無料で読める家庭の医学  病気・疾患の解説、原因、症状、診断法法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
家庭の医学 by igaku.bz


心不全(しんふぜん)heart failure I509
うっ血性心不全(うっけつせいしんふぜん)congestive heart failure I500


■原因:
●心臓の筋肉の機能が弱体化する心室機能不全症候群
心不全の大きな原因は心筋cardiac musleと呼ばれる心臓壁を構成する三層のうちの大部分を占める筋の障害によるもので、その筋の機能が低下し、体内の各部分の抹消組織の酸素需要量をまかなうだけの血液を循環させることが出来なくなった状態です。 それで不全と言っても心臓が停止しているわけでなく、機能が不完全な状態であるという意味であって この疾患は心室機能不全症候群とも呼ばれています。

●収縮機能不全と拡張機能不全
また心不全を起こす要因として心臓の収縮機能不全や拡張機能不全があります。どちらか一方か両方の場合でも心不全を起こします。 心筋梗塞を起こすと収縮機能不全が影響している場合が一般的にみられます。 また拡張機能が衰える原因のひとつに加齢があり、高齢者では心室の充満が障害されるケースが多く心筋細胞の減少や間質コラーゲンの沈着が原因とされています。

心臓の左心房や左心室が関係してくる左心不全をおこすと、肺から流れてくる血液がうっ滞しますので肺うっ血や肺水腫、また呼吸困難を起こします。 また、右心不全では浮腫(ふしゅ:むくみ)、静脈怒張、肝腫大などを来たします。 実際の疾患ではその両者の不全が関係してくる場合が多く見られます。



■症状:
●心臓麻痺
症状が急激に現れるもので、当人は苦悶し顔面蒼白や冷や汗が見られます。 時には吐き気や嘔吐、また意識が遠のくこともあり呼吸困難も起こし、肩で浅い呼吸をします。
その際の処置法としては絶対安静で当人が一番楽な体勢を作ります。 血圧の低下が見られるならば、頭を下げて足を高めの位置にもって行きます。 心臓が停止した場合は心臓マッサージが至急必要になります。
また急性のうっ血性心不全である場合には利尿薬、血管拡張薬、強心薬なども用いられます。

●慢性心不全・うっ血性心不全
慢性心不全chronic heart failureの場合は 慢性の心筋障害により、心臓のポンプ機能が低下して引き起こされるものですが、その概念や治療法は変わりつつあります。 心臓の悪い部分の血流の後方にうっ血を生じさせますから、 うっ血性心不全congestive heart failureという呼び方も一般的です。
症状が 軽症であれば運動をした際に動悸息切れが起こり、それが悪化すると安静時でも呼吸がしづらくなります。 咳や喘息もあり、右わき腹辺りに重苦しさを感じます。食欲不振もあり、尿が減ってむくんできます。



■診断:
心電図、胸部エックス線写真、心エコー検査、血液検査や尿検査などで診断します。



■治療:
原因疾患をしっかりと見極めた上での治療を行う必要がありますので自宅での民間療法のみで治すことはなかなか出来ません。 生活習慣や環境面では精神的や肉体的安静などで心臓の負担を軽減することが大切です。 また食生活の面では塩分を出来る限り減らして水分も必要最低限にするのがよいですが極端に減らし過ぎないよう注意が必要です。

排便時のいきみは大きなマイナス要素ですので軟便にする薬を飲むか浣腸をして楽に排泄出来るようにします。 また利尿薬や強心薬も用いられます。 薬の処置を施すにあたってNYHAの新機能分類などに基づいて行われます。
Ⅰ度:日常労作で自覚症状がないもの。
Ⅱ度:安静時には無症状でも日常生活の活動や労働で自覚症状が出てくるもの。
Ⅲ度:安静時には無症状でも少しの動きをとるだけで自覚症状が現れてくるもの。
Ⅳ度:安静時にも自覚症状があり、労作で悪化させてしまうもの。

