無料で読める家庭の医学  病気・疾患の解説、英語名、原因、症状、診断法法、治療方法、処方例などをわかりやすく記載
家庭の医学


A型急性肝炎(えーがたきゅうせいかんえん)acute hepatitis A

■原因:
A型急性肝炎とはA型肝炎ウィルスhepatitis A virus(HAV)感染により引き起こされる肝炎のことです。 このウィルスはピコルナウィルス科ヘパトウィルス属に分類され、形状は脂質二重構造からなり糖蛋白が角のように突き出ているいわゆるエンベロープを所有しない正十二面体で、強度な熱抵抗性があります。ウイルス遺伝子は3塩基配列のコドンを持たない領域の読み取り枠(オープンリーディングフレーム)をひとつ持ちますが蛋白質に翻訳される場合もあります。

感染経路は主に経口感染(けいこうかんせん)で、糞便(ふんべん)などでウイルスに汚染された井戸水や生牡蠣(なまがき)などの貝類が原因になっています。 季節的には一月から五月の間に多く、特に三月がピークとなります。 またこのウイルスは慢性化することなく、急性の症状として現われ劇症化する場合もあります。 さらにウイルスは胆汁bileを介して糞便中に排泄(はいせつ)されますから新たに家庭内感染を起こす危険性があります。



■症状:
このA型急性肝炎の潜伏期間(せんぷくきかん)は短くて2週間、長くて7週間程です。 症状として最初に現われるのは38℃程度の発熱、関節痛、食欲不振、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)、食欲低下、吐き気、嘔吐(おうと)など風邪に似た症状ですから単なる風邪と勘違いすることがあります。
更に一週間ほどで黄疸(おうだん)jaundiceが出現します。 黄疸は胆汁(たんじゅう)が腸に送られなくなってしまい、血液中に吸収されて胆汁色素が体の表面に現われてきます。(ビリルビン貯蔵)
また、小児の場合症状が殆ど現れない場合もあります。劇症化、重症化に進むのは数百人にひとり程度です。

眼球の白い部分のいわゆる白目の部分や手足や爪が黄色くなります。目の部分が黄色くなるのはみかんを食べ過ぎたときには起こりませんから区別がつきます。 また尿は茶色(尿濃染)になり、泡まで黄色であれば黄疸と考えられます。酷い時には色がコーラに近くなります。 大便の色は灰色に近くなり、発熱の頻度が高いのも特徴です。



■診断:
ALT(アミノトランスファーゼのひとつで、これまでの呼称ではGPTに対応します。)値の上昇が生じます。 またウイルスなどの抗原が体内に侵入すると免疫反応を示し、抗体を生産します。 ウイルス感染すると先ずIgM抗体が生産され、遅れてIgG抗体が出現します。 それでIgM型HA抗体が検出されればA型急性肝炎と診断されます。 このIgM型HA抗体はは発症後一週間から三ヶ月の間に見られます。 また、IgG型HA抗体は罹患後に検出されますが、それはA型肝炎に対して免疫が出来ている事を示していて、再びかかることはありません。 (Ig=immunoglobulin・免疫グロブリン。多種が存在し、クラス及びサブクラス分けされています。)



■治療:
基本的は治療は安静と臥床で、出来れば入院します。 人体は立っているだけで肝臓への血流が減少してしまいますから、A型急性肝炎の患者にとって特に食後に立ち続けてしまう事はよくありません。 食欲がない場合は点滴によって糖分ビタミン類などの補給を行います。

しかしALT値を即急に下げる目的で免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)や副腎皮質ステロイド薬(ふくじんひしつ-)、グリチルリチンなどを使用すると、肝炎が慢性化してしまう場合があります。薬は出来るだけ控えたほうが無難でしょう。
しかしALT値がなかなか下がらないときは、例として強力ネオミノファーゲンシー[ミノファーゲン](静脈注射)を1日1回40~60mL使用することも可能です。 普通は1,2ヶ月で治癒しますが、稀に劇症化してしまうことがあります。 劇症のおそれがある場合、副腎皮質ホルモン剤(例:プレドニン錠[塩野義])を用います。



