無料で読める家庭の医学  病気・疾患の解説、原因、症状、診断法法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
家庭の医学


動脈硬化症(どうみゃくこうかしょう):アテローム性動脈硬化症


■概要:
動脈硬化とは動脈壁の肥厚、弾力性の低下、内腔の狭小化を意味していて、次の三つに分類されています。
1、粥腫形成(じゅくしゅけいせい)を特徴とする粥状硬化症(じゅくじょうこうかしょう)
2、硝子様肥厚(がらすようひこう)を特徴とする細動脈硬化症(さいどうみゃくこうかしょう)
3、筋性動脈中膜(きんせいどうみゃくちゅうまく)の石灰化を特徴とするメンケベルグ動脈硬化症

中でもアテローム性硬化症(粥状硬化症)は高頻度でみられ、重要な病変です 。単に動脈硬化症と呼ばれる場合、この粥状硬化症のことを指しています。 また、アテローム硬化症の表現の方が一般的に用いられているようです。

●アテローム性動脈硬化症atherosclerosis:
アテロームatheroma【粥腫・粉瘤】とは粥状(じゅくじょう:おかゆ状)の物質で脂肪性のまだらな沈着物を内腔に容れた嚢胞(のうほう)の臨床的診断名です。
次にこの硬化症成り立ちを順を追って記述します。
1、動脈内膜が障害されたりして異変が起きたり、血中にコレステロールを含んだ多量のβリポ蛋白質が流れ込む。
2、白血球の内の貪食細胞のひとつである単球が異変部位、またβリポ蛋白質に集中し、活性化して内膜の内側に侵入する。
3、単球はそこで脂肪性物質(泡沫細胞)に変化する。
4、平滑筋細胞の一部が内膜の中へ移動増殖し、泡沫細胞と絡み合う。
5、その部位でカルシウムやコレステロールなどと相まってアテロームを形成する。

アテローム硬化症によって動脈は弾力性を失うために高血圧を起こす事もあります。 またアテロームが育っていくと動脈内腔が徐々に狭くなります。



■原因および危険因子:
●喫煙
アテロームを作る原因のひとつにβリポ蛋白質がありますが、これは低密度リポ蛋白質(LDL)に該当していて悪玉コレステロールと呼ばれるものです。 喫煙をすると、この悪玉コレステロールがが増え、善玉コレステロールと呼ばれる高密度リポ蛋白質(HDL)が減少してしまいます。

更に血中の一酸化炭素濃度を上昇させますので動脈の内壁を障害する恐れを高めます。 また血小板の粘着性を高めますので血流が滞りやすい現象をおこします。

●コレステロール高値
コレステロールの内、善玉と悪玉が存在することは衆知の事実となってきました。 血液検査などで示す総コレステロール値とは、LDLコレステロールとHDLコレステロールならびに中性脂肪*を合わせた値で、これが 140~200mg/dLの範囲にいることが理想です。総コレステロール値が300mg/dLを越えると心臓発作のリスクは2倍以上になります。 またHDLコレステロールが総コレステロールの25%以上を占めることが望ましいとされています。

ほかの因子として糖尿病や肥満、運動不足もあげられますが、どれも悪玉コレステロールや中性脂肪が過多になるのが 主な原因です。

*中性脂肪neutral fat:別名アシルグリセロールacylglrcerol;グリセリドglyceride
グリセロールに1分子の脂肪酸がエステル結合したものをモノアシルグリセロール、 2分子の結合でジアシルグリセロール、3分子ではトリアシルグリセロールと それぞれ呼んでいます。一般的には3分子結合のトリアシルグリセロールを指していて トリグリセリドとも呼んでいます。



■症状:
動脈硬化は大抵、動脈内壁の約70%まで狭められても症状にあらわれません。 心臓の冠状動脈が硬化すると狭心症(胸痛)心臓発作、心筋梗塞、心不全などを起こします。 脳の動脈硬化が起きると、めまい、頭痛、耳鳴り、集中力低下、不眠、短気、情緒不安定などになります。 また頸動脈が閉塞すると脳卒中を起こします。

更に悪化すると脳軟化症や認知症のようになる恐れもでてきます。しびれのために足や口が思うように 動かなくなったり排尿困難にもなります。 腎臓の動脈硬化では頻尿や蛋白尿、顔や足がはれぼったくなったりかすみ目になります。 足においては、しびれ、冷え、だるさなどを経験します。



