無理な運動は逆効果になりかねませんので、苦しくならない程度にするべきでしょう。

●喫煙は脳卒中や虚血性心疾患*に罹る割合が高くなりますので要注意です。
*虚血性心疾患:心臓の収縮弛緩など電気的興奮をつかさどる心筋への血流が悪くなり、 酸素供給が不足しておこる疾患で、狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈、突然死などを 引き起こします。



■治療法:
薬剤による治療も行われますが、それぞれ使用するには条件がありますからむやみに使うことは出来ません。 それで人から余ったものを飲まないようにしましょう。 例えば動脈硬化がある場合、血圧を下げてしまうと血流不足になり、他の疾患を誘発しかねませんのでそれは逆効果です。 病状や加齢の具合で、ある程度高い血圧のほうが望ましい場合があるからです。

●サイアザイド(チアジド)系利尿薬thiazide diuretic:
この利尿薬は第一選択薬のひとつで血管を拡張させる効果があり、また腎臓機能を増すことが出来ますから 水分と塩分の排泄を促進させます。 同時にナトリウムと一緒にカリウムも排泄されてしまいますのでカリウムをサプリメントなどで別個に摂る事が必要になります。 しかし高脂血症などの副作用の問題もあります。
(トリクルメチアジド・ヒドロクロロチアジド・ベンチルヒドロクロロチアジド・ インダパミド・トリパミド・クロルタリドリン・メチクラン・メフルシドなど)

●アドレナリン遮断薬:
主にβ遮断薬(ベータブロッカー)が用いられていて、これは交感神経の緊張の影響を軽減させて 心臓の負担を軽くすることが出来ます。 若年者、心臓発作を経験した人、心拍数の多い人、狭心症の人、偏頭痛の人などに有効ですが、 高齢者や抹消動脈硬化のある人、肺疾患のある人などには不向きです。
(塩酸プロプラノロール・ナドロール・ピンドロール・塩酸アセブトロール・アテノロール・塩酸ベタキソロール・ フマル酸ビソプロロール・塩酸カルテオロール・酒石酸メトプロロール・ 硫酸ペンブトロール・チモロールなど)

●アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬:
細動脈を収縮させてしまう血圧上昇ホルモンであるアンジオテンシンの生成を阻害して、降圧作用を起こす薬で、 更にこれには血圧低下作用のあるブラジキンを増加させる作用もあります。 またインスリンの働きを改善させて糖尿病の治療にも役立ちます。
(カプトプリル・マレイン酸エナラプリル・アラセプリル・塩酸デラプリル・シラザプリル・リシノプリル・ 塩酸ベナゼプリル・塩酸イミダプリル・塩酸テモカプリル・塩酸キナプリル・トランドラプリル・ペリンドプリルエルブミンなど)

●カルシウム拮抗薬:
これは高齢者、狭心症の人、頻脈がある人偏頭痛がある人に効き目を表します。

●鎮静薬:
高血圧のために頭痛が起きたり不眠になる場合に効果的です。





二次性高血圧症 secondary hypertention I159
腎実質性高血圧症 renal parenchymal hypertention I151



■概要:
高血圧の原因が血圧の調整に関与している臓器や組織すなわち中枢神経、末梢交感神経、心臓、腎臓、甲状腺、血管内皮、血管平滑筋などに障害があるために高血圧を生じさせている場合に二次性高血圧と呼んでいます。

交感神経の働きでは、副腎を刺激してアドレナリンadrenaline(エピネフリンepinephrine)とノルアドレナリンnoradrenaline(ノルエビネフリンnorepinephrine)というホルモンを放出させます。後者は交感神経自体からでも放出します。そしてこの両者とドーパミンを併せてカテコールアミンと総称しています。

これらのホルモンは心臓に刺激を加えて拍動を速くしたり強くしたりさせ、細動脈を収縮させたり部位によっては拡張させたりします。 交感神経はまた腎臓を刺激して塩分と水分の排出量を減らして血液量を増やすことをします。 それでこのホルモンのバランスが障害されることで高血圧が生じてきます。

●腎実質性高血圧症(じんじっしつせいこうけつあつしょう):
二次性高血圧症は腎実質性高血圧症が多く、中でも糖尿病性腎症慢性糸球体腎炎、腎動脈の狭窄などの腎硬化症に起因する場合が殆どです。 腎臓の血圧の関与のメカニズムに関してですが、血圧が降下した際の立ち直り方の順をここで示します。

1.収縮期血圧(俗に高い方の血圧)が100mmHg以下になる。

2.腎臓から酵素:レニンreninを血液中へ分泌・放出。

3.レニンは血漿中の糖蛋白質であるアンギオテンシノーゲンangiotensinogen(アンジオテンシノーゲン)を分解させ、不活性のアンギオテンシンⅠ(angiotensin Ⅰ)となる。