■予防:
HA抗体が体内にあれば、A型肝炎にたいしては免疫状態ですが、若年層ほど保有していない割合が高くなっています。 それで東南アジア地域などでの食生活(水や生もの)に注意することが必要です。 予防のためのワクチンやヒト免疫グロブリン製剤を使用することも出来ます。




B型急性肝炎:acute hepatitis B

■原因:
B型急性肝炎は B型肝炎ウイルスにより引き起こされる疾患で、一過性すなわち急性のものが日本人に於いては殆どで慢性化は稀です。 感染経路は輸血、針事故、出産時の産道感染、性交感染などがあります。 輸血による感染はウイルス検査の施行によりかなり減少してきました。



■症状(劇症肝炎):
潜伏期間は1~3ヶ月で半年を越える場合もあります。 症状はA型と比較して発熱もあまりなく、なにかだるさを感じるといった程度でしか感じない場合もあります。
A型B型とも劇症肝炎(げきしょうかんえん)を引き起こす場合があります。 劇症肝炎fulminant hapatitisとは電撃性肝炎とも呼ばれていて、肝機能障害が急激に進行して治療、救命に間に合わない場合もあります。 症状発現後8週間以内に起こす高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡hepatic coma(意識障害)Ⅱ度(Ⅰ~Ⅴに分類)以上の脳症を現し、 プロトロンビン時間(prothrombin time:PT凝固時間を基準値から百分率で表し、症状を測定するもの)、 40%以下を示すものを言います。



■診断:
B型肝炎ウイルスは抗原として独特のものであり、ウイルスの中心(芯)部分にHBc抗原、その外被にHBs抗原、 芯の内部にHBe抗原がありそれぞれに抗体が産出され、それらの血液中の有無により病状や経過を把握することが出来ます。
HBs抗原がある:B型肝炎ウイルス感染している状態。
HBs抗体がある:過去にB型肝炎ウイルスに感染したが、現在は免疫がある。
HBc抗原がある:検出はHBs抗原が覆っているために検出不可。
HBc抗体がある:低値であれば過去の感染か一過性。高値であればウイルスのキャリア状態。
HBe抗原がある:ウイルスが増殖していて感染力が強い状態です。
HBe抗体がある:ウイルス増殖が低下していて、感染力も弱まっています。
IgM型HBc抗体がある:高値ならウイルスの初感染を、低値なら持続感染から急性に。



■治療:
A型肝炎同様に安静、臥床が必要で、食事が摂れない場合は点滴で糖分ビタミン類の補給を行います。 2~3ヶ月で治癒し、HBs抗原は消失し、HBs抗体が出現して免疫状態となります。
尚、慢性化が懸念される場合、薬の使用も考慮に入れます。(例:ゼフィックス錠100mg[gsk])その場合服用後の経過観察を十分に受けなければなりません。

予防
この患者の血液や体液に直接触れないことで十分ですが、必要があればHBIG(抗HBsヒト免疫グロブリン)やHBワクチン接種で免疫をつけることが出来ます。




C型急性肝炎:acute hepatitis C

■原因・症状:
C型急性肝炎は1989年に新しく肝炎ウイルスhepatitis virusesの遺伝子が発見されたことで名づけられました。それまで肝炎はA型とB型しか分類されず、それ以外の明確でないものを非A非B型肝炎と呼んでいた時期もありました。

しかしその後その内の約40%をC型急性肝炎として分類することが出来、その症状はB型に近いのですがA型B型に比べて自覚症状が軽く劇症肝炎になることは殆どありません。 これは血液由来のHCVの初感染によって潜伏期は1-3ヶ月とされています。 急性肝炎の症状が治まったあと治癒しきれずに慢性化するケースが多くあり、そのまま長い間経過して10年以上経つと肝硬変、更に10年を経て肝細胞癌hepatocellular carcinomaに悪化することも多く見られます。



■診断:
C型肝炎ウイルスが体内に抗原として侵入するとその抗体(HCV抗体)が生産されますが、感染からそれは約1ヵ月を要します。 それで抗体陽性を確認出来る状態より前に診断可能とするためにウイルス遺伝子HCV-RNAを測定する方法がとられます。