各重症度に応じて用いられる薬:
Ⅰ度:レニベース(ACEI)*・ニューロタン(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗約)
Ⅱ度:カプトリプル(ACEI)・ラシックス(ループ利尿薬)かアルダクトンA(カリウム保持性利尿薬)・ ジゴキシン(強心薬:ジギタリス製剤)
Ⅲ度:β遮断薬としてメトロプロロールかカルベジロール・プレラン(ACE阻害薬)・ジゴキシン・ラシックス・ フルイトラン(チアジド系利尿薬)
Ⅳ度:カテコールアミン系強心薬としてドパミン・ドブタミン・PDEⅢ阻害薬などが用いられ、更に追加剤も用いることがあります。
*ACEI=angiotensin converting enzyme inhibitorアンジオテンシン(アンギオテンシン)変換酵素阻害薬
主な作用として、抗圧、尿蛋白減少、腎保護、心保護、抗動脈硬化があります。

薬その他でも不全の症状が進んでしまっている場合はペースメーカーを装着したり心臓移植を 考えなければならなくなります。



心臓:heart  心筋:heart muscle  心不全:heart failure  心室:heart ventricle  心房:atria
収縮:contraction  拡張:ectasia  心臓麻痺:paralysis of heart  うっ滞:hemostasis  浮腫:edema





狭心症(きょうしんしょう)angina pectoris;stenocardia

■原因:
●動脈硬化などでの血流阻害により心筋が酸素不足になる
狭心症とは心臓の周りを囲んでいる心筋への酸素供給不足のために胸痛発作、圧迫感などをを主体とする症候名で、主な原因は冠動脈の中にアテロームが発生することで動脈の血流が阻害され、虚血(正常な血液の供給不足)が生じるために起こります。 →アテローム硬化症

虚血状態は重度の貧血でも同じことが当てはまります。 貧血の主因はヘモグロビンや赤血球の数の減少ですからその影響で血流の酸素が減る結果心筋への酸素供給量も減少します。



■症状:
普通は胸骨下の違和感、圧迫感や痛みを覚えますが痛みを感じる場所は背中や肩やお腹に感じる場合もあって、胃など他の臓器の病気と間違えることもあります。 そういった種類の痛みは数分以内で収まり、30分以上続くならば心筋梗塞を疑います。

狭心症は症状を起こす時期やタイミングにいくつかの種類があって分類は以下のようになります。
●安静時狭心症:一日の内のどの時間帯においても体を横にして安静状態を保っている時に生じるもので、 体液が重力によって移動するために心臓に負担がかかる結果おこるものです。
●労作性狭心症:体を動かすときに症状が現れます。
●安定狭心症:発作の頻度、強度、持続時間などの症状の現れ方が一定しているものです。
●不安定狭心症:症状の現れ方に変化を生じさせるもので、大抵は悪化傾向を示します。即ち安定症状を示していた 患者が痛みがより強くなったり、発作の回数や頻度が増したりする場合です。その原因の多くは冠動脈の狭窄がより 顕著になった事によります。
●異型狭心症:心臓の表面にある太い冠動脈の一本が痙攣(けいれん)を起こすケースで、安静時に痛みを覚え、 また心電図に独特の波形を示すことから異型と表現しています。
●夜間狭心症:夜間の睡眠中に起こるものです。



■診断:
まず、痛みの場所や種類と患者の食生活や環境などを問診することで容易に判断出来る場合もあります。

また次の検査器械もよく用いられています。
●心電図:心電計により心電図を見て異常を判断しますが、安静状態での検査と共に、被検診者(患者)に運動負荷を 加えさせて心電図を見る方法をとります。 小さなベルトコンベアーのような作りのトレッドミルの上を歩く方法や運動器具の固定式自転車に似た自転車式エルゴメーター をこがせて運動負荷を与えます。
●核医学画像検査(放射性核種イメージング):静脈に微量の放射性物質を注射して血流の異常の有無を検査します。 放射能の量はX線検査で被爆するものと同程度のものです。
●心臓超音波検査(心エコー):心臓の形や動きや働きを見ることが出来ます。
●冠動脈造影検査:X線写真に写る造影剤を動脈に注射してからX線撮影を行い、冠動脈の状態を調べることが出来ます。



■治療:
冠動脈の疾患が主原因ですからその進行をなるべく進ませないようにすることと、付随する危険因子の除去もしくは抑制を考えなければなりません。 そのため食生活の改善も図られ、塩分、脂質、アルコールを控えたり喫煙をやめたりすることが大切です。