■治療:
先ず、上記にあげた原因があればそれを取り除くことが先決問題です。 症状が足の痛みなどが出ている場合などを除けば適度な運動も必要です。 コレステロール改善には動物性蛋白質の摂取を減らしたりお酒も控えなければなりませんが、 症状がかなり進んでしまったり、生活改善だけではうまく行かない場合には薬を使ってコレステロール値を下げることが出来ます。
HMG-CoA還元酵素阻害薬:
プラバスチンナトリウムpravastatin sodium(商品名:メバロチン・三共)、シンバスタチンsimvastatin(リポバス・万有)、 フルバスタチンナトリウムfluvastatin sodium(ローコロール・チバガイギー-田辺、ノバルティス)、 アトルバスタチンカルシウム水和物atorvastatin calcium hydrate(リピトール・山之内)などがあります。





胸部大動脈瘤・腹部大動脈瘤


■概要:
●胸部と腹部の大動脈が拡大しこぶが出来る
動脈瘤とは動脈の一部が拡張した状態のことで、実際に瘤(こぶ)のように膨らむ場合があります。 膨らむ原因は動脈壁の一部がいくつかの原因で弱くなって弾力性を失ってしまうと、血流の圧力を受けた際にその部位だけが外側に膨らんだままになるからです。

●紡錘状と嚢状のものがある
膨らんだ部分は管内の圧力の原理に基づいて、血管の内径が大きくなった分だけ圧力が加わります。 そうなると一層そこが外側に膨らんで、やがては破裂してしまいます。 こぶの出来方は動脈全周に拡大する*紡錘状動脈瘤(ぼうすいじょうどうみゃくりゅう)と大動脈壁の一部が拡張・突出する**嚢状動脈瘤(のうじょうどうみゃくりゅう)があります。
*紡錘=糸を紡ぐ心棒でで先端部のない円錐状の部品 **嚢状=袋に似た形状

素因としてはアテローム動脈硬化、外傷、梅毒、結核、感染症、中膜の壊死などがあります。 動脈全体の内でも特に腹部付近にある腹部大動脈が多く発症し、大動脈瘤の概ね75%にみられます。



●腹部大動脈瘤
男性の年配者に多くみられる疾病で、その理由として高血圧や喫煙などにあります。 症状は腹部に拍動感(どんどん、どっくどっくと言うような)を覚えたり、おなかの奥や背中側に突き刺すような痛みを感じることもあります。若し動脈瘤が破裂するならば下腹部から腰にかけてかなり激しい痛みが起こり、出血が多いとショック状態に陥ります。

●胸部大動脈瘤
これは心臓から伸びた直ぐの部分の大動脈に瘤が出来てしまうもので、その間の大動脈弁が機能不全をおこし心臓に血液が逆流してしまいます。 自覚症状は最初の内はありませんが、徐々に悪化すると背中の上のほうの痛み、せき、ぜいぜいする音、喀血などが見られます。食道が圧迫されるようになると、食べ物の飲み込みが悪くなってきます。



■診断:
診断方法としてX線検査や超音波検査また腹部造影CT検査、MRI検査などがあり、 大抵の場合に位置や大きさを確認することが出来ます。 また聴診器を動脈瘤の近い部位にあてると摩擦音のようなものを聞き取ることが出来ます。



■治療:
●内科的治療
瘤が5cm以下であれば破裂する危険性は少ないので降圧薬を用いて血圧を下げることで落ち着かせることが出来ます。
●処方薬の例
Ca拮抗薬・ベシル酸アムロジピン・アムロジピンベシル酸塩(アムロジン錠5mg 5mg1錠など)
アンギオテンシンⅡ(ヒト型)受容体(AⅡ)拮抗薬・ロサルタンカリウム(ニューロタン錠50 50mg1錠など)
α-β-遮断薬カルベジロール(アーチスト錠10mgなど)
→降圧薬