■治療:
基本的には入院、安静、臥床することで、食事が摂れなければ点滴を行います。 また慢性肝炎への進展を防ぐために抗ウイルス薬のインターフェロンを用います。

例:スミフェロン注[住友]・OIFオーアイエフ注[大塚]・IFNα[持田]・イントロンA注[シェリング・プラウ]のいずれか1剤。若しくはアドバフェロン注[山之内]。その他、IFNβ[持田]・フェロン[東レ-第一]。

予防
B型肝炎と同様にC型肝炎ウイルス感染者の血液や体液に直接触れないことで予防は出来ます。 しかしワクチンもまだありませんしこの抗体の存在も明らかではありませんので 出産時の子供への感染や性行為感染に関してはまだ無防備に近い状態です。





B型・C型の慢性肝炎:chronic hepatitis B・C
新犬山分類new Inuyama classification of chronic hepatitis

■原因: B型C型の慢性肝炎は6ヶ月以上肝臓に炎症を起こし、障害が認められる場合を指していいます。 慢性的に炎症が起きると肝細胞の壊死と再生が繰り返される結果、肝硬変へと進展する恐れがあります。 慢性肝炎の原因は主に急性肝炎を起こす原因となるウイルスがあります。



■新犬山分類:
なお、慢性肝炎の肝組織診断基準は日本においても定められれいて、1967年に愛知県犬山市においてなされた犬山シンポジウム により始めて犬山分類が提唱されました。その後1974年と1978年の二回改訂が行われましたが、更に1996年の犬山シンポジウムで、新犬山分類が発表されました。
この新分類では慢性肝炎の際の肝臓の繊維化が病変の進展度合いを知る上で重要であることの認識が示されています。 従来から病変の程度の目安とされている壊死や炎症の具合をA0~A3 (A=Activity)の4段階で評価すると共に、 F0~F4(F=Fibrosis:F0は繊維化なし。F1は門脈域の繊維性拡大。F2は繊維性架橋形成。 F3は小葉のひずみを伴う繊維性架橋形成。F4は肝硬変。) の5段階に区分された繊維化の病変が新犬山分類に盛り込まれています。



■B型慢性肝炎:
B型肝炎ウイルスが住みついた肝臓は急性肝炎を生じても一過性で治癒されうるものですが、 免疫能力の弱い人に住みつくとウイルスの排除が完全に行われない場合、キャリア化が生じます。 その中でも母子感染が多く見られ、母親がB型肝炎ウイルス保菌者(HBキャリア)である場合出産時に子供へ感染します。 特にHBe抗体が陽性である場合8~9割の確立で子供がキャリア化します。

その後10年から30年ほどの長期間を経て肝炎をみとめる場合が多くみられます。 肝炎の期間は数ヶ月から数年におよんだあと、HBe抗体陽性の状態で無症候性キャリアとして一生を過ごします。 その中で、一部の人はウイルスが消失してキャリアから離れることが出来ますが、約10%の人は慢性肝炎へと移行してしまいます。



■C型慢性肝炎:
C型肝炎ウイルスのHCキャリアにこのC型慢性肝炎が生じます。 感染経路は血液、体液などですが、性行為や出産時の感染は低いものと考えられていますから、輸血や医療場面での感染が主と なりますが、それも現在ではかなり減少してきています。 B型と違う点は免疫機能が正常に働いている人でも高い割合でキャリア化するということです。 HCキャリアの診断ではHCV-RNA測定が正確な検査が出来ます。これが陽性であればキャリアであることを意味します。 いずれにしてもこの慢性肝炎による自覚症状は殆どなく、血液検査で発見されるという場合が多いのです。



■慢性肝炎の治療:
普通に生活出来ますが、アルコールの摂取は制限を設けなければなりません。 食生活は高たんぱく、高ビタミンの物が望ましく、ジャンクフードやお菓子を食事代わりにすることは望ましくありません。
薬剤ではインターフェロンがよく用いられますが重篤な副作用もありますから使用後の観察が必要です。 インターフェロン製剤としてはインターフェロン・アルファ、ベータ、ガンマの3種類に大別できますが、 インターフェロンアルファが最も広範で使用例が豊富です。
スミフェロン[住友]・IFNα[持田]・OIF[大塚]・キャンフェロンA[武田]・ロフェロンA[中外]・イントロンA[シェリング・ブラウ]アドバフェロン[山之内]
副作用としては間質性肺炎、抑うつ症状(重度の不安感、絶望感)糖尿病、急性腎不全、溶血性尿毒症症候群、汎血球減少、心不全、意識障害、皮膚潰瘍などがあります。