4.アンギオテンシンⅠは肺で作られたアンギオテンシン変換酵素angiotensin Ⅰ converting enzyme(ACE)により更に分解し、活性の強いアンギオテンシンⅡ(angiotensin Ⅱ)を生産する。

5.アンギオテンシンⅡは細動脈の筋肉壁を収縮させて血圧を上昇させ、 副腎からホルモンのひとつ、電解質コルチコイドのアルドステロンaldosteroneを放出。

6.アルドステロンは腎臓にナトリウム保持とカリウム排泄を誘発させる。

7.ナトリウムは水分を呼ぶのでその結果血液量が増えて血圧が上昇する。

このように血圧が下がれば、ホルモンなどの働きで元の血圧に戻そうとするわけです。 しかしここで一例として腎動脈での狭窄が起こると灌流圧が低下して腎糸球体傍細胞から過剰にレニンが分泌されてしまいますので必要以上に血圧が上がってしまうことになります。

この場合の治療法としては動脈で狭窄が起きた部分に、円筒状の金網であるステントの中にバルーンを入れたものを動脈内に挿入します。 狭窄の起きている場所でバルーンを膨らませてからバルーンをはずすとステントだけが残り、 金網の抗力で狭窄を阻止することが出来るというわけです。

このようにして、一次原因の治療を行うことで二次性高血圧の場合は改善することが出来ます。




低血圧症(ていけつあつしょう)hypotention I952


■概要:
●収縮期血圧:100mmHg未満が基準
低血圧とは収縮期血圧(いわゆる高いほう)が100mmHg未満の場合を指していて、拡張期血圧(いわゆる低いほう)は考慮されません。 しかしそれでもめまいや失神などの具体的な症状が出ない場合は、低血圧と診断しない事もあります。

血圧の調整は、交感神経やホルモンを介してなどで心臓の心拍の強度や速度、細動脈や静脈の収縮と拡張、また腎臓の働きによる血管を流れる血液量の調整などで行っています。 そのうちのどこかに異常をきたすときに血圧の調整がうまくなされずに高血圧や低血圧の疾患に罹ります。



■原因:
●原発性低血圧症と二次性低血圧症がある
血圧が低くなる原因として、心疾患、神経疾患、アジソン病・シモンズ病・粘液水腫などの内分泌疾患、 感染、悪性腫瘍、糖尿病、重度の貧血、中毒、薬剤、アルコール、栄養失調、循環血液量の減少などがあります。 この場合は二次性もしくは症候性低血圧と呼んでいます。

また、原因を特定できないものを原発性低血圧(本態性低血圧症)と呼んでいます。 この場合の例として起立性低血圧というものがあり、寝ている状態では通常の血圧を保っていますが、立ち上がる時に血管の緊張が十分に作用しないために血圧が下がってしまい、めまいや立ちくらみを生じさせるものです。 その他にも急性のものや慢性のもの、また一過性低血圧や食後低血圧などというふうに分類することもあります。
中には正常血圧の人と普段全く同様に行動がとれる場合は、体質性低血圧と呼ぶこともあります。



■症状:
●脳が血流不足となり種々の症状を呈することがある
軽度の場合自覚症状はありませんが血圧が下がりすぎると数々の症状があらわれ、最初に犠牲になる部位は一番高いところにある脳が機能不全になります。 上記の起立性低血圧で言及しましたように脳への血流不足が原因でめまい、たちくらみ、失神などの症状をあらわしますが、普通は横になることで脳への血流が回復して元に戻ることが出来ます。

しかし重度の低血圧が持続してしまうならば全ての臓器にまで血流量が不足してしまう結果、各臓器が機能不全となり ショックshock症状を呈します。若し普段の血圧が高ければ低血圧が さほどではなくてもショックをおこす可能性は高くなります。



■治療・療法例:
体質改善のために基礎的な運動や体操をしたりマッサージなどを行えますし、痩せているならば 高カロリー高たんぱくの食事を摂る事も大切です。 また起立性低血圧であれば立ち上がる時にゆっくり時間をかけたり、下肢を締める効果のある 医療用のストッキングを穿くことも出来ます。
しかしそれでも効果があらわれない場合には上記の方法を続けながら薬を用いて治療することも出来ます。

・軽症例として
メシル酸ジヒドロエルゴタミン(ジヒデルゴット錠1mg・ノバルティスファーマ) 3錠 分3
塩酸ミドドリン(メトリジン錠2mg・大正製薬)2錠 分2
メチル硫酸アメジニウム(リズミック錠10mg・大日本住友製薬) 2錠 分2

・症状が重い場合の例
酢酸フルドロコルチゾン(フロリネフ錠0.1mg・ブリストル製薬) 0.02-0.1mg 分2-3
ドロキシドパ(ドプスカプセル100mg・大日本住友製薬) 2-3カプセル 分2-3



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