●外科的治療:腹部切開とステントによる経皮的処方
瘤が6cm以上になると手術を考えます。 手術の場合、動脈瘤の部分の血管を人口血管でもって縫いつける方法があります。 その場合は全身麻酔により腹部の切開が必要です。
また下半身の局部麻酔だけで、 鼠径部(そけいぶ)より小さい切開をしてカテーテルの先に*ステントをつけて動脈内に入り込み、患部にステントを装着してそれを広げることによって血液の流れを確保することが出来ます。
*ステント:イギリスの歯科医ステント(Stent C・19世紀)が樹脂による内腔保持の型として使用したのに由来。



大動脈瘤:aortic aneurysm   腹部大動脈瘤:abdominal aortic aneurysma    胸部大動脈瘤:thoracic aortic aneurysm
血管:blood vessel   血圧:blood pressure   高血圧:high blood pressure    血流:blood flow   
拮抗薬:antagonistic drug   ベシル酸アムロジピン:amlodipine besilate    アンギオテンシンⅡ(ヒト型):angiotensin II(human type)
ロサルタンカリウム:losartan potassium   α-遮断薬alpha blocker β遮断薬:beta blocker   カルベジロール:carvedilol





大動脈解離aortic dissection;I710・心タンポナーデcardiac tamponade;I319


■概要:
高血圧のため大動脈壁が劣化するなどの理由で大動脈の内膜に亀裂が生じると、そこに勢いよく血液が流れ込み中膜が剥離してしまい、本来存在しない偽腔を作り出しそこに血流路や血腫が形成されます。また稀にですが内膜の亀裂がない場合でも中膜の血管に破綻が生じて偽腔を形成する事もあります。

大動脈解離にかかる男女比率は3:1となっており男性に多い疾患ですがアジア系など我が国ではあまりみられません。また大動脈解離を起こす人の約4分の3は年齢が40-70歳の人です。高い確率で高血圧が関係している病気ですから中年以降に多くみられます。

・心タンポナーデ:
大動脈解離の合併症で最も頻度が高く深刻なダメージを負うものとして心タンポナーデがあります。 これは心膜(心嚢)内へ出血が起こることにより血液が充満する状態のことで、心臓に様々な致命的な負担がかかります。
*タンポナーデtamponade:何かの内容物で、ある空間を充填して詰まらせる事。病的な用法だけでなく、腔内の出血阻止のためにガーゼその他医療用具で充填させる手法にも使う言葉です。生理用タンポンなどもこの部類に入ります。
また心タンポナーデのように出血などで体内のある腔内に充填された状態もあります。この場合部位により子宮タンポナーデ、鼻腔タンポナーデと言うように表現したり充填物によりバルーンタンポナーデ、シリコンオイルタンポナーデという表現を用いる場合もあります。



■原因:
アテローム動脈硬化症が原因のひとつでその主因子として高血圧・喫煙・高脂肪食・糖尿・炭水化物の過度の摂取・ウォーキングなどが習慣化していない運動不足があります。大動脈解離を起こさないまでも動脈硬化は危険な病態ですから危険因子を生活習慣から取り除く必要があります。 喫煙には毒性のあるニコチンその他有害な化学物質が含まれていて副流煙による受動喫煙の場合も含めて危険な血管収縮を促します。



■症状:
前駆症状(ぜんくしょうじょう:前ぶれ症状)はなく突然胸部から背部の激痛(引き裂かれるような痛み)が多く、心タンポナーデでは意識消失・失神をきたす事もあります。また解離の場所が広がると痛みの場所も広がったり移動したりします。



■診断:
経胸壁断層エコー、経食道断層エコー、CT、MRI、血管造影などで幾つかを組み合わせることでより高精度の診断が可能となります。



■治療:
急性大動脈解離の場合
スタンフォードA型(上行大動脈に解離が存在)
緊急手術をします。血圧が高ければ降圧薬の静注。血圧が低ければ昇圧薬投与で一定血圧を保たせます。心タンポナーデがあれば心膜(心嚢)ドレナージ(体外排出)を先に行う事もあります。

スタンフォードB型(上行大動脈に解離が存在しない場合)
内科療法の降圧安静療法のみで経過をみることもありますがあくまでも症状が安定していて胸部や背部に痛みが続く場合は手術を考えます。
大動脈解離:aortic dissection  心タンポナーデ:cardiac tamponade  高血圧:high blood pressure
剥離:detachment  前駆症状:preliminary symptom  ドレナージ:drainage  


HOME