治療薬で用いられている薬品の一部を記述します。
発作時の処置例:ニトログリセリン0.3mg1錠舌下。若しくはミオコールスプレー一回噴射。(硝酸薬) 効果がみられない場合は5~10分後に再度使用。
安静時狭心症:アイトロール40mg分2(硝酸薬)・ヘルベッサーR200mg分2(Ca拮抗薬:塩酸ジルチアゼム)。
労作性狭心症:ニトロールR40mg分2(硝酸薬)・セロケン60mg分3(β遮断薬)。



狭心症:angina pectoris  動脈硬化:arteriosclerosis  アテローム硬化症:atherosclerosis  虚血:ischemia
貧血:anemia   虚血:ischemia  心筋梗塞:myocardial infarct,myocardial infarction  冠動脈:coronary artery
心電図:electrocardiogram(ECG)  超音波検査:echography



心筋梗塞(しんきんこうそく)myocardial infarction;MI(心臓発作;しんぞうほっさ)

■原因:
心筋梗塞は冠状動脈が粥状硬化巣(じゅくじょうこうかそう)*の破綻などを主因とする冠循環障害で、アテロームが動脈内部を浮遊するなどして血栓が出来、そのために心臓壁にある心筋が酸素供給を受けられずに局所的に壊死を起こす疾患です。 *粥状硬化症(アテローム硬化症)



■症状:
この病気が起こる数日から数週間前に狭心症の症状が出始めて発作を繰り返し、胸の痛みを覚えます。 徐々に痛みが増してきたり、時には急激に胸の中央部からみぞおち辺りに締め付けられるような激痛を覚え、更に左腕やあごや背中や腹部の痛みを経験する事もありますが、胸の痛みがあまり起こらない場合もあります。 吐き気、嘔吐、冷や汗、脂汗もあり、また精神的にも極度の不安感や恐怖心を味わうこともあります。

不整脈は心臓発作を起こした人の90%以上にみられ、発作を2日繰り返している人の40%ほどがショックや急性心不全で死亡してしまいますので入院は急を要します。



■診断:
分類方法は次の通りになります。
●時間的経過による分類:急性期は通常1ヶ月までとして、2~3ヶ月を亜急性、 それ以降を陳旧性心筋梗塞(ちんきゅうせいしんきんこうそく)old myocardial infarction。 陳旧性の場合の分類方法は見解がいくつかに別れていて、亜急性を含む場合や6ヶ月以降と考える場合などがあります。
尚、陳旧とは「古い:old」の漢語です。
●筋層内範囲による分類:貫壁性、非貫壁性。
●心電図の異常Q波の有無、ST上昇の有無。(心電図はP、Q、R、S、T、Uの6波に分類されていて、それで診断します。)
Q波:心房の興奮の次に来る心室の興奮開始時に生じる鋭い陰性(グラフで負の方向)の波で、これが深くて(R波の25%以上) 幅が広ければ(0.04秒以上)心筋梗塞の疑いがあります。
ST上昇:貫壁性心筋梗塞へと進み、Q波も形成します。
●部位による分類。
●発症形態による分類:梗塞前狭心症の有無など。



■治療:
この治療は時間の猶予を与えません。 心臓発作が生じたら何よりも先に救急車を要請します。 119番通報すると「火事ですか?事故ですか?」と尋ねてきますが、慌てずに「心臓発作ですので専門のCCUのある病院に搬送して欲しいです」と応えて住所と氏名を告げます。 万が一心臓が止まってしまったなら、心臓マッサージや人工呼吸を行わなければなりません。 またアスピリン錠があれば冠動脈内に血栓があれば細かくする作用がありますのでそれを噛み砕かせます。

そして病院では先ず冠状動脈にできた血栓を溶解させて血流を復活させます。 それでも血流が滞っている場合はカテーテルを用いて閉塞部分を開通すべく形成術を施行します。 しかし高度の技術を備えた病院では血管形成術や冠動脈バイパス手術を行うことがあります。
そして様態が落ち着いて無事退院した後も、アスピリン、β遮断薬、ACE阻害薬、脂質低下薬などの使用を継続します。



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