自己免疫性肝炎autoimmune hepatitis

■原因:
免疫は本来、外部の抗原が体内に侵入したときに体を守る目的で抗体が作られて抗原に攻撃するものです。 そして抗体は自分の体に対しては攻撃を行わないようなメカニズムが組まれています。 しかしなんらかの原因で自己組織を破壊してしまう場合があり、そのことを自己免疫病と言います。 その原因で慢性肝炎を起こすことを自己免疫性肝炎と呼び、おおむね中高年(50~60歳代)の女性に多く発症しています。



■症状:
一般的に肝炎の症状に準じます。また肝炎を起こすとともに皮膚症状や関節症状も同時に起き易い特徴があります。 また他の部位での自己免疫症疾患の合併症が多く見られます。



■診断:
この自己免疫性肝炎に罹ると、抗核抗体(こうかくこうたい):ANAや抗平滑筋抗体(こうへいかつきんこうたい):ASMAが陽性となり、 高γグロブリン血症(こうがんまーぐろぶりんけっしょう)hypergammaglobulinemiaを認めます。 [γグロブリン分画は免疫グロブリンimmunoglobulin;Igが主体のため→血清IgG濃度高値となります。]



■治療:
しかし治療には副腎皮質ステロイドがよく用いられ、効果が顕著です。 薬の服用に関して特に長期使用の際、心配する場合も出てきますが、ステロイドの効果が大きいことをも理解する必要があります。 それと同時に副作用もあることを認識すべきです。

(重大な副作用:消化性潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症、精神変調、うつ、痙攣、緑内障、後嚢白内障、 心筋梗塞、脳梗塞、動脈瘤など)
処方例:
副腎皮質ステロイド・プレドニゾロンprednisolone
プレドニン錠(5mg)[塩野義]一日5~60mgを1~4回に分けて服用で開始し、長期服用に及ぶ場合、適宜減量していきます。
軽症例ではプレドニン量を10-15mg/日、中等症の典型的処方では30-40mg/日、重症例では60-80mg/日を内服することから始めます。




アミノトランスファーゼaminotransferase(トランスアミナーゼtransaminase):
AST(GOT)とALT(GPT)

上記の二語は同意語で、どちらも三つの単語を合成したものです。
アミノamino(アミノ基)+トランスファーtransfer(転移)+~ゼase(~酵素)
トランスtranse[transferの簡略後](転移)+アミamin-[後に母音が来る場合aminoが変化する]
+~ゼase(~酵素)
なお酵素enzymeエンザイム(エンチーム)が他の名詞の後ろについて新たな名詞を作る場合、 ase(接尾辞)になります。ちなみにエンザイムに補coを接頭辞につけると、コエンザイムcoenzyme(補酵素)になります。

このアミノトランスファーゼ(アミノ基転移酵素)はアミノ酸amino acidからケト酸keto acidにアミン基を転移して、新アミノ酸と新αケト酸とを形成する酵素で、以下が代表的なものです。

①アスパラギン酸アミノトランスファーゼaspartate aminotransferase;AST
=グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼglutamic oxaloacetic transferase;GOT

今まで血液検査などではGOTとして知られていた酵素のことで、今後はASTの表記が主流になるものと思われます。 アミノ基受容体にはα-ケトグルタル酸を用いると、殆どのアミノ酸に作用して脱アミノ化します。肝臓にALT含有量が豊富で、AST/ALTが1を基準にして肝臓の病態診断に役立てています。
基準値は8~38U/Lです。

②アラニンアミノトランスファーゼalanine aminotransferase;ALT
=グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼglutamic-pyruvic transaminase;GPT

このGTPも今後はALTが主流として用いられるもとと思います。 ピリドキサールリン酸を補酵素とて、ほぼすべての臓器組織細胞に分布していますが、ASTと同様に肝臓におおく存在します。
基準値は4~43U/Lです